七夕、ひな祭り、お花見など、日本には四季折々の行事や風物詩があります。行事を通じて文化と愛情を伝える「行事育」は、「根っこになる・絆になる・心豊かになる・賢くなる・元気になる」という五つの力により子どもの成長を促します。


また、毎年行事が訪れるたびに愛情にあふれた思い出がよみがえる「思い出ボタン」の効果により、子どもの人生を豊かに彩ってくれるのです。

『かしこい子に育つ季節の遊び 楽しい体験が心を豊かにする12か月の行事育』(三浦康子著/青春出版社)では、和文化研究家・三浦康子さんが「行事育」の大切さと、懐かしい季節の遊びをたっぷりと紹介しています。

今回は本書から一部を抜粋し、夏の主な行事と、夏休みに実践したい行事育のアイデアを紹介します。

■暑中見舞い (梅雨明け~立秋の前日)
「ぼくが送った暑中見舞いを、じいじとばあばはみんなに見せびらかすから、やんなっちゃうよ」と苦笑する息子。祖父母にとって、これほど効く栄養剤はないように思います。  

暑中見舞いを家族宛てに内緒で送ってもいいですし、友達宛て、自分宛てに送るのもおすすめです。

立秋以降は「残暑見舞い」にすればOK。手紙を出すおもしろさと、もらった人が喜んでくれる嬉しさを体験させてあげてください。

▼手作り暑中見舞いのアイデア・入道雲を写真に撮って印刷し、人や動物に見立ててお絵描きする
・育てた朝顔やひまわりの写真を絵葉書にする
・オクラやレンコン、トウモロコシなどで野菜スタンプを押す
・自由にお絵描き
・ちぎり絵
・手形や足形を活かして絵を描く

■夏祭り
山車の上で太鼓を叩く同級生はヒーローに見え、綿あめ屋のおにいちゃんは魔法使い。水風船が割れたときは泣いたけど、焼きそばを食べたら泣き止んだっけ。

毎年、祖母が着せてくれる浴衣と握らせてくれた小銭の嬉しさ、夜の境内の高揚感、迷子になってしまいそうで絶対に離さなかった手のぬくもり……子どもの頃の夏祭りの思い出には、大人とは異なる視点と感情があります。

日本にはさまざまなお祭りがありますが、地元の祭りが原風景になります。
手をつないで、毎年お出かけください。

■花火
「花火をやろう」と言えばとんで来る子どもたち。我が家ではお盆の花火が定番で、手持ち花火に噴出花火、最後は線香花火で締めくくるのがお決まりのコースです。終わってべそをかく子をなだめながら、大人たちは過ぎ行く夏を感じます。

▼線香花火の楽しみ江戸時代にできた当初は、香炉に立てて観賞していたので、お線香のようだと名付けられました。線香花火が燃える様子は、5つの草花にたとえられています。それらを想像しながら観賞してみてください。

1. 蕾
2. 牡丹
3. 松葉
4. 柳
5. 散り菊

夜空に咲く花火は夏の醍醐味。花火大会の始まりは江戸時代で、大川(現在の隅田川)の川開きで、前年の大飢饉とコレラの犠牲者に対する慰霊と、邪気を払って無病息災を祈るものでした。おなじみの「玉屋」「鍵屋」の掛け声は、ここで活躍した二大花火師の屋号です。

これにならって各地で花火大会をするようになり、夏の花火が定着しました。

■お盆(8月13日~16日)
子どもは、お盆の精霊馬作りに興味津々。
きゅうりとなすに割り箸を刺して馬と牛の脚にしますが、バランスをとっているうちに短足になってしまって大笑い。失敗したきゅうりとなすがその日の食卓に登場し、また大笑いです。

▼精霊馬精霊馬は、ご先祖様があの世とこの世を行き来するための乗り物です。「ご先祖様はきゅうりの馬に乗り、なすの牛に荷物を積む」とも、「来るときはきゅうりの馬で急ぎ、帰るときはなすの牛でゆっくり戻る」ともいわれています。そう思うと、なんだか嬉しくなりますね。

■盆踊り
盆踊りは年に一度の野外ディスコ!? お盆に迎えた霊をなぐさめ、あの世へと送る行事で、この世にいる人にとっては、生きる喜びを感じたり、災いを払ったりする意味があります。

踊り方は見ているうちに覚えられるので、子どもと一緒に楽しんでみてください。盆踊りの振り付けは浴衣姿が基本なので、浴衣を着るとよく映えます。

三浦康子 プロフィール和文化研究家、ライフコーディネーター。古を紐解きながら今の暮らしを楽しむ方法をテレビ、ラジオ、新聞、雑誌、Web、講演などでレクチャーしており、行事を子育てに活かす「行事育」提唱者としても注目されている。All About「暮らしの歳時記」、キッズgoo「こども歳時記」、私の根っこプロジェクト「暮らし歳時記」などを立ち上げ、大学で教鞭をとるなど活動は多岐にわたる。著書に『子どもに伝えたい 春夏秋冬 和の行事を楽しむ絵本』(永岡書店)、監修書に『おせち』(福音館書店)ほか多数。

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