老後のお金や生活費が足りるのか不安ですよね。老後生活の収入の柱になるのが「老齢年金」ですが、年金制度にまつわることは難しい用語が多くて、ますます不安になってしまう人もいるのではないでしょうか。
そんな年金初心者の方の疑問に専門家が回答します。今回は、年金をもらいながらアルバイトをした場合の所得税についてです。

■Q:66歳。毎月15万円の年金をもらいつつ、アルバイトで年間90万円ぐらい稼いだら、所得税も高くなるのですか?
今回はAll About編集部が設定したケーススタディーに対して回答いただきます。

「66歳。毎月の年金額は15万円、年間で180万円ほどです。年金からは税金が引かれています。年金をもらいつつ、アルバイトで年間90万円ぐらい稼いだら、所得税も高くなるのですか?」

■A:現状では課税対象となりますが、令和7年度の税制改正により、来年以降は所得税負担が軽くなる可能性があります
年金収入は「雑所得」として課税対象です。ただし、65歳以上の人には以下の控除があり、合計で158万円(公的年金等控除110万円+基礎控除48万円/令和7年9月時点)までなら非課税です。

今回のケースでは、年金収入は年間180万円。158万円を超えるため、毎月の年金から所得税が源泉徴収されています。

次にアルバイト収入を考えます。
年金収入が400万円以下の人は、給与所得(アルバイト収入から給与所得控除を引いた金額)が20万円以下であれば確定申告不要です。

給与所得控除は現在55万円なので……
年収75万円以下→所得20万円以下→確定申告不要
年収90万円→所得35万円となり、確定申告が必要

したがって、年収90万円のアルバイト収入がある場合は、所得税を納める必要があります。

■令和7年度の税制改正で税負担が軽くなる可能性があります
令和7年度の税制改正では以下の変更が行われます。

基礎控除額:現行48万円→所得に応じ最大95万円へ引き上げ
給与所得控除額:現行55万円→65万円へ引き上げ

これらの改正は令和7年12月1日に施行されます。令和7年分の公的年金等の源泉徴収において、令和7年12月の年金支払い時に、改正後の一定の基礎的控除額を用いて計算した1年分の税額と、すでに源泉徴収した税額との精算を行い、差額が生じる場合は、その差額を還付します。税制改正の詳細については、国税庁の案内をご参照ください。

この改正により、基礎控除と給与所得控除が増えるため、同じ収入でも課税されない、または税負担が軽くなる可能性があります。

まとめると……
現状:年金180万円+アルバイト90万円→課税対象になり確定申告が必要。
来年以降:税制改正により、非課税になる、もしくは税額が軽くなる可能性あり。

最新情報は日本年金機構や国税庁のサイトを確認し、必要に応じて税務署や年金事務所に相談すると安心ですよ。

<参考>令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について(国税庁)

監修・文/深川 弘恵(ファイナンシャルプランナー)
都市銀行や保険会社、保険代理店での業務経験を通じて、CFP、証券外務員の資格を取得。相談業務やマネーセミナーの講師、資格本の編集等に従事。
日本FP協会の埼玉支部においてFP活動を行っている。
編集部おすすめ