秋らしい風を感じるようになってきました。ふと空を見上げて、「空が高いなあ」と感じることはありませんか。
空気が澄んで、青がくっきりと映えるこの季節は、雲もまたひときわ存在感を増します。

「天高く馬肥ゆる秋」という言葉があるように、秋空はどこか伸びやかで心を解き放ってくれるようです。そんな空を彩るのが、うろこ雲、いわし雲、さば雲、そしてひつじ雲。いずれも秋の季語として知られています。名前はよく聞くけれど、実際にはどう違うのでしょうか。

■秋の雲それぞれの「違い」と「呼び名」
実は「うろこ雲」「いわし雲」「さば雲」は、すべて巻積雲(けんせきうん)と呼ばれる高いところにできる雲の仲間です。およそ上空5000~1万3000mに現れ、小さな雲のかたまりが群れるように広がります。

一方の「ひつじ雲」は、それより少し低い2000~7000mあたりにできる高積雲(こうせきうん)に分類されることが多い雲です。

呼び名の違いは「見た目の印象」によるところが大きいです。たとえば……

うろこ雲
魚の鱗(うろこ)のように、小さい雲が並んでいます。

いわし雲
鰯(いわし)の群れが泳ぐように、細長い雲や小ぶりの雲がたくさん集まっています。

さば雲
鯖(さば)の背中の模様のように、うねる縞模様がはっきりしています。


ひつじ雲
羊の群れのように、1つひとつの塊が大きめでふんわり見えます。

ただし境界はあいまいで、どれが正解というわけではありません。同じ空を見ても人によって呼び方が違うのも、また楽しいところです。

■秋の雲簡単に「見分ける方法」
雲を見分ける時のちょっとしたコツに、「指で隠してみる」という方法があります。

人差し指を立てて腕をまっすぐ伸ばし、空を見てみます。人差し指に隠れてしまうような小さな雲片なら、うろこ雲の可能性大。逆に人差し指でも隠しきれないほど大きな塊なら、ひつじ雲と考えてよさそうです。

「これはどっちだろう?」と、空を見上げながら家族や友人と話してみるのも楽しい青空観察です。

■秋の雲が知らせる「天気の変化」
これらの秋の雲には、天気を予測するヒントが隠れているとも言われてきました。

たとえば「うろこ雲が出ると3日以内に雨」「ひつじ雲が出た翌日は雨」といった言い伝えがあります。昔の人々の経験値から生まれた言い伝えですが、自然科学的に見ても、低気圧や前線が近づいているときにこうした雲が現れることが多いそうです。

とはいえ、必ず当たるわけではないので「空のサインとして楽しむ」程度の気持ちで眺めるのがちょうどいいでしょう。


■秋の雲にまつわる「豆知識」
なぜ秋の雲が魚や羊に例えられるのかといえば、その形のイメージから。細かい雲片がきらきらと連なる姿は魚のうろこそのもの。縞模様は鯖の背を思わせ、ふんわりした塊は羊の群れを連想させます。

こうした自然の例えは、俳句や和歌の世界でも秋を表す季語として大切にされてきました。

昔の人々は農作業や航海に活かすため、そうやって雲をじっと観察して天気を予測しました。気象予報がなかった時代、雲はまさに「空の教科書」だったのです。

雲の呼び名や豆知識を知ると、何気なく見上げていた秋空がぐっと面白くなります。散歩の途中にふと空を仰いで、「今日はうろこかな、ひつじかな」と考えてみる。そんな小さな習慣が、日々の生活に季節の彩りを添えてくれるはずです。

秋晴れの日、ぜひ空を見上げてお気に入りの雲を探してみてください。
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