NISAについて、「医師は今すぐ始めるべき」といわれて関心はあるものの、自分にとってメリットがあるのかどうか判断がつかなかったり、最近の株式市場暴落でやめる人がいるという話を聞いたりして、始めるのを躊躇(ちゅうちょ)している方もいるのではないでしょうか。

しかし、この制度は早くスタートするほど、メリットが大きくなる制度。
しかも、一度設定するだけで簡単に資産運用を続けられるかもしれません。そこで、今回はNISA制度の詳しい内容とそのメリットを分かりやすく解説しつつ、始め方についても説明します。

■利益の約2割にかかる税金がゼロになるお得な制度
そもそもNISAとは、投資で得た利益に対して税金がかからない「少額投資非課税制度」のこと。投資で得た利益に対しては通常、銀行預金の利息と同様に約20%(20.315%)の税金がかかりますが、NISA口座で取引した場合は一定の範囲内で課税されません。国が個人の資産形成を後押しするために、2014年に創設した制度です。

例えば、ある投資商品を100万円分購入し、それが150万円に値上がりしたときに売ったとすると、差額の50万円が売却益になります。通常はこのうち約10万円が税金として差し引かれ、約40万円しか受け取れませんが、NISA口座なら丸々50万円受け取れます。もちろん、利益が多ければ多いほど節税額は大きくなります。
節税メリットは無限大!?「NISA」を手軽に始める方法
NISA口座なら、投資で得た利益をそのまま受け取れる(画像:All About編集部作成)

しかも、売却益(キャピタルゲイン)だけでなく、配当金や分配金などのインカムゲインも非課税の対象です。インカムゲインは保有期間中ずっと受け取れるので、長く保有し続ければそれだけ節税効果も大きくなります。

■利用限度額が増え、非課税期間も無期限化
2024年1月にこの制度が大幅に見直され、よりお得な制度にバージョンアップしました。まず制度自体が恒久化されて非課税期間が無期限となり、利用できる限度額もアップしました。

節税メリットは無限大!?「NISA」を手軽に始める方法
NISAの概要(画像:All About編集部作成)

新しいNISAは「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の2種類に分かれていて、併用が可能です(旧制度の「つみたてNISA」が「つみたて投資枠」に、「一般NISA」が「成長投資枠」に引き継がれています)。

1年間に投資できる限度枠が決まっており、前者は年間120万円、後者は年間240万円で合計360万円です。旧制度では最大でも年間120万円(「つみたてNISA」40万円、「一般NISA」120万円のどちらかを選択)だったので、大幅に増額されました。

さらに、非課税運用期間も以前は「つみたてNISA」が最長20年、「一般NISA」が5年でしたが、2024年からは無期限となりました。期限を気にすることなく、より長期的な視点で資産が運用できます。

ただし、生涯で保有できる「非課税保有限度額」は最大1800万円(成長投資枠はそのうち1200万円)と決められています。なお、以前は一度売却した非課税枠が消えていましたが、2024年からは売却して空いた分の非課税枠が翌年復活して、年間限度枠の範囲内で再利用できるようになりました。

無期限化されたこととあわせて、売却のタイミングを計りやすくなったと言えるでしょう。ちなみに、これらの限度額は全て売却時の市場価格(時価)ではなく、購入時の価格(簿価)でカウントされます。

■NISAで購入できる商品とは?
NISAで購入できるのは投資商品で、つみたて投資枠と成長投資枠ではラインアップが異なります。

つみたて投資枠で買えるのは、一部の投資信託とETF(上場投資信託)、REIT(不動産投資信託)です。投資信託とは、多くの投資家から集めた資金をまとめ、それぞれ専門家が投資先を選んで運用する金融商品です。
1万円前後(積立の場合はさらに少額)から購入でき、国内外の債券や株式など、幅広い分野に間接的に分散投資ができます。

全部で6000本以上ありますが、つみたて投資枠で購入できるのは、その中から金融庁が長期・分散・積立投資に適していると判断した一部の投資信託に限定されています。対象商品は現在336本です(2025年7月1日時点)。

一方、成長投資枠で買えるのは、多くの投資信託や国内外の株式、ETF、REITとかなり広範囲です。

■NISAを始めるなら、まず「NISA専用口座」を作ることから
NISAを利用するには、銀行や証券会社などの金融機関でNISA専用口座を開くことが必要です。利用できるのは日本に住んでいる18歳以上の成人で、1人につき1口座のみです。ただし、金融機関は1年単位で変更でき、すでに購入して保有している投資商品は売却するまで元の金融機関のNISA口座に残ります。

なお、株式が買えるのは証券会社のみで、銀行では買えません。株式を取引したい場合は、証券会社に口座を開く必要があります。また、購入できる投資信託の種類や本数、手数料などは金融機関によって異なるので、比較検討して選びましょう。

■つみたて投資枠なら楽々投資が可能
投資商品は一度に多額の資金で購入すると、タイミングによっては高値でつかんで損する可能性があります。しかし積立投資なら、値段が高いときには少なく、安いときには多く買い付けることになり、購入単価が平準化されて投資リスクを軽減する効果(ドルコスト平均法)が期待できます。

節税メリットは無限大!?「NISA」を手軽に始める方法
ドルコスト平均法で、購入単価が平準化されると投資リスクを軽減する効果が期待できる(画像:All About編集部作成)

つみたて投資枠を利用するには、NISA口座内で積立の設定をする必要があります。

例えば、毎月1日にAファンドを1万円、Bファンドを2万円……といった具合に、積立日や購入する商品、積立額、支払い方法などを指定します。最低積立額は金融機関によって異なり、中には100円単位で積立可能なところもあります。また、クレジットカード払いを利用するとポイントが貯められるケースもあります。

投資信託は自分で調べて投資先を選ぶ手間が省けるうえ、積立なら一度設定するだけであとは自動的に積み立てられていくので、資産運用に時間を取られたくない多忙な医師にピッタリです。

資産は長く運用すればするほど、利息が利息を生む「複利効果」によって、お金の増え方が早く、大きくなっていきます。今回NISAが無期限化されたことで非課税期間が長くなり、インカムゲインも積み重なっていくので、早く始めれば始めるほど節税メリットは広がります。まずは口座開設を考えてみてはいかがでしょうか?

文:三枝裕介(さえぐさゆうすけ)

個人投資家向けマネー雑誌『MONEY JAPAN』(現KADOKAWA)で副編集長、書籍編集長などを経て、独立。2011年には、財務省の広報誌『ファイナンス』で1年間特集記事を担当した。2018年、休刊していた『ネットマネー』(産経新聞出版)を株式会社ZUUにて復刊、編集長を務める。2020年にマネーライターに転身し、現在に至る。
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