それらは「起立性調節障害(OD)」が原因かもしれません。起立性調節障害は意思や性格の問題ではなく、体の自律神経がうまく働かないことが原因で起こる病気です。
■起立性調節障害を乗り越える治療法のポイント
起立性調節障害の治療は、主に生活習慣の改善を含む「非薬物療法」と、「薬物療法」で進めます。これらを組み合わせることで、症状の改善を目指し、日常生活の支障を取り除いていきます。
さらに、症状のきっかけとなる「心の悩み」が存在することも多いため、心理的なアプローチによる心のケアも重要です。以下でそれぞれのアプローチ法を具体的にご紹介しましょう。
■ 生活習慣の改善をメインとする「非薬物療法」
薬に頼る前に、まずは生活を整えることが最も重要です。基本となる注意点を以下に挙げます。
・血液量を増やすために、水分は1日1.5~2L、塩分は10~12gを目安に摂取する(持病がある場合は、塩分摂取量について医師に相談する)。スポーツドリンクも効果的
・バランスのよい食事を心がける。特に朝食を抜かないようにし、3食とる
・夜更かしを避け、十分な睡眠を確保する
・寝る前のスマホやゲームは、自律神経を刺激するため控える
・急な体位変換を避ける。起き上がるときも急に立たず、ベッドの上で足を動かしてからゆっくりと起きる
・日中も着圧ソックスなどで下半身に血液がたまるのを防ぎ、立ちくらみを予防する
・長時間の入浴・熱いシャワーは動悸などの症状が悪化することがあるので、入浴はぬるめのお湯で短時間、またはシャワーで済ませる
これらのちょっとした工夫から、生活習慣を整えていくことが重要です。
■医師・専門家のサポートを受けて、症状のコントロールを目指す「薬物療法」
生活習慣の見直しや非薬物療法で症状が十分に改善しない場合は、薬物療法が検討されます。
西洋薬に抵抗がある場合や、冷えや疲れやすさなどの他の症状を伴うときは、「五苓散」や「苓桂朮甘湯」など漢方薬が使われることもあります。
■心理的要素との関係も……心の不調が強い場合は、心療内科の受診も検討
起立性調節障害には、「心理的要素」が関わることもあります。思春期は、テストや部活動、友人や家族との人間関係などの日々のストレスや悩みによって、症状が悪化することがあります。しかし、この心理的な要素は、しばしば見過ごされがちです。
「朝起きられない」「体がだるい」といった症状は、本人の意思とは関係なく起こります。ご家族をはじめとする周りの大人は、「怠けている」と決めつけないようにしてください。
これらの症状に加えて、「気分が落ち込む」「食欲や意欲がない」「眠れない」といった心の不調が強そうな場合は、心療内科などの専門医の受診を検討しましょう。
薬物療法や認知行動療法、カウンセリングなどが有効なこともありますし、心療内科やカウンセラーと話すことで悩みの核心が明らかになり、解決の糸口が見つかることもあります。
■家族や周囲の理解が不可欠! 起立性調節障害の治療・回復は「チーム医療」で
起立性調節障害の治療は、本人の努力だけでなく、家族や学校など周囲の理解が不可欠です。本人に「自分は怠けている」と思わせるのではなく、ゆっくりと症状と向き合える環境を整えてあげてください。
体調のよい日と悪い日があることを受け入れ、無理をさせないことが大切です。
「あなたの症状は、あなたのせいではない」と、いつでも味方であることを本人に伝え、温かく支援してください。
▼武井 智昭プロフィール0歳から100歳まで1世紀を診るプライマリケア医。小児科・内科の2つの専門医として、感染症、アレルギー、生活習慣病まで、幅広い診療と執筆活動を行っている。