老後のお金や生活費が足りるのか不安ですよね。老後生活の収入の柱になるのが「老齢年金」ですが、年金制度にまつわることは難しい用語が多くて、ますます不安になってしまう人もいるのではないでしょうか。
そんな年金初心者の方の疑問に専門家が回答します。今回は、年金収入があってパートをしている場合の確定申告についてです。

■Q:年金を年間100万円受け取っています。パートでの年収が100万円ほどですが、確定申告をしないといけないでしょうか?
今回はAll About編集部が設定したケーススタディーに対して回答いただきます。

「年金を年間100万円受け取っています。パートでの年収が100万円ほどですが、確定申告をしないといけないでしょうか?」

■A:年金収入が100万円、パート年収が100万円の場合、所得税はかかりませんので、確定申告は必要ありません
このケースのように年金収入が100万円、パート年収が100万円の場合、所得税はかかりませんので、確定申告は必要ありません。

最初に所得税の計算方法を確認しておきましょう。

▼所得税の計算手順(例・2025年11月まで)①1月1日~12月31日の収入の合計を計算します。
②年間の収入から差し引ける経費を確認します。会社員やパート、アルバイトの人は、経費の代わりに、給与所得控除額55万円(給与収入162万5000円まで)を差し引いて計算します。公的年金収入は、65歳以上なら公的年金等控除額110万円(65歳以上)を差し引けます。
③納税者本人の所得に応じて収入から基礎控除(48万円)を差し引きます。

④③で計算された課税所得金額に所定の所得税の税率を乗じて所得税を計算します

令和7年度の税制改正により、2025年12月からの計算は、給与所得控除額と基礎控除額が以下の金額に変更になりますので注意が必要です。

基礎控除額:現行48万円→所得に応じ最大95万円へ引き上げ
給与所得控除額:現行55万円→65万円へ引き上げ

<参考>令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について(国税庁)

では、このケースの場合の所得税を計算してみます。

年間の収入は、公的年金収入と、パート収入の2つあります。年金収入とパート収入をそれぞれ上記の計算手順で計算します。

▼年金収入年金収入:100万円
公的年金等控除額110万円
年金収入100万円-公的年金等控除額110万円=▲10万円

▼パート収入パート収入:100万円
【令和7年11月まで】
・収入から給与所得控除額55万円と、基礎控除額48万円を差し引きます。
・パート収入100万円-給与所得控除額55万円-基礎控除48万円=▲3万円

【令和7年12月から】
・収入から給与所得控除額65万円と、基礎控除額95万円を差し引きます。
・パート収入100万円-給与所得控除額65万円-基礎控除額95万円=▲60万円

このケースでは、課税所得は0円となり所得税はかかりません。確定申告は原則不要です。

ただしパート先で所得税が天引きされている人は、確定申告をすれば払い過ぎた税金が戻る可能性があります。その他、医療費控除の対象になる人も確定申告をすることで、税金が戻ります。

詳細については、お近くの税務署に確認してみましょう。

監修・文/深川 弘恵(ファイナンシャルプランナー)
都市銀行や保険会社、保険代理店での業務経験を通じて、CFP、証券外務員の資格を取得。
相談業務やマネーセミナーの講師、資格本の編集等に従事。日本FP協会の埼玉支部においてFP活動を行っている。
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