誰かと食事をする際、せっかくなら気持ちのいい雰囲気をつくりたいもの。相手に不快感を与えないためにも「食事マナー」を知っておいて損はないでしょう。今回はAll About編集部に寄せられたエピソードの中から、「魚料理の食べ方」に関する体験談を紹介しつつ、All About 暮らしのマナーガイドの諏内えみが理想的な振る舞いについて解説します。■魚料理の食べ方で恥をかいた……All About編集部が実施した「食事マナーに関するアンケート」で、「食事マナーを知らずに恥ずかしい経験をしたことはありますか」と聞いたところ、魚料理の食べ方に苦労したという声が寄せられました。「食事マナーを知らずに恥ずかしい思いをしたのは、友人との高級レストランでの食事のときでした。魚料理を食べ終えた後、骨を避けるために魚を裏返したのですが、それがマナー違反だと指摘されました。その場では恥ずかしさで顔が真っ赤になり、以来マナーについて注意するようになりました。この経験から、食事中の作法の大切さを痛感しました」(40代その他/滋賀県)「子供の幼稚園のママ会(お茶会)があったときに魚のステーキでナイフとフォークが用意されていたが使い方が分からず全て箸を使用して食べた後にナイフ使ってないの?と驚かれたことがあります」(30代女性/熊本県)「フォーマルな会場で焼き魚の料理を食べた時に、見た目が汚らしくなってしまい、恥ずかしい思いをしたことがある。骨が多い焼き魚の食べ方を、あらためて学ぶ必要性を感じた」(50代男性/東京都)■器やお皿の上を乱さず、所作を丁寧に魚料理は多くの方が食べ方に迷うメニューですね。アンケートでも、焼き魚を裏返してしまい指摘を受けた、また、ナイフとフォークに自信がなく最後までお箸で食べたといった声が寄せられましたが、これは決して珍しいことではなく、誰もが一度は戸惑った経験があるでしょう。まず和食では、魚の上身からいただき、中骨を器の奥へ移動させ、下身を食べていくのが基本です。魚をひっくり返すのは粗雑で乱雑な印象を与え、器の中が乱れます。漁師町では「舟が転覆する」ことを連想させるため避けられていたようです。骨や頭は1カ所に寄せ、器を清らかに整えることが、食べ物への感謝と、最後まで丁寧にいただいた証しとなります。洋食ではフィッシュナイフやフィッシュスプーン、フォークを使っていただきます。ナイフで骨と下身の間を滑らせることで上手に骨を外すことができますよ。残った骨や頭は1カ所にまとめておきましょう。洋食での魚料理は慣れないと戸惑うこともありますが、落ち着いて扱えば最後まで上品においしくいただくことができます。和食でも洋食でも共通しているのは、器やお皿の上を乱さず、所作を丁寧に行うこと。慣れないと難しい魚料理だからこそ、上品な一つひとつの動作が“育ちがいい人Ⓡ”の佇まいを静かに映し出し、同席する人に心地よい余韻を残します。繊細な料理であるがゆえに、所作の差がそのまま美しさに反映されます。そして、それを体現できる方が本当に洗練された人なのです。魚はただ口に運ぶだけでなく、所作そのものが人となりを語ります。マナーは堅苦しい規則ではなく、場と人を心地よくつなぐ型。魚料理はその最良の舞台といえるでしょう。<調査概要>食事マナーに関するアンケート調査方法:インターネットアンケート調査実施日:2025年5月12日調査対象:全国20~60代の250人(男性:84人、女性:163人、その他:3人)※回答者のコメントは原文のまま記載しています▼諏内 えみプロフィール「マナースクール EMI SUNAI」「親子・お受験作法教室 」代表。VIPアテンダント業務を経てスクールを設立。TPOに応じた実践的で好感度の高いマナーや立ち振る舞いをレクチャー。映画やドラマで俳優への所作指導やテレビ出演多数。著書に『「育ちがいい人」だけが知っていること』(ダイヤモンド社)などがある。