老後のお金や生活費が足りるのか不安ですよね。老後生活の収入の柱になるのが「老齢年金」ですが、年金制度にまつわることは難しい用語が多くて、ますます不安になってしまう人もいるのではないでしょうか。
そんな年金初心者の方の疑問に専門家が回答します。今回は、パート先で厚生年金に加入することになった場合の注意点です。

■Q:年金受給中の60代女性です。もし勤め先で厚生年金に入ることになったら、働く収入の上限は変わりますか?
「60代で年金を受給しながら働いている女性です。勤め先で厚生年金に加入することになった場合、働いてよい収入の上限は変わりますか?」(なおみさん)

■A:厚生年金に加入して働く場合は、年金額と給与の合計額によって老齢厚生年金の支給額が調整されるため、事実上「働ける収入の上限」は変わります
60歳以上で老齢厚生年金(特別支給の老齢厚生年金を含む)を受給しながら働いている人が厚生年金に加入する場合……

基本月額(老齢厚生年金の報酬比例部分を12で割った額)+総報酬月額相当額(目安として月給+直近1年の賞与÷12)

この合計が51万円を超えると、老齢厚生年金が一部または全額支給停止となります。

令和7年4月以降は51万円が基準ですが、法改正により令和8年度からは62万円に引き上げられる予定です。

なお、厚生年金に加入しない働き方(短時間パートなど)なら、いくら働いても老齢厚生年金はカットされません。老齢基礎年金は減額の対象外です。

■厚生年金に加入するのはどんな働き方?
なおみさんの質問は「厚生年金に入ると収入上限が変わるか」というものでしたが、その前提として、どんな働き方だと厚生年金加入になるのかを確認しておきましょう。

従業員51人以上の事業所(2024年10月~)で、次の条件を全て満たすパート・アルバイトは厚生年金に加入することになります。

・週20時間以上
・月額賃金8万8000円以上
・2カ月超の雇用見込みがある
・学生ではない

従業員50人以下の事業所でも、労使合意があれば上記条件で加入可能です。

なお、厚生年金の適用範囲は今後も順次拡大していく方向で、将来的には勤務先の規模にかかわらず、週20時間以上・月収8万8000円以上の短時間労働者も加入する流れになっています。


厚生年金に加入した働き方の場合、給与や賞与と年金額の合計によっては老齢厚生年金が調整されることがあります。

この仕組みを理解しておくことで、「働き過ぎて年金が減る……」といった不安を防ぐことができます。

監修・文/深川 弘恵(ファイナンシャルプランナー)
都市銀行や保険会社、保険代理店での業務経験を通じて、CFP、証券外務員の資格を取得。相談業務やマネーセミナーの講師、資格本の編集等に従事。日本FP協会の埼玉支部においてFP活動を行っている。
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