「できる子」が周りから浮いてしまう「浮きこぼれ」の一因は、現代の学校教育で行われる「一斉授業」にある? それが結果的に優秀な子どもの可能性を奪っている?
実業家・堀江貴文氏の著書『バカ親につけるクスリ』は、従来型の教育意識を根底から覆し、親が「自ら仕事を作り出せる」子どもを育てるために必要な「ネオ教育論」を伝える一冊。
本書から一部抜粋し、現代の学校教育が抱える「画一的な一斉授業」の問題点と、それによって生まれる「浮きこぼれ」という現象とその解決策、またオンライン授業の可能性を解説する。
■「できる子」が損をする、非効率な一斉授業
1人1台端末がコロナ禍の2020年度に配布を前倒しされた理由には、感染症の流行などで突然休校になった場合にもすぐにオンライン授業を実施でき、学習の歩みを止めなくて済むから、という点があったはずだ。
しかしコロナ禍が収束するにつれ、現在の公立小・中学校では対面授業を重視し、オンライン授業をほとんど実施していない。
オンライン授業には、休校時だけでなくさまざまなメリットがある。1つ目には、子どもが各自の能力に応じて難易度を選んで授業を受けられる点が挙げられる。
そもそも近隣に住む同年齢の子どもたちを1カ所に集め、同じ時間に同じカリキュラムで、同じ教科書で学ばせる対面での一斉授業なんて、効率の悪さの極みだ。なぜなら、一人ひとりの生まれ持った能力には差があるからだ。
学校は「個性を認め合おう」と言う。それならば、勉強ができる子の個性、できない子の個性を認め、それぞれに合った教育をすべきだ。
こういうと、「そんなことはない、うちの子が他の子よりも勉強ができないなんておかしい」などと現状を認めない親も出てくるだろう。しかしそれは才能の差なのだからしょうがない。
■学校がつまらない「浮きこぼれ」の孤独
走るのが速い子がいれば遅い子がいるように、歌が上手な子がいればどうしても音痴な子もいるように、勉強ができる子とできない子の「格差」は確実にある。
走るのが速い子に、「遅い子に合わせて走るべきだ、全力疾走はしないでくれ」なんて言わない。
しかし勉強に関しては、「勉強が苦手な子に合わせて、ゆっくりと授業を進める」なんてことがまかり通っている。できない子を引き上げることにリソースを投入し、能力の差を均質にしようとする、それが今の日本の学校教育だ。
それでは、勉強ができる子が学校の一斉授業に意味を見出せないのは当然だ。僕も田舎の公立小学校に通っていた子ども時代、学校がつまらなくてしょうがなかった。
なお僕の場合、学校がつまらない理由にはもう1つ、周囲と会話のレベルが合わないということもあった。友人たちの会話のレベルが低すぎたのだ。僕はわざと会話をグレードダウンさせて話を合わせていたが、そんな毎日は正直つまらなかった。
「浮きこぼれ」になる子どもたちの存在も、以前よりは認知されてきている。
浮きこぼれとは、学力や学習意欲が高く、抜きん出て勉強ができるために周囲から浮いてしまい、疎外感を覚えたり孤立してしまったりする状況のことだ。学力が低いために取り残されてしまう「落ちこぼれ」の対極である。
「周囲より勉強ができるなら、別になんの問題もないじゃないか」と思われがちだが、当人たちにとっては、学習や会話のレベルが周囲と合わないことで日々ストレスが積み重なっていく。
■教師不足とオンライン授業の可能性
こうした状況も踏まえ、現在の教育現場では「習熟度別・少人数指導」が導入されてきている。それぞれの理解度に合わせて、1つの学級を2つのグループに分けたり、2つの学級を3つのグループに分けたりして、少人数で授業を行う授業形態・方法だ。
ただし対面授業において「習熟度別・少人数指導」を充実させるには、各教科ごとに、教師がより多く必要となるという課題がある。
一方で、日本では教師不足が年々ひどくなっている。2024年4月の文部科学省アンケートでは、32%の教育委員会が「教師不足は1年前より悪化した」と答えている。
そのため、完全に「習熟度別・少人数指導」をできているという学校はない。「算数の単元によって、一部取り入れている」などといった形にとどまっている。
こうした勉強に関する能力格差を解消するための方策こそ、「授業をすべてオンラインにする」ことなのだ。
できる子に関しては、つまずきやすいポイントなどを少し教えるだけで、あとは放っておいても自習しどんどん学力をつけていくだろう。
他方、できない子には、教え方が抜群にうまい教師の授業をオンラインで受けさせつつ、オフライン(対面)も併用して、チューター役の教師が細やかに勉強をサポートする。そうして学力を底上げしていけばよい。
こうすれば日本の子どもたち全体の学力アップにつながり、子どもたち自身、「浮きこぼれ」感も「落ちこぼれ」感も感じなくて済むようになる。
堀江 貴文(ほりえ たかふみ)プロフィール
1972年福岡県生まれ。91年東京大学入学、のち中退。96年、有限会社オン・ザ・エッヂ設立。02年、旧ライブドアから営業権を取得。04年、社名を株式会社ライブドアに変更し、代表取締役SEOとなる。06年1月、証券取引法違反で逮捕。11年4月懲役2年6ヶ月の実刑判決が確定。13年3月に仮出所。著書に『拝金』ほか多数。
実業家・堀江貴文氏の著書『バカ親につけるクスリ』は、従来型の教育意識を根底から覆し、親が「自ら仕事を作り出せる」子どもを育てるために必要な「ネオ教育論」を伝える一冊。
本書から一部抜粋し、現代の学校教育が抱える「画一的な一斉授業」の問題点と、それによって生まれる「浮きこぼれ」という現象とその解決策、またオンライン授業の可能性を解説する。
■「できる子」が損をする、非効率な一斉授業
1人1台端末がコロナ禍の2020年度に配布を前倒しされた理由には、感染症の流行などで突然休校になった場合にもすぐにオンライン授業を実施でき、学習の歩みを止めなくて済むから、という点があったはずだ。
しかしコロナ禍が収束するにつれ、現在の公立小・中学校では対面授業を重視し、オンライン授業をほとんど実施していない。
オンライン授業には、休校時だけでなくさまざまなメリットがある。1つ目には、子どもが各自の能力に応じて難易度を選んで授業を受けられる点が挙げられる。
そもそも近隣に住む同年齢の子どもたちを1カ所に集め、同じ時間に同じカリキュラムで、同じ教科書で学ばせる対面での一斉授業なんて、効率の悪さの極みだ。なぜなら、一人ひとりの生まれ持った能力には差があるからだ。
学校は「個性を認め合おう」と言う。それならば、勉強ができる子の個性、できない子の個性を認め、それぞれに合った教育をすべきだ。
こういうと、「そんなことはない、うちの子が他の子よりも勉強ができないなんておかしい」などと現状を認めない親も出てくるだろう。しかしそれは才能の差なのだからしょうがない。
■学校がつまらない「浮きこぼれ」の孤独
走るのが速い子がいれば遅い子がいるように、歌が上手な子がいればどうしても音痴な子もいるように、勉強ができる子とできない子の「格差」は確実にある。
走るのが速い子に、「遅い子に合わせて走るべきだ、全力疾走はしないでくれ」なんて言わない。
歌が上手な子に、「音痴な子に合わせて、ちょっと音程を外して歌え」なんて言わないはずだ。
しかし勉強に関しては、「勉強が苦手な子に合わせて、ゆっくりと授業を進める」なんてことがまかり通っている。できない子を引き上げることにリソースを投入し、能力の差を均質にしようとする、それが今の日本の学校教育だ。
それでは、勉強ができる子が学校の一斉授業に意味を見出せないのは当然だ。僕も田舎の公立小学校に通っていた子ども時代、学校がつまらなくてしょうがなかった。
なお僕の場合、学校がつまらない理由にはもう1つ、周囲と会話のレベルが合わないということもあった。友人たちの会話のレベルが低すぎたのだ。僕はわざと会話をグレードダウンさせて話を合わせていたが、そんな毎日は正直つまらなかった。
「浮きこぼれ」になる子どもたちの存在も、以前よりは認知されてきている。
浮きこぼれとは、学力や学習意欲が高く、抜きん出て勉強ができるために周囲から浮いてしまい、疎外感を覚えたり孤立してしまったりする状況のことだ。学力が低いために取り残されてしまう「落ちこぼれ」の対極である。
「周囲より勉強ができるなら、別になんの問題もないじゃないか」と思われがちだが、当人たちにとっては、学習や会話のレベルが周囲と合わないことで日々ストレスが積み重なっていく。
浮きこぼれが原因で不登校になる子さえいる。
■教師不足とオンライン授業の可能性
こうした状況も踏まえ、現在の教育現場では「習熟度別・少人数指導」が導入されてきている。それぞれの理解度に合わせて、1つの学級を2つのグループに分けたり、2つの学級を3つのグループに分けたりして、少人数で授業を行う授業形態・方法だ。
ただし対面授業において「習熟度別・少人数指導」を充実させるには、各教科ごとに、教師がより多く必要となるという課題がある。
一方で、日本では教師不足が年々ひどくなっている。2024年4月の文部科学省アンケートでは、32%の教育委員会が「教師不足は1年前より悪化した」と答えている。
そのため、完全に「習熟度別・少人数指導」をできているという学校はない。「算数の単元によって、一部取り入れている」などといった形にとどまっている。
こうした勉強に関する能力格差を解消するための方策こそ、「授業をすべてオンラインにする」ことなのだ。
できる子に関しては、つまずきやすいポイントなどを少し教えるだけで、あとは放っておいても自習しどんどん学力をつけていくだろう。
他方、できない子には、教え方が抜群にうまい教師の授業をオンラインで受けさせつつ、オフライン(対面)も併用して、チューター役の教師が細やかに勉強をサポートする。そうして学力を底上げしていけばよい。
こうすれば日本の子どもたち全体の学力アップにつながり、子どもたち自身、「浮きこぼれ」感も「落ちこぼれ」感も感じなくて済むようになる。
堀江 貴文(ほりえ たかふみ)プロフィール
1972年福岡県生まれ。91年東京大学入学、のち中退。96年、有限会社オン・ザ・エッヂ設立。02年、旧ライブドアから営業権を取得。04年、社名を株式会社ライブドアに変更し、代表取締役SEOとなる。06年1月、証券取引法違反で逮捕。11年4月懲役2年6ヶ月の実刑判決が確定。13年3月に仮出所。著書に『拝金』ほか多数。
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