60代の働き方は、起業に限らず会社員・副業・地域活動など多様です。社会保険の活用や老後資金の見える化を意識し、自分らしさを生かして無理なく続けられる働き方を設計することが、安心と納得感ある暮らしにつながります。
選択肢は1つではありません。

■60歳以降は「自分らしく働きたい」「社会と関わり続けたい」という声が多数
「資格もあるし、経験も積んだ。だから定年後は起業したい」
「自分らしく働きたいけれど、収入が不安で踏み出せない」
こんな相談が増えています。

60歳以降は再雇用や非正規で働く人が増え、収入が下がる一方で、「自分らしく働きたい」「社会と関わり続けたい」という希望も高まっています。

その一方で、起業に踏み出したものの、数年で挫折するケースもあります。資格や経験があっても、起業を順調に進めるには「すでに顧客やファンがいる状態」が整っていることが助けになります。これは必須ではありませんが、収入の安定や精神的な余裕につながります。

準備が整っていない場合は、社会保険のある職場で働きながら、少しずつチャレンジする方法が現実的です。生活の基盤を維持しながら進めることで、長く続けられる働き方につながります。焦らず、段階的に整えていくことで、結果的に自分らしい働き方を実現できるのです。

■60代の仕事に必要な3つの視点
60代が仕事を続けるうえで必要な視点とは、以下の3つです。

①無理なく続けられること
週3日や短時間勤務など、体力や生活リズムに合った働き方が理想です。
無理のないペースで働くことで、心身の健康も保ちやすくなります。

②暮らしを支える収入を得られること
年金だけでは不安を感じる方も多く、生活費の一部を補う収入源としての仕事が必要です。収入とやりがいのバランスが継続の鍵になります。

③人とつながる機会があること
働くことで社会との接点を持ち続けられ、孤立の防止や心の健康にもつながるでしょう。地域活動や相談業務など、経験を生かせる場面もあります。

■どんな仕事がある?モデルケースと具体例
・週3日勤務の会社員:事務補助や受付など、要件を満たせば社会保険を維持しながら働けます
・趣味や資格を生かす仕事:講師、相談員、水彩画販売や手芸教室など
・地域活動:読み聞かせ、見守り、自治体役員などを通じて社会と関われます
・副業型:ブログやSNSなどを使っての情報発信、ガイド業などを“別財布”として楽しみながら、会社員としての収入も確保できます

複数の収入口を持つことで、安心感と自由度が生まれます。自分のペースで選べる働き方が、60代以降の暮らしに納得感をもたらします。

■あなたらしい選択をするために
65歳を過ぎると、介護保険料の負担や所得による健康保険料の変動に戸惑う方も少なくありません。だからこそ、老後資金の“見える化”は、働き方を考えるうえで欠かせない準備です。

「最後の夢を叶えたい」という気持ちは尊いもの。ただ、資金が不安定なまま踏み出すのではなく、安心して続けられる働き方を設計することが大切です。人生の終盤は「資産がゼロで死ぬ」ことを前提にしながらも、途中で枯渇しないように備える視点が必要でしょう。


60代からの働き方は、複数の財布を持ち、無理のないペースで続けることがポイントです。焦らず、自分らしさを軸に、納得感のある仕事を見つけていきましょう。

文:京極 佐和野(ファイナンシャルプランナー、キャリアコンサルタント)

FPオフィス ミラボ代表。CFP、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、国家資格キャリアコンサルタントなどの資格を持ち、マネープランと働き方の両面から、20年以上「稼ぐ・使う・借りる・貯める・増やす」をアドバイス。FP向け継続研修、社員向けライフプラン・キャリアデザイン研修講師として活動する傍らJ-FLEC認定アドバイザーとして携わる。
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