パーソナルカラー診断は自分に似合う色を見つけるのに役立ちますが、誤った解釈が広まることもあります。「イエローベース(イエベ)=色黒」「ブルーベース(ブルベ)=色白」もそんな誤解の1つです。


今回は、この誤解が広まった理由や、日焼けによる肌の反応とパーソナルカラーの関係について解説します。

■情報の単純化によって生じる誤解
パーソナルカラーが広まる過程で、イエローベースとブルーベースを説明する際に単純化されるケースが多く見られます。

イエローベースの肌は、暖かみのある黄みがかったトーンが特徴です。健康的な印象を与えることから「日焼けした肌」というイメージが先行し、色黒だと誤解されやすくなりました。

実際には、イエローベースの肌にも明るいトーン(ライト)から濃いトーン(ディープ)まで幅広い種類があります。

一方、ブルーベースの肌は、青みがかったピンクやローズ系の肌トーンが特徴です。涼やかで透明感のある肌なので、色白のイメージに結び付けられました。実際には、ブルーベースにも色のトーン(明るさや暗さ)に幅があり、色黒のブルーベースの人もいます。

■似合う色のイメージから生じる誤解
「イエベ=色黒」と誤解されるのはなぜ? 「パーソナルカラー」と「日焼け後の肌」の関係
イエローベース・ブルーベースが似合う色(画像出典:PIXTA)

イエローベースの人に似合う代表的な色として、「オレンジ」「ゴールド」「キャメル」などの暖かみのある色がよく挙げられます。これらの色は、一般的に日焼けした肌や健康的な肌色と関連付けられることが多く、イエローベースは「色黒」と誤解されやすくなりました。

ブルーベースの人に似合う色には、「ブルー」「パープル」などの冷たい色が多く含まれます。

また、代表的な色としてよく挙げられる「パステルピンク」「ラベンダー」「ミントブルー」などの淡い色は、色白の肌に映えやすい色。
このため、冷たい色や淡い色が似合うブルーベースは「色白」という誤解が生まれました。

日本人はイエローベースが多いとされており、ブルーベースは少数派という印象があります。これも誤解の1つなのですが、「ブルーベース=特別な肌色=色白」「イエローベース=ありふれた肌色=色黒」というように、限定されたイメージが広がる傾向も見受けられます。

■「日焼けするとどうなる?」の問いから生じる誤解
パーソナルカラー診断の自己診断に、「日焼けするとどうなる?」という問いがあります。日焼けしたときの反応は人それぞれ異なりますが、回答のしやすさを考慮して2択にするのが一般的です。

日焼けすると黒くなるのは、オータムタイプ(イエローベース)・ウィンタータイプ(ブルーベース)が多く、日焼けすると赤くなるのは、スプリングタイプ(イエローベース)・サマータイプ(ブルーベース)が多いというように、この質問はイエローベースかブルーベースを判定することが目的ではありません。

しかし、こうした質問からも「色黒=イエローベース」「色白=ブルーベース」という誤解が生じる場合があります。

ここまで、パーソナルカラー診断にまつわる誤解が生じる理由を解説しました。以下では、日焼けによる肌の反応とパーソナルカラーには実際どのような関係があるのか、見ていきましょう。

■日焼けとメラニンの関係
日焼けしたときの肌の反応は、メラニンの種類や生成量、そして皮膚の反応特性と密接に関連しています。

メラニンは、紫外線(UV)から皮膚を守るために生成される色素です。紫外線を浴びると、皮膚の基底層にある「メラノサイト」という細胞が活性化し、メラニンを生成します。


メラニンには、肌を黒くする「ユーメラニン」と肌を赤くする「フェオメラニン」の2種類があります。

▼◾️ユーメラニン(黒や茶色の色素)紫外線を吸収し、皮膚を守る役割が強いのが特徴です。ユーメラニンが多い肌は紫外線に対する耐性が高く、日焼けすると黒くなる傾向があります。

▼◾️フェオメラニン(赤や黄色の色素)紫外線を吸収する能力が低く、むしろ紫外線によるダメージを増幅させる場合も。フェオメラニンが多い肌は、紫外線を浴びると赤く炎症(サンバーン)を起こしやすい傾向があります。

■日焼けすると黒くなりやすい肌のメラニン特性
1:ユーメラニンが多い
ユーメラニンが多い肌は、紫外線を浴びると迅速にメラニンが生成され、肌が黒くなる傾向があります。黒くなる一方で、赤く炎症を起こしにくい特徴もあります。

2:メラノサイトの活性化が早い
メラノサイトの反応速度が早い人ほど、紫外線を浴びてすぐにメラニンが生成され、肌が黒くなります。

■日焼けすると赤くなりやすい肌のメラニン特性
1:ユーメラニンの生成量が少なく、フェオメラニンが多い
フェオメラニンは紫外線を有効に遮断できないため、真皮やDNAが紫外線によるダメージを受けやすく、炎症を引き起こします。この炎症が皮膚の赤み(サンバーン)の原因です。

2:メラノサイトの活性化が遅い
メラニンを迅速に生成する能力が低く、日焼けに対する自然な防御が遅れます。

■「日焼けによる肌の反応」と「パーソナルカラー診断」の関係
日焼けの反応は遺伝や体質による影響が大きく、パーソナルカラー診断における「似合う色」そのものを決定づける要素ではありません。
ほかの要素と組み合わせて総合的に判断されます。

例えば、日焼け後の肌がどの程度暗くなるかは、トーンの判断材料になることがあります。明るいトーンの肌はスプリングやサマー、暗いトーンの肌はオータムやウィンターに分かれる可能性があります。

また、日焼け前は白く見えていても、日焼け後にオレンジや茶色っぽいトーンになる場合はイエローベースに近い可能性が高いです。日焼け後も赤みやピンクみが強調される場合はブルーベースの可能性があります。

日焼け後に肌の色が変わっても、パーソナルカラー診断で提案された色はベースの特性に基づいているため、基本的に変わりません。ただし、日焼けの程度が強い場合やシーズンごとに肌色が大きく変化する場合は、その時々のトーンに応じて微調整が必要です。

▼松本 英恵プロフィールカラーコンサルタント歴20年。パーソナルカラー、カラーマーケティング、色彩心理、カラーセラピー、ラッキーカラー(色占い)などの知見を活用し、カラー監修を行う。執筆、メディア出演、講演、企業研修の講師など幅広く活動。近著に『人を動かす「色」の科学』。
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