家族がともに過ごす夏休みを、子どもたちは楽しみにしているだろうが、一家の主婦にとっては「つらい」時間でもある。今や7割以上の主婦たちが何らかの形で働いている時代、仕事の拘束時間や収入にかかわらず、夫にも家事を担ってほしいと思うのは当然なのではないだろうか。
■「そうめんでいいよ」
例えば家族で出かけた帰り道、夫は早く帰宅したがる。帰宅してから夕飯の支度をするのはおっくうだと考える妻は、「帰っても食べるものがないわよ」と言う。
「いいよ、簡単なもので。そうめんとかさ」
夫はそう言う。それが妻の導火線に火をつける。サキさん(42歳)は苦笑しながらこう言う。
「うちも毎度、これで言い争っています。夫は誤解しているんですよね。私はそうめんをゆでるのが面倒だとか、薬味もなしに食べるわけにはいかないだろうとか、そうめんだけじゃなく結局はおかずも作らないといけないだろうとか、そんなことを思っているわけじゃないんです。
同じように出かけて同じように疲れて、あるいは私の方が子どもの面倒を見ている時間が長いにもかかわらず、私が夕飯を作るのが当然だと思っていることが嫌なわけです。しかも、あたかもオレは簡単なものでいいと言う優しい夫だと言わんばかりの“そうめん”発言なわけですから」
■「しょせん」と決めつける夫
結婚11年。9歳と5歳の子を育てながら、サキさんは現在はパートで働いている。
「帰り道に夫が『簡単なものでよければオレが作るよ。そうめんでいい?』と真っ先に言ったなら、私はありがとうと言いますよ。じゃあ、私も何かおかず一品作るねとか、冷凍庫に何かあるからそれも出そうと言うだろうと思う。そういうところなんですよね、私が問題視しているのは」
だが夫には伝わらない。「しょせん」パートと同じように、「食事を作るのがきみの仕事でしょ」という言外の決めつけを感じ、サキさんはゆううつになるという。
■子どもが誘っても動かない
「このお盆時期、夫の会社は1週間以上、休みなんですよ。しかもお盆時期は高いし混むからとどこへも行く予定をたててくれない。結局は子連れで近所のプールに行くのは私。
憤懣(ふんまん)やるかたないようにマチコさん(40歳)は激しい口調でそう言った。7歳と4歳の子どもたちは、まだ子ども同士で遊びにいける年齢ではない。
1週間以上も休みがあるなら、子どもたちをせめて地域の行事に連れて行ってほしいと頼んだし、子どもたちも「お父さん、一緒に行こう」と誘ったのだが、夫は「お父さんは、いつもきみたちのために必死で働いているから疲れてるんだ」とゴロゴロ寝てばかりだ。
「親が子どもにきみたちのために働いているから疲れてるんだなんて、つまらない恩を着せてどうするんだと思いましたよ。子どもをもったのはこちら側の希望であって、子どもがもっと大きかったら、生んでくれと頼んだわけじゃないと言われちゃいますよ」
■昼食の支度を任せたら……
お盆休みでも接客業のパートをしているマチコさんは、夫が家にいる9日間の間、5日ほどしか休みがとれない。その他の日はなんとか同僚に代わってもらえるよう交渉したが、数時間早く上がれる程度にとどまった。仕事先が近所だから昼休みには家に戻り、子どもたちに昼食を食べさせる。
「私がバタバタ出たり入ったりしていても、夫は何かやっておこうかという一言もない。いいかげん腹が立ってきて、先日、『今日はお昼、お願いね』と言ったんです。
すると分かったとは言ったんだけど、夕方、帰宅すると子どもたちはおなかがすいた、と。冷凍庫にあった残りご飯をチンして3人で分けたんだそうです。1人分くらいしかなかったはずなのに」
あわてて焼きおにぎりなどの冷凍食品を用意したが、「焼きおにぎりなんて買わなくてもいいんじゃない? もったいない」と夫に言われて、ついに彼女はキレたという。
「ふだんは家事のほとんどを私がやってるよね、こういう時期だから少しは自分がやろうと思わないのかな、私だって大変なのよ、見れば分かるでしょと言ったら、『でも食事はやっぱり母親が作ったものの方が子どもは喜ぶよ』としれっと言う。
『私だって専業主婦でやっていけるなら一番いいけどね』と急所を突いたら、『オレの稼ぎが少ないと言いたいんだろ』と激怒。『少ない給料に依存してるのは誰だよ』とまで言われました。
依存じゃない、協力していかないと家庭は回らないでしょうがと言い返して、夏休み半ばの深夜に大ゲンカ。起きてきた下の子が泣き出したので、そのまま終結してしまいましたが、私はずっとモヤモヤしています」
少しでも夫の態度が変わってくれれば……。そんなふうに思う妻たちが、この夏も多くいたのではないだろうか。
▼亀山 早苗プロフィール明治大学文学部卒業。男女の人間模様を中心に20年以上にわたって取材を重ね、女性の生き方についての問題提起を続けている。恋愛や結婚・離婚、性の問題、貧困、ひきこもりなど幅広く執筆。趣味はくまモンの追っかけ、落語、歌舞伎など古典芸能鑑賞。
■「そうめんでいいよ」
例えば家族で出かけた帰り道、夫は早く帰宅したがる。帰宅してから夕飯の支度をするのはおっくうだと考える妻は、「帰っても食べるものがないわよ」と言う。
「いいよ、簡単なもので。そうめんとかさ」
夫はそう言う。それが妻の導火線に火をつける。サキさん(42歳)は苦笑しながらこう言う。
「うちも毎度、これで言い争っています。夫は誤解しているんですよね。私はそうめんをゆでるのが面倒だとか、薬味もなしに食べるわけにはいかないだろうとか、そうめんだけじゃなく結局はおかずも作らないといけないだろうとか、そんなことを思っているわけじゃないんです。
同じように出かけて同じように疲れて、あるいは私の方が子どもの面倒を見ている時間が長いにもかかわらず、私が夕飯を作るのが当然だと思っていることが嫌なわけです。しかも、あたかもオレは簡単なものでいいと言う優しい夫だと言わんばかりの“そうめん”発言なわけですから」
■「しょせん」と決めつける夫
結婚11年。9歳と5歳の子を育てながら、サキさんは現在はパートで働いている。
子どもが熱を出すと、夫はすぐ「仕事休めないの? どうせパートじゃん」と言う。立場はパートだが、彼女はチーフという立場。パートたちを束ねる責任がある。それでも夫の発言からは「しょせん」という雰囲気がにじみ出る。
「帰り道に夫が『簡単なものでよければオレが作るよ。そうめんでいい?』と真っ先に言ったなら、私はありがとうと言いますよ。じゃあ、私も何かおかず一品作るねとか、冷凍庫に何かあるからそれも出そうと言うだろうと思う。そういうところなんですよね、私が問題視しているのは」
だが夫には伝わらない。「しょせん」パートと同じように、「食事を作るのがきみの仕事でしょ」という言外の決めつけを感じ、サキさんはゆううつになるという。
■子どもが誘っても動かない
「このお盆時期、夫の会社は1週間以上、休みなんですよ。しかもお盆時期は高いし混むからとどこへも行く予定をたててくれない。結局は子連れで近所のプールに行くのは私。
近くで花火大会や盆踊りがあっても、夫は動こうとしない」
憤懣(ふんまん)やるかたないようにマチコさん(40歳)は激しい口調でそう言った。7歳と4歳の子どもたちは、まだ子ども同士で遊びにいける年齢ではない。
1週間以上も休みがあるなら、子どもたちをせめて地域の行事に連れて行ってほしいと頼んだし、子どもたちも「お父さん、一緒に行こう」と誘ったのだが、夫は「お父さんは、いつもきみたちのために必死で働いているから疲れてるんだ」とゴロゴロ寝てばかりだ。
「親が子どもにきみたちのために働いているから疲れてるんだなんて、つまらない恩を着せてどうするんだと思いましたよ。子どもをもったのはこちら側の希望であって、子どもがもっと大きかったら、生んでくれと頼んだわけじゃないと言われちゃいますよ」
■昼食の支度を任せたら……
お盆休みでも接客業のパートをしているマチコさんは、夫が家にいる9日間の間、5日ほどしか休みがとれない。その他の日はなんとか同僚に代わってもらえるよう交渉したが、数時間早く上がれる程度にとどまった。仕事先が近所だから昼休みには家に戻り、子どもたちに昼食を食べさせる。
「私がバタバタ出たり入ったりしていても、夫は何かやっておこうかという一言もない。いいかげん腹が立ってきて、先日、『今日はお昼、お願いね』と言ったんです。
すると分かったとは言ったんだけど、夕方、帰宅すると子どもたちはおなかがすいた、と。冷凍庫にあった残りご飯をチンして3人で分けたんだそうです。1人分くらいしかなかったはずなのに」
あわてて焼きおにぎりなどの冷凍食品を用意したが、「焼きおにぎりなんて買わなくてもいいんじゃない? もったいない」と夫に言われて、ついに彼女はキレたという。
「ふだんは家事のほとんどを私がやってるよね、こういう時期だから少しは自分がやろうと思わないのかな、私だって大変なのよ、見れば分かるでしょと言ったら、『でも食事はやっぱり母親が作ったものの方が子どもは喜ぶよ』としれっと言う。
『私だって専業主婦でやっていけるなら一番いいけどね』と急所を突いたら、『オレの稼ぎが少ないと言いたいんだろ』と激怒。『少ない給料に依存してるのは誰だよ』とまで言われました。
依存じゃない、協力していかないと家庭は回らないでしょうがと言い返して、夏休み半ばの深夜に大ゲンカ。起きてきた下の子が泣き出したので、そのまま終結してしまいましたが、私はずっとモヤモヤしています」
少しでも夫の態度が変わってくれれば……。そんなふうに思う妻たちが、この夏も多くいたのではないだろうか。
▼亀山 早苗プロフィール明治大学文学部卒業。男女の人間模様を中心に20年以上にわたって取材を重ね、女性の生き方についての問題提起を続けている。恋愛や結婚・離婚、性の問題、貧困、ひきこもりなど幅広く執筆。趣味はくまモンの追っかけ、落語、歌舞伎など古典芸能鑑賞。
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