総務省統計局の「統計からみた我が国の高齢者-「敬老の日」にちなんで-」という統計トピックスでは、「高齢者の就業状況」を確認できます。2023年時点での65歳以上の高齢就業者数は914万人で、過去最多となっています。


元気な高齢者が増えたことや、老後資金が枯渇する「長生きリスク」に備えるためなど、働く理由はさまざまです。

しかし、ただ老後が不安だからという理由で働き続けていると、そのうち「働くだけの人生なの?」「ムリして働くのはつらい……」などと疑問を感じるようになるのではないでしょうか。

今回は、定年後、働き続けるメリットとデメリットを知り、老後どのように働くことがベストかを考えてみましょう。

■働く高齢者は「65~69歳は2人に1人、70~74歳は3人に1人、75歳以上は9人に1人」と増えている
前述の資料によれば、2023年の65歳以上人口に占める就業者の割合は「25.2%」で、前年と同率です。各年齢階級の人口に占める就業者の割合は、65~69歳では52.0%(約2人に1人)、70~74歳では34.0%(約3人に1人)、75歳以上では11.4%(約9人に1人)となっており、いずれの年齢階級においても2013年から上昇が続いています。
定年後、働き続けるメリット、デメリットには何がある?【2025年最新】
出所:総務省「統計トピックスNo.142」


■定年後、働き続けるメリットには何がある?
定年後、働くことで次の3つのメリットが得られます。

▼1:年金以外の収入があると、暮らしにゆとりが生まれる65歳以降にもらえる年金額は、厚生労働省「2023(令和5)年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると次のとおりです。

・厚生年金(会社員など):月額約14万6429円(基礎年金含む)
・国民年金(自営業など):月額約5万7584円

この金額だけで最低限の生活を送ることは可能ですが、旅行や趣味を楽しむとなると、十分な余裕があるとは言えません。

さらに、昨今の物価上昇により、食費や光熱費など日常の支出も増えており、年金だけに頼る暮らしはますます厳しくなっています。

そのため、ムリのない範囲で働き続けられれば、年金を補う形で生活の安定につながります。特にフリーランスや自営業の方は、これまでの働き方を生かして収入を得ることで、物価高の中でも安心感のある暮らしを維持しやすくなるでしょう。

▼2:社会保険に加入できる定年後も働き続け、要件を満たしていれば、社会保険(健康保険、厚生年金)に加入できます。
例えば、健康保険は75歳以上になれば後期高齢者医療制度に切り替わりますが、それまでは、今まで同様の健康保険に加入して、健康診断や人間ドックなどを割安に受けられます。

また、厚生年金は、満70歳まで加入できます。厚生年金への加入歴がある人は「老齢基礎年金」と「老齢厚生年金」の両方を受給できます。老齢厚生年金の受給額は、厚生年金の被保険者としての加入期間と、働いていたおおよその給与収入など(総報酬月額相当額)によって計算されます。定年後も厚生年金に加入し、厚生年金加入期間が長くなるほど将来もらえる老齢厚生年金受給額が増えます。

▼3:健康と“生きがい”を維持できる定年後も仕事を続けることで、規則正しい生活リズムが保たれ、心身の健康維持につながります。体を動かせば足腰が鍛えられ、頭を使えば認知機能の低下を防ぐことにもつながるでしょう。さらに、「誰かの役に立っている」「社会とつながっている」という実感は、生きがいを感じるきっかけとなります。日々の充実感が高まり、食欲や睡眠の質の向上にもよい影響をもたらしてくれるはずです。


■定年後、働き続けるデメリットには何がある?
定年後、働くことで次の3つのデメリットが生じることがあります。

▼1:体力や気力の低下で働くのが負担になる年齢を重ねると、どうしても体力や気力が低下しやすくなります。例え慣れた仕事であっても、体を使う仕事では「思ったよりキツい」と感じる場面もあるでしょう。
また、家と職場が遠ければ、通勤だけでも大きな負担になることもあります。

定年直後は元気でも、数年先も同じように働けるとは限りません。だからこそ、「働きやすさ」や「心地よい生活とのバランス」を意識しながら、ムリなく続けられる働き方を選ぶことが大切です。

▼2:給料が減少する定年後に再雇用された場合、現役時代に比べて給料が6~7割ほどに下がるケースが一般的です。ところが、勤務時間や日数、仕事内容はほとんど変わらないことも少なくありません。

働くことに生きがいややりがいを感じていれば、収入が減っても続けられるかもしれませんが、そうでなければ、モチベーションを保つのは難しいでしょう。

そのため、現役時代より年収が下がることを前提に、あらかじめ生活の固定費を見直しておきましょう。ムリなく働き続けるためには、収入減少に備えた家計の見直しもセットで考える必要があります。

▼3:仕事ばかりで趣味や旅行ができない定年後も現役時代と変わらないペースで働き続けていると、せっかくの自由な時間を思うように楽しめないことがあります。

例えば、「元気なうちに国内外の観光地を巡りたい」「ずっとやりたかった趣味に本腰を入れたい」と思っていても、気付けば仕事に追われ、気力や体力が追いつかなくなってしまうかもしれません。

定年後の働き方は、“どんな時間を過ごしたいか”を軸に考えることが大切です。

「好きなことは何か?」「どんな夢を叶えたいか?」。
そうした思いをあらかじめ言葉にし、ライフプランに組み込んでおくことで、働くこととのバランスが取りやすくなります。自分のペースを大切にしたシニアライフを描いておきましょう。

■まとめ
老後も働き続けることは、年金以外の安定した収入が得られるという面で大きなメリットがあります。ですが、人生は「働くだけ」で終わらせるものではありません。

定年前に、自分がやりたいこと・叶えたい暮らし・そのために必要なお金などを一度整理しておくことが大切です。そのうえで、「どのくらい働くか」「どんな働き方が合っているか」を見極めていきましょう。

メリットとデメリットをしっかり見つめ、自分らしいペースと目的を大切にした働き方を選ぶことで、後悔のないシニアライフにつながります。

文:舟本 美子(ファイナンシャルプランナー)

会計事務所、保険代理店や外資系の保険会社で営業職として勤務後、FPとして独立。人と比較しない自分に合ったお金との付き合い方を発信。3匹の保護猫と暮らす。All About おひとりさまのお金・ペットのお金ガイド。
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