老後のお金や生活費が足りるのか不安ですよね。老後生活の収入の柱になるのが「老齢年金」ですが、年金制度にまつわることは、難しい用語が多くて、ますます不安になってしまう人もいるのではないでしょうか。
そんな年金初心者の方の疑問に専門家が回答します。今回は、年金の未加入期間があるという女性からの質問です。

■Q:昭和40年生まれの60歳女性です。年金の未加入期間があり、今後は別居予定。今のうちに何をしておくべき?
「昭和40年8月生まれ、現在60歳の女性です。正社員として働いており、あと5年は仕事を続ける予定です。10代の頃に学生結婚をしましたが、その後1年ほど、夫が私の年金手続きをしておらず、国民年金の未加入期間があります。その後は自分の判断で第3号ではなく保険料を納め、現在の会社に入社しました。夫婦仲はあまりよくなく、数年後には別居の予定です。年収は源泉徴収で500万円前後あります。年金の未加入期間や、将来の別居が年金に影響しないか心配です。今のうちに何かしておくべきことはありますか?」(晴ぼさん)

■A:まずは「年金記録の確認」が最優先。
未加入期間の扱いと、将来の生活変化への影響を整理しておきましょう
結論からいうと、晴ぼさんが今すぐやっておくべきことは2つです。

それは、
①年金記録の正確な確認
②未加入(未納)期間の扱いをはっきりさせること
です。

ご相談内容を見ると、「夫が手続きをしていなかった1年間」がありますが、ここは慎重に確認したいポイントです。当時、配偶者が会社員で、晴ぼさん自身が専業主婦や扶養の範囲内だった場合、本来は国民年金の第3号被保険者として扱われる期間だった可能性があります。

その場合、単なる「未納」ではなく、手続き漏れである可能性も考えられます。このケースでは、年金事務所で記録訂正ができることもあります。

まずは「ねんきん定期便」や年金事務所で、
・本当に未納期間なのか
・第3号被保険者だった可能性がないか
を確認することが最優先です。原則として、60歳から65歳までの間は、国民年金の「任意加入制度」を使って未納分を補えます。ただし、晴ぼさんは今後も正社員として厚生年金に加入し続ける予定とのこと。

この場合、厚生年金に加入している間は、国民年金の任意加入はできません。その代わり、60歳以降も厚生年金に加入して働くことで、老齢厚生年金に「経過的加算」が上乗せされる仕組みがあります。未納期間があっても、働き続けることで将来の年金額を補うことは可能です。


晴ぼさんご自身は、正社員として厚生年金に加入しているため、別居しても、ご自身の年金には直接的な影響はありません。ただし、将来、ご主人の老齢厚生年金に「配偶者加給年金」がついている場合、別居により「生計維持関係がない」と判断されると、加給年金は支給停止になる可能性があります。

もし将来的に離婚となった場合は「年金分割制度」もありますが、実務上は大きな金額になるケースは多くありません。

晴ぼさんは、安定した収入があり、今後も働く意欲をお持ちです。年金分割などに過度な期待をするよりも、できるだけ長く厚生年金に加入して働くことが、将来の年金額を増やす一番確実な方法です。働くことは、年金額だけでなく、生活の安定や社会とのつながりという面でもプラスになります。

無理のない範囲で、今の働き方を続けていくことを前向きに検討してみてください。

監修・文/深川 弘恵(ファイナンシャルプランナー)
都市銀行や保険会社、保険代理店での業務経験を通じて、CFP、証券外務員の資格を取得。相談業務やマネーセミナーの講師、資格本の編集等に従事。日本FP協会の埼玉支部においてFP活動を行っている。
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