先日、読者より以下の相談をいただきました。

「トランプショックの影響で大損をこうむりました。
どうすれば挽回できるでしょうか? また、挽回したい気持ちはあるのですが、今後どのタイミングで買えばいいのかが分からず、相場が上昇していても怖くてなかなか購入に踏み切れません。この不安を克服するにはどうしたらよいでしょうか?」

2024年の夏あたりから、株式市場が荒れていますね。皮切りとなったのが2024年8月の「日銀ショック」で、この時、日経平均株価は1日で4000円も下がりました。令和のブラックマンデーとも呼ばれるくらい、激しい下落でした。

2025年に入ってからも荒れ相場は続きましたね。2025年4月3日にトランプ米大統領が相互関税を発表した時には、「トランプショック」があり、この時は、米中で関税合戦が始まり、日経平均株価は3月の高値から7000円も下がりました。

■「どう損を取り戻すか?」より「なぜ損をしたのか?」を考えよう
あの暴落がトラウマになってしまった方も多いと思います。ご質問者さまもその1人でしょう。

筆者も当時はしんどい思いをしていて、600万円くらいあった含み益が全て吹き飛び、逆に400万円くらいの含み損に転落し、ピーク時から1000万円近く減りました。

連日、株価が下がると、だんだん感覚がまひしてきます。初めのうちはキツイのですが、1週間も下げが続くと「どうにでもなれ!」という気分になってくるんですよね。

幸い、我が家は今では立ち直ることができて、当時の損を取り返し、むしろ利益に繋げることができました。
本記事では、「トランプショック」のような大変動を、どのように克服するのか、筆者の考えをまとめていきます。

■暴落時に「守りに入る」は逆効果になることも
質問内容をざっくり要約すると、

・どうやって損を取り戻すか?
・どうやってトラウマを克服するか?

という2点に集約できるかと思います。

1つずつ考えていきましょう。

まず、「どうやって損を取り戻すか?」についてですが、損をした、ということは、自分の投資手法に何かしらの問題があった、ということなので、運用スタイルを見直すよい機会です。

相場が暴落した時の「あるある」としては、リスクを抑えるために暴落している株を売って、守りに固いところにお金を避難させる、という取引が思い浮かびます。

株を売ってキャッシュを確保する。株を売って純金に換える。景気に敏感な株を売って、守りに固い株を買う。

これは感覚的には正しいのですが、実際にはうまくいかないことが多いです。なぜかというと、守りに固い株ほど下がっていない分、反発もしないからです。

しかも、暴落後には、値下がりが大きかった株ほど反発(値上がり)も大きい傾向があります。

その結果、「暴落中は大きく下がった株を握り続け、反発局面ではあまり上がらない株(または安全資産)しか持っていない」という、非常に効率の悪い取引になりがちなのです。


こうなると、“往復ビンタ”のように損を重ねてしまうことになります。

筆者自身、何度かこういう失敗を経験したことがあるのですが、「よかれ」と思ってリスクを抑えたはずの取引で、かえって傷口が広がってしまって後悔したことがあります。

■“怖くて買えない”を克服するために
さて、ご質問者さまは「どうやって損を取り戻すか?」が気になるところでしょうが、筆者はあえて「どうして損をしたのか?」に目を向けました。

つらい過去を掘り返されるのは本当に嫌なことですが、それでも振り返った理由は、これこそが損を取り戻すために重要なことだからです。

株式投資をやっていると、誰だって大きな失敗をします。しかし、大事なのはそのあとで、同じ失敗を繰り返さないために「どれだけ学習し、次に生かせるか?」にかかっています。

穴の空いたバケツに水を貯めようと思っても全て水が流れ出ていってしまうのと同じで、どんなに大きくお金を稼いでも、トランプショックのようなイレギュラーがまた起きた時に損して吹き飛ばしてしまうのでは意味がありません。

だから、損を取り戻すためにまず重要なのは「どうやって損を抑えるか」を真剣に考えることだと言えます。

株式投資は「敗者のゲーム」とも呼ばれ、どれだけよい取引をするか、ではなく、ミスが大きい人から脱落していくゲームです。

だから、「一発逆転を目指してチャンスをつかもう」と考えるよりも、「儲けたお金をしっかり最後まで守り抜くためにミスを減らそう」と考えた方が、努力が報われることが多いです。

先ほどあげた「暴落してからリスクを抑えようとすると逆効果になる」という話にしても、「だったら、暴落する前にリスクを抑えよう」とか、「銘柄を乗り換えるにしても、暴落後に大きく反発しそうなところを選ぼう」とか、いくらでも工夫の余地はあります。

■“判断軸”があるから怖くない
次に「どうやってトラウマを克服するか?」ですが、僕の場合は「判断基準がブレている」のが最大の問題だと思います。


「自分の投資判断に自信を持てない」「そもそも、何が正しくて、何が間違っているかも分からない」というのが恐怖の根源だと思うので、基礎に立ち返って、土台を作り直すのが大事な気がします。

例えば、筆者は、画像のグラフを資産運用のゴールにしています。
トランプショックで大損をこうむりました…どうすれば挽回できる?
筆者が目指す投資のゴール。図版は筆者作成

これは、僕が目指している投資のゴールです。僕は、「投資先から受け取れる金融所得を、右肩上がり増やし続けること」を目指しています。

投資先の価格が上がるか下がるかでは判断せず、投資先を通して得られる「収入がスムーズに右肩上がりに増えていれば、それで成功だ」と考えるようにしたのです。

この方針は僕にとって「北極星」のようなもので、損をしてしんどい時や、利益が出て浮かれている時に、ミスをしないための道標になってくれます。おかげで、トランプショックの時は冷静に振る舞えました。

投資歴が長くなるほど、僕は投資は「予想のゲーム」ではなく「対処のゲーム」だと感じています。予想が当たるか外れるか、ではなく、日々、突きつけられる現実に、正しく対処し続けることが大事です。

トランプショックの時は、株価が下がってもあまり気にしませんでした。僕にとって大事なのは株価ではなく、トランプ関税の影響で「業績がボロボロになって、配当を受け取れなくなる会社があるか?」でした。

リスクが大きい会社があるなら、それは売ってしまって、別の好調な会社に乗り換えた方がいいし、そうでないなら、そのまま持ち続けていようと考えていました。


幸い、トランプショックの時には「何も悪くないのに暴落している株」もたくさんあったので、関税の影響を受けないのに不当に安く売られている株を安く買うチャンスでもありました。

当時、筆者は配当利回りが2%の株を売り、3%の株に乗り換える。PER(株価収益率)が12倍の株を売り、10倍の株へ乗り換える。といった取引を淡々と繰り返していました。

※PER(株価収益率)とは、株価が企業の利益に対して割高か割安かを見る指標です

株価だけを見れば大きく損をしていましたが、トランプショックの渦中にあるお金を引き上げ、影響がなさそうなところ(でも大きなリバウンドが期待できる割安株)へお金を移動していました。

見通しが悪いところからは資金を引き上げ、見通しがよいところにお金を置いています。利回りが低い株を売り、利回りが高い株を買っているので、トランプショックのおかげで金融所得はむしろ増えました。

この指針が質問者さまにフィットするかは分かりませんが、有事でもブレずに一貫して正しい投資判断を下すためには、何かしらの「ものさし(判断基準)」が必要です。

ご質問者さまは、どういう取引を「よい」として、どういう取引を「悪い」とするのか、その判断基準を、今いちど整理してみてはいかがでしょうか。

■まとめ
以上、質問内容と回答とまとめると、

【質問】どうやって損を取り戻すか?

【回答】損につながる判断ミスを防ぐことから始める

【質問】どうやってトラウマを克服するか?

【回答】どんな時にもぶれない判断基準(ものさし)を持つ

と、筆者は考えます。

市場は厳しいところですが、うまく乗り越えて、思い通りにお金を稼げるようになった時の喜びはひとしおです。

トランプショックにめげず、損を糧にして、粘り強くいきましょう!

文:中原 良太(個人投資家・トレーダー)

18歳に株を始め、25歳でYahoo!株価予想達人で「ベストパフォーマー賞」を受賞。
主に株式投資とマネー(お金)についての情報をSNSやYouTube、メルマガなどで発信。IQ上位2%のMENSA会員。
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