今回は、そんな西武国分寺線にまつわる10のトリビアを紹介しよう。
■1. 開業130周年という長い歴史を持つ由緒ある路線
西武国分寺線と西武新宿線の東村山~本川越は、1つの路線として1895年に全通した。当時は川越鉄道といい、中央線の前身だった甲武鉄道の子会社だった。国分寺駅で甲武鉄道に乗り入れ都心への直通運転を行っていたのである。
甲武鉄道が国有化されたとき、一緒に国有化される予定だった。しかし、さまざまな事情により民営鉄道として残り、その後、西武鉄道の一路線となったわけだ。ひょっとしたら今ごろ、JR国分寺線となっていたのかもしれない。
■2. 国分寺駅の構造は歴史の産物
西武国分寺線の国分寺駅ホームは、中央線と並んで設置されている。かつては線路が中央線とつながっていた。旅客列車の直通はとうの昔に廃止されたものの、1976年までは国鉄から直通する貨物列車が運転されていた。
一方、同じ西武でも多摩湖線のホームは国分寺線とは一段高く離れたところにある。
■3. 小田急電鉄から譲受したサステナ車両
2025年5月末より国分寺線で運行を開始したサステナ車両が話題になっている。サステナ車両とは西武が他社から譲受した省エネ車両(VVVFインバータ制御車両)のことで、その第1弾として小田急電鉄8000形を1編成譲受し、整備の上、8000系として運転を開始した。
運転開始に先立ち、5月24日に西武新宿駅にて8000系の鍵(オブジェ)の引き渡し式が、小田急関係者および西武関係者の出席の下、行われた。
■4. ほぼ単線、複線区間はごく一部
西武国分寺線は全線単線である。ただし、国分寺駅から900m北上したところにある羽根沢信号場から恋ヶ窪駅までの1.2kmが複線区間だ。よって昼間は、恋ヶ窪駅と小川駅で電車の行き違いが行われている。
■5. ロマンチックな響きのある恋ヶ窪駅
昼間は、この駅で電車の行き違いがある。ところで、駅名となった恋ヶ窪という地名の由来は諸説ある。そのうちの1つは、鎌倉時代の武士と遊女の悲恋の物語だ。
ちなみに、ロマンチックな響きのある「恋」が付く駅名は全国に4つある。母恋駅(室蘭本線・北海道)、恋し浜(三陸鉄道・岩手県)、恋山形(智頭急行・鳥取県)そしてここ恋ヶ窪駅だ。
■6. 若い女性の多い鷹の台駅
鷹の台駅は、平日の午後に若い女性であふれかえるとのうわさだ。それは、津田塾大学、白梅学園(大学・短大・中高)、武蔵野美術大学などの大学の最寄り駅であり、女子学生が多いからである。登下校の時間帯に訪れると、女性たちのパワーに圧倒されるかもしれない(笑)。
また、鷹の台駅のすぐ南(国分寺寄り)で線路は玉川上水を横切っている。駅の東側には小平市立中央公園が広がり、緑豊かな情景に癒される。
■7. 平面交差の小川駅
小川駅で国分寺線は西武拝島線と交差している。2面4線のホームの外側を拝島線が、真ん中の2線を国分寺線が使用して、乗り換えには便利な構造だ。平面交差なので、線路が錯綜(さくそう)し、電車も複雑な線路をまたぎながら目的地に向かっている。単線の国分寺線は、小川駅でも上下の電車が行き違う。
■8. 駅がない多摩湖線との交差地点
小川駅と東村山駅の中間地点あたりで国分寺線は西武多摩湖線と立体交差する。普通は同じ鉄道会社の2つの路線が交差していれば、駅を設置して乗り換えができるようにするものだが、ここには駅がない。2つの路線はもともと別の鉄道会社だったので、その名残とも言える。ともに西武鉄道の路線となってから半世紀以上も経過しているのに、駅の設置構想すらないのだ。
国分寺線をまたぐ多摩湖線は交差地点から東へ数分歩いたところに八坂駅がある。国分寺へ向かうなら多摩湖線を利用すれば乗り換えなしに国分寺に行ける。
しかし、鉄道を利用して東村山に行こうとするならば、多摩湖線に乗って萩山駅に出て、拝島線に乗り換えて小平駅へ。さらに西武新宿線に乗り換えて2駅先の東村山駅で降りるという大変面倒なことになる。歩けば20分はたっぷりかかりそうで何とも中途半端だ。
■9. 消えた西武新宿線との直通列車
2019年3月までは、国分寺と本川越を直通する電車が走っていた。まさしく川越鉄道を再現するような列車だった。しかし、東村山駅付近の高架工事の影響で廃止となった。
国分寺線、西武園線を含めた全ての線路が高架化されるのは、もう少し先になりそうだが、その時、国分寺と本川越を直通する電車の運行が再開されるのかもしれない。
■10. 高架駅となる東村山駅
2025年6月29日、東村山駅付近の西武新宿線下り線が高架化された。しかし、工事は未完成で、西武新宿線上り線、国分寺線、西武園線は地上を走っている。残りは2028年度中の完成をめざして工事が続くものと思われる。全てが終われば、国分寺線と西武新宿線の乗り換えは同一ホームでスムーズに行われ、利便性が向上するであろう。
西武最古の路線である国分寺線はサステナ車両が運行を開始し、変化の兆しが見られる。開業140周年、150周年を迎えるころにはどのような姿となっているのか? 今後とも折に触れて沿線を訪れてみたい。