老後のお金や生活費が足りるのか不安ですよね。老後生活の収入の柱になるのが「老齢年金」ですが、年金制度にまつわることは、難しい用語が多くて、ますます不安になってしまう人もいるのではないでしょうか。
そんな年金初心者の方の疑問に専門家が回答します。

今回は、繰り下げていた老齢基礎年金を一括で受け取れるかという質問です。

■Q:繰り下げていた老齢基礎年金を68歳から受け取る予定です。この3年間分を一括で受け取れると聞きましたが、本当?
「主人が先日、退職しました。65歳から老齢厚生年金だけ受け取っていましたが、繰り下げていた老齢基礎年金を68歳から受け取る予定です。この3年間分を一括で受け取れると聞きましたが、本当でしょうか?」(ニコニコさん)

■A:一括で受け取ることはできますが、その場合は「65歳時点の本来の年金額」をまとめて受け取る形になります。繰り下げ増額分はつきません
老齢基礎年金と老齢厚生年金は原則65歳から受け取りを始めますが、希望すれば、66歳以降75歳まで受給開始を遅らせる「繰り下げ受給」ができます。※昭和27年4月1日以前生まれの方の繰り下げ上限年齢は70歳まで。

繰り下げると、繰り下げた月数に応じて1カ月当たり0.7%ずつ年金額が増え、増額率は一生変わりません。なお、老齢基礎年金と老齢厚生年金は別々に繰り下げられます。

ニコニコさんのご主人のように老齢基礎年金を繰り下げている場合、通常であれば、68歳で請求すれば、3年間繰り下げた分の増額(0.7%×36カ月=25.2%増)がついた年金を受け取れることになります。

一方で、「さかのぼり請求」をすることも可能です。
この方法を選ぶと、65歳時点では年金を請求しなかったものとして扱われ、65歳時点の本来の年金額(増額なし)を3年分まとめて受け取れます。つまり、一括では受け取れるものの、繰り下げによる増額分がつかなくなる点には注意が必要です。さらに68歳から受け取る年金額も増額されないことを覚えておきましょう。

監修・文/深川 弘恵(ファイナンシャルプランナー)
都市銀行や保険会社、保険代理店での業務経験を通じて、CFP、証券外務員の資格を取得。相談業務やマネーセミナーの講師、資格本の編集等に従事。日本FP協会の埼玉支部においてFP活動を行っている。
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