人間、高齢になればなるほど「新しいことにワクワクする」体験が乏しくなっていく。脳の前頭葉を鍛えるには、ワクワクドキドキが欠かせないのに、年齢を重ねるとそれが日常的に減っていくのだ。
■ドラマーを目指して
63歳、定年まであと2年となったところで、ヨウコさんが始めたのはドラムだ。
「私は歌もうまくないし、リズム感も悪い。楽器は大昔に少し電子オルガンを習っていたくらい。音楽を聴くのは好きだけど演奏するのは気がひけていました」
だがあるとき、いわゆるご当地キャラクターがドラム演奏をしているのを動画で偶然発見し、それが妙に心に刺さったという。
「大変だと思うんですよね、ああいう外見でドラムを叩くなんて。でもすごくかっこよかったんです。ワクワクしてきて、私もやってみたいと思った。考えたら、高校時代に付き合っていたボーイフレンドがドラマーだったなあ、学園祭でかっこよかったなあなんてことまで思い出して」
■希望が人を輝かせる
誰にも言わず、ひそかに音楽教室の体験講座を受けてみた。まったく分からない世界に飛び込んだ「快感」があったという。
「同い年の夫は、定年になったらあれもこれもやってみたいと口にしていますが、思い立ったらすぐ始めた方がいい。今も夫には内緒ですが、週に1回、仕事帰りに通っています。
希望が人を生き生きとさせる。ドラムを始めて半年、少しずつだが上達していることがうれしいとヨウコさんは笑顔を見せた。
■カクテルの勉強をしたくて
「お酒好きが高じてバーテンダースクールに通っています。今さら仕事にしたいわけじゃないけど、資格があれば知っているお店で1日バーテンダーをさせてくれるという話もあって。スクールで友達ができて、一緒にバー巡りをしたりしてる。この年になって新たな友達ができるなんて、本当にうれしくて」
そう言うのはミナミさん(60歳)だ。独立している子どもたちは応援してくれているが、夫は「今さら何をしてるわけ?」と冷ややかだという。
「でもスクール代は自分のパート代から出してますから、誰に遠慮する必要もない。記憶力が衰えているから、けっこう勉強しています。それもまた面白い。記憶力も鍛えることができると言いますからね。年をとったら、楽しいことだけして過ごせとパートの先輩からも言われています」
新しいことを始めると視野が広がる、考え方が変わる。
「本当にそうですよ。今までしたかったけどしてこなかったこと、興味があったこと、言い換えればし残したことをやった方がいい。そう思います」
■ダンサーになる!
カヨさん(58歳)は結婚して28年、二人の子どもたちは就職し、上の子は家を離れている。
「上の子は小さいころヒップホップダンスにはまって、スクールに通っていたんです。その送り迎えをしながら、こういうダンスって楽しそうだなあと思って見ていました。私、更年期症状がかなりひどくて、ずっと体調を崩しながらパートで仕事をしていたんですが、なんとか脱した2年前、何か新たに始めたいと思った。そのとき浮かんだのがヒップホップダンスでした」
上の子に相談すると、今なら大人向けの教室がたくさんあるよと教えてくれた。早速、体験教室に行き、勢いでそのまま申し込んだ。同世代と一緒に週に1回、ダンスを習っている。
「この年だと社交ダンスの方がいいのかもしれないけど、そこはあえてヒップホップダンスですよ。アラ還だってはじけたいんですよ」
昨年からはレッスンを月6回に増やした。
「体が軽くなりました。何をやりたいかいろいろ考えたけど、ヒップホップダンスを選んでよかった。高齢になったらこうあらねばならないとか、人からどう見られるかとか、そんなことは吹っ飛びました。価値観が変わりましたよ。私は自由なんだと感じることができる。それがとてもハッピーな感覚なんです」
誰もがやる趣味ではなく、自分がやりたいこと、興味をもっていることに臆せずチャレンジする。それが体のみならず脳を活性化させる一番の方法かもしれない。
他にもスケボーやフルマラソン、ダーツやビリヤードなどに挑戦している人たちもいる。「今を楽しむ」のがアラ還以降、元気に生きる秘訣(ひけつ)かもしれない。
▼亀山 早苗プロフィール明治大学文学部卒業。
だからこそ、何かにチャレンジするのは大事なことだろう。
■ドラマーを目指して
63歳、定年まであと2年となったところで、ヨウコさんが始めたのはドラムだ。
「私は歌もうまくないし、リズム感も悪い。楽器は大昔に少し電子オルガンを習っていたくらい。音楽を聴くのは好きだけど演奏するのは気がひけていました」
だがあるとき、いわゆるご当地キャラクターがドラム演奏をしているのを動画で偶然発見し、それが妙に心に刺さったという。
「大変だと思うんですよね、ああいう外見でドラムを叩くなんて。でもすごくかっこよかったんです。ワクワクしてきて、私もやってみたいと思った。考えたら、高校時代に付き合っていたボーイフレンドがドラマーだったなあ、学園祭でかっこよかったなあなんてことまで思い出して」
■希望が人を輝かせる
誰にも言わず、ひそかに音楽教室の体験講座を受けてみた。まったく分からない世界に飛び込んだ「快感」があったという。
「同い年の夫は、定年になったらあれもこれもやってみたいと口にしていますが、思い立ったらすぐ始めた方がいい。今も夫には内緒ですが、週に1回、仕事帰りに通っています。
いつかバンドを組んで演奏してみたい」
希望が人を生き生きとさせる。ドラムを始めて半年、少しずつだが上達していることがうれしいとヨウコさんは笑顔を見せた。
■カクテルの勉強をしたくて
「お酒好きが高じてバーテンダースクールに通っています。今さら仕事にしたいわけじゃないけど、資格があれば知っているお店で1日バーテンダーをさせてくれるという話もあって。スクールで友達ができて、一緒にバー巡りをしたりしてる。この年になって新たな友達ができるなんて、本当にうれしくて」
そう言うのはミナミさん(60歳)だ。独立している子どもたちは応援してくれているが、夫は「今さら何をしてるわけ?」と冷ややかだという。
「でもスクール代は自分のパート代から出してますから、誰に遠慮する必要もない。記憶力が衰えているから、けっこう勉強しています。それもまた面白い。記憶力も鍛えることができると言いますからね。年をとったら、楽しいことだけして過ごせとパートの先輩からも言われています」
新しいことを始めると視野が広がる、考え方が変わる。
いくつになってもチャレンジはできると自信もつく。
「本当にそうですよ。今までしたかったけどしてこなかったこと、興味があったこと、言い換えればし残したことをやった方がいい。そう思います」
■ダンサーになる!
カヨさん(58歳)は結婚して28年、二人の子どもたちは就職し、上の子は家を離れている。
「上の子は小さいころヒップホップダンスにはまって、スクールに通っていたんです。その送り迎えをしながら、こういうダンスって楽しそうだなあと思って見ていました。私、更年期症状がかなりひどくて、ずっと体調を崩しながらパートで仕事をしていたんですが、なんとか脱した2年前、何か新たに始めたいと思った。そのとき浮かんだのがヒップホップダンスでした」
上の子に相談すると、今なら大人向けの教室がたくさんあるよと教えてくれた。早速、体験教室に行き、勢いでそのまま申し込んだ。同世代と一緒に週に1回、ダンスを習っている。
「この年だと社交ダンスの方がいいのかもしれないけど、そこはあえてヒップホップダンスですよ。アラ還だってはじけたいんですよ」
昨年からはレッスンを月6回に増やした。
どんどんレッスンが楽しくなっているという。今年はスクール内の発表会にも出場するつもりだ。
「体が軽くなりました。何をやりたいかいろいろ考えたけど、ヒップホップダンスを選んでよかった。高齢になったらこうあらねばならないとか、人からどう見られるかとか、そんなことは吹っ飛びました。価値観が変わりましたよ。私は自由なんだと感じることができる。それがとてもハッピーな感覚なんです」
誰もがやる趣味ではなく、自分がやりたいこと、興味をもっていることに臆せずチャレンジする。それが体のみならず脳を活性化させる一番の方法かもしれない。
他にもスケボーやフルマラソン、ダーツやビリヤードなどに挑戦している人たちもいる。「今を楽しむ」のがアラ還以降、元気に生きる秘訣(ひけつ)かもしれない。
▼亀山 早苗プロフィール明治大学文学部卒業。
男女の人間模様を中心に20年以上にわたって取材を重ね、女性の生き方についての問題提起を続けている。恋愛や結婚・離婚、性の問題、貧困、ひきこもりなど幅広く執筆。趣味はくまモンの追っかけ、落語、歌舞伎など古典芸能鑑賞。
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