関係が希薄になることは、孤独感の問題にとどまりません。判断力の低下や健康悪化を招き、ひいては家計を破綻させる大きな要因となります。今回は、社会的な孤立がなぜ老後破産につながるのか、その理由と対策を整理してみましょう。
■仕事を完全に辞めた後、相談相手を失う
老後破産のリスクが高まるのは、現役時代や再雇用期間が終わり、社会とのつながりが一気に減ってしまうタイミングです。
それまでは職場の人間関係が「外との窓口」になっていましたが、完全にリタイアして「家族以外とほとんど会話をしない」生活に入ると、小さな判断を全て1人で抱え込むことになります。地域や趣味のつながりを持たず、困った時に頼れる先が一つもない。こうした状態が続くと、忍び寄る老後のリスクが見えにくくなっていきます。
■孤立が「無駄な支出」と「体調悪化」を招く
社会的な孤立は、家計に次の2つのダメージを与えます。
▼①判断力の低下とトラブルの増加高額なリフォームや介護サービスの選択など、老後は重要な決断を求められる場面が増えます。第三者の冷静な視点がない環境は、悪質な業者や詐欺の標的になりやすく、「相談できる人がいない」だけで資産を失うリスクが跳ね上がります。
▼②健康が損なわれることでの支出の増加人との関わりが減ると外出の機会が減り、生活リズムが乱れやすくなります。運動不足や食生活の偏りは、そのまま医療費や介護費の増大に直結し、家計に直接的な打撃を与えます。
■フルタイムでなくても「細く長く」働き続ける
老後破産を防ぐために最もおすすめしたいのが、「自分に無理のない範囲で働き続けること」です。週に数日、数時間の仕事であっても、社会とつながり続けることには以下の3つのメリットがあります。
▼①「役割」が心身を若く保つ誰かに必要とされる、頼りにされるという実感が、精神的なハリを生む。
▼②強制的な生活リズムの維持仕事があることで決まった時間に起き、身だしなみを整えるという習慣が健康寿命を延ばす。
▼③情報のアップデートができる職場の仲間との何気ない会話が、最新の詐欺の手口を知るキッカケになったり、お得な公的制度を知る機会になったりする。
特別な広い交友関係は必要ありません。ただ、自分の身体に負担をかけない範囲で「社会の中に居場所」を持ち続けること。その小さな習慣が、不要な出費や大きな失敗を防ぐ「見えない資産」となります。定年後の安心は、貯蓄額だけでなく、こうした「孤立しない暮らし方」によっても支えられているのです。
文:舟本 美子(ファイナンシャルプランナー)
会計事務所、保険代理店や外資系の保険会社で営業職として勤務後、FPとして独立。人と比較しない自分に合ったお金との付き合い方を発信。
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