話題になっているドラマ『続・続・最後から二番目の恋』(フジテレビ系)の第10話、大人世代にとっては衝撃的なシーンがあった。
■アラ還は「老害」?
千明(小泉今日子)、祥子(渡辺真起子)、啓子(森口博子)の仲よしアラ還女子3人組がいつものように集っていると、音楽プロデューサー・祥子の携帯にメッセージが届く。
仕事のチームでメッセージグループを作っているのだが、祥子は自分を除いたグループがあることも薄々承知していた。その中の誰かが、うっかり祥子も入っているグループの方に、どうやら祥子の悪口を書き込んだらしいのだ。
内容は明らかにされなかったが、祥子は最年長、おそらく「老害」などと言われていたのだろう。同い年の千明も啓子も同じようにショックを受ける。
今の時代、年長者は常に気を使っている。テレビ局のドラマプロデューサーである千明も、打ち上げでもない限りチームの飲み会には参加しないし、千明の隣人で、鎌倉市役所に勤めるダブル主演の和平(中井貴一)も部内の飲み会には行っていない。
部下や後輩に仕事を教えたり指示したりする立場でありながら、これを言ったらパワハラなのではないか、相手が嫌な思いをしていないかと必要以上に気を配らなければならないのが現実である。
■40代でも……
「うちの職場はノリがよくて、40代後半の私の上司は、月に1度くらいは自分から飲み会を開いていたんです。前の上司もそういうタイプで、それで仕事の士気が上がったり、ミスしたスタッフが元気を取り戻したりするのを、私は新入社員の頃から見ていました。ある意味、それがうちの部署のカラーだったんですよ」
アカネさん(42歳)はそう言う。
「20代のスタッフたちが陰でこっそり『飲み会、なんとかしてよ』『2人ばっくれて、2人が犠牲になって参加すればいいんじゃね』などと言っているのを、上司が聞いてしまったんだそうです。『あんなに迷惑がられているとは思わなかったんだよね』と彼はしょげていました」
アカネさんも、後輩をランチやお茶に誘うことがよくあったため青ざめたそうだ。
■若手に対してどこか怯える自分
「20代の子たちも表向きは気を使っているから、最近の流行りなどを教えてくれたり、ヘアスタイルを変えると『アカネさん、そのカラー、すてきですね』なんて言ってくれるんだけど、裏では何を言っているか分からない。うちの部署は人間関係がうまくいっていると思っていたのは上司と私だけだったのかもしれません」
以来、若手に対してどこか怯える自分がいるという。まだ40代なのに、である。
「いやもう、40代はすっかり“老害”なんですよ。一括りにされたくはないけど、言われてみれば新入社員の頃、40代はものすごく“上の人”“うっとうしい人”だと自分も思っていたかもしれない。ただ、あの頃は上には逆らえなかったから、飲み会などがあると行かざるを得なかったし、行ってみたら案外楽しかったという事実もある。
でも今の時代、年長者からの無理強いは一切できないから、昔の上司みたいに『行くぞ』とは言えないんですよね。時代の変化には逆らえません。
年長者たちはおしなべてそういう感覚でいると、アカネさんは苦笑した。
■チームで浮いている私
女性が多い職場で仕事をしているミドリさん(45歳)。50代後半の女性をリーダーに、仕事のチームは30代前半男性が1人、20代男女が1人ずつという構成になっている。
「リーダーは指示を出したりまとめたりする。私は若い3人とリーダーとのつなぎ役みたいな役割を期待されていると思っていたんです。案の定、若い3人はすごく仲よく理解し合っているみたいだったけど、いつの間にかその3人が固まって、私やリーダーを飛ばしてその上の役員に、いろいろなことを直訴するようになっていた。
役員はそう言われても現場のことはまったく分からないので、リーダーに話が下りてくるという、非常に面倒な事態になってしまったんです」
何かあったら直接、私に言ってねとミドリさんは何度も若い3人に伝えた。みんなで話を共有しないと、チームが機能しないのだからと説明もした。だが3人は3人だけで話をまとめたがる。役員とリーダーは内々で話を進め、若い3人も内々で話し合っている。ミドリさんはどちらにも入れず、悶々としているという。
■ストレスまみれの毎日
「若い子たちは、『ミドリさんに負担をかけないようにしたい』なんて言うわけですが、それって仲間はずれにしている言い訳。
そんなとき同期と話す機会があった。その同期もまた、「中途半端な立場」で、若い世代からは「老害だと思われている」と悩みを打ち明けた。
「もっと仕事をしたいだけなのに、何もかもがうまくいかない。私が若い頃の40代は、もっと生き生き仕事をしているように見えたんですけどね」
時代の『圧』は、40代以上のパフォーマンスの効率を下げているのかもしれない。
▼亀山 早苗プロフィール明治大学文学部卒業。男女の人間模様を中心に20年以上にわたって取材を重ね、女性の生き方についての問題提起を続けている。恋愛や結婚・離婚、性の問題、貧困、ひきこもりなど幅広く執筆。趣味はくまモンの追っかけ、落語、歌舞伎など古典芸能鑑賞。
■アラ還は「老害」?
千明(小泉今日子)、祥子(渡辺真起子)、啓子(森口博子)の仲よしアラ還女子3人組がいつものように集っていると、音楽プロデューサー・祥子の携帯にメッセージが届く。
それを見た祥子に明らかな異変が。「すごい誤爆受けた」とため息をつく。
仕事のチームでメッセージグループを作っているのだが、祥子は自分を除いたグループがあることも薄々承知していた。その中の誰かが、うっかり祥子も入っているグループの方に、どうやら祥子の悪口を書き込んだらしいのだ。
内容は明らかにされなかったが、祥子は最年長、おそらく「老害」などと言われていたのだろう。同い年の千明も啓子も同じようにショックを受ける。
今の時代、年長者は常に気を使っている。テレビ局のドラマプロデューサーである千明も、打ち上げでもない限りチームの飲み会には参加しないし、千明の隣人で、鎌倉市役所に勤めるダブル主演の和平(中井貴一)も部内の飲み会には行っていない。
部下や後輩に仕事を教えたり指示したりする立場でありながら、これを言ったらパワハラなのではないか、相手が嫌な思いをしていないかと必要以上に気を配らなければならないのが現実である。
■40代でも……
「うちの職場はノリがよくて、40代後半の私の上司は、月に1度くらいは自分から飲み会を開いていたんです。前の上司もそういうタイプで、それで仕事の士気が上がったり、ミスしたスタッフが元気を取り戻したりするのを、私は新入社員の頃から見ていました。ある意味、それがうちの部署のカラーだったんですよ」
アカネさん(42歳)はそう言う。
ところがその上司が最近、まったく誘わなくなっている。どうしたのかと思って、アカネさんは上司を誘って飲みに行った。
「20代のスタッフたちが陰でこっそり『飲み会、なんとかしてよ』『2人ばっくれて、2人が犠牲になって参加すればいいんじゃね』などと言っているのを、上司が聞いてしまったんだそうです。『あんなに迷惑がられているとは思わなかったんだよね』と彼はしょげていました」
アカネさんも、後輩をランチやお茶に誘うことがよくあったため青ざめたそうだ。
■若手に対してどこか怯える自分
「20代の子たちも表向きは気を使っているから、最近の流行りなどを教えてくれたり、ヘアスタイルを変えると『アカネさん、そのカラー、すてきですね』なんて言ってくれるんだけど、裏では何を言っているか分からない。うちの部署は人間関係がうまくいっていると思っていたのは上司と私だけだったのかもしれません」
以来、若手に対してどこか怯える自分がいるという。まだ40代なのに、である。
「いやもう、40代はすっかり“老害”なんですよ。一括りにされたくはないけど、言われてみれば新入社員の頃、40代はものすごく“上の人”“うっとうしい人”だと自分も思っていたかもしれない。ただ、あの頃は上には逆らえなかったから、飲み会などがあると行かざるを得なかったし、行ってみたら案外楽しかったという事実もある。
でも今の時代、年長者からの無理強いは一切できないから、昔の上司みたいに『行くぞ』とは言えないんですよね。時代の変化には逆らえません。
ちょっと寂しいけど」
年長者たちはおしなべてそういう感覚でいると、アカネさんは苦笑した。
■チームで浮いている私
女性が多い職場で仕事をしているミドリさん(45歳)。50代後半の女性をリーダーに、仕事のチームは30代前半男性が1人、20代男女が1人ずつという構成になっている。
「リーダーは指示を出したりまとめたりする。私は若い3人とリーダーとのつなぎ役みたいな役割を期待されていると思っていたんです。案の定、若い3人はすごく仲よく理解し合っているみたいだったけど、いつの間にかその3人が固まって、私やリーダーを飛ばしてその上の役員に、いろいろなことを直訴するようになっていた。
役員はそう言われても現場のことはまったく分からないので、リーダーに話が下りてくるという、非常に面倒な事態になってしまったんです」
何かあったら直接、私に言ってねとミドリさんは何度も若い3人に伝えた。みんなで話を共有しないと、チームが機能しないのだからと説明もした。だが3人は3人だけで話をまとめたがる。役員とリーダーは内々で話を進め、若い3人も内々で話し合っている。ミドリさんはどちらにも入れず、悶々としているという。
■ストレスまみれの毎日
「若い子たちは、『ミドリさんに負担をかけないようにしたい』なんて言うわけですが、それって仲間はずれにしている言い訳。
役員とリーダーからは『もっと若い人たちの意見をしっかりとりまとめて』と言われ……。毎日、ストレスまみれです」
そんなとき同期と話す機会があった。その同期もまた、「中途半端な立場」で、若い世代からは「老害だと思われている」と悩みを打ち明けた。
「もっと仕事をしたいだけなのに、何もかもがうまくいかない。私が若い頃の40代は、もっと生き生き仕事をしているように見えたんですけどね」
時代の『圧』は、40代以上のパフォーマンスの効率を下げているのかもしれない。
▼亀山 早苗プロフィール明治大学文学部卒業。男女の人間模様を中心に20年以上にわたって取材を重ね、女性の生き方についての問題提起を続けている。恋愛や結婚・離婚、性の問題、貧困、ひきこもりなど幅広く執筆。趣味はくまモンの追っかけ、落語、歌舞伎など古典芸能鑑賞。
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