結婚する時点で、相手のことを何もかも分かっているとは限らない。一生かかっても、一人の人間を理解するのは難しい。
とはいえ、「こんな発言をするのか」ということが増えれば、当然、結婚生活を継続するのがつらくなっていくだろう。

■ようやく子どもを授かって
結婚したら自然と妊娠するものだと思っていた。そう言うのはリカさん(38歳)だ。32歳のとき、2年付き合っていた同い年の彼と結婚したが、なかなか妊娠しなかった。

「私は仕事が好きだったけど、母親にもなりたかった。ただ、不妊治療にまでは踏み切れなくて。でももうこのままではまずいと思い、夫とも話し合っていたころ、妊娠が分かったんです。うれしかった。そして昨年の初めに元気な女の子が生まれました」

産休と育休をとって、リカさんは久々に平日家にいて、子どもの面倒をみたり家事をしたりという日々を送った。夫も夏に1カ月ほど育休をとってくれた。

「医学的には立派な高齢出産だったけど、幸い、産後も特に大きなことはなかった。ただ、体力はひどく衰えましたね。
それでも娘が笑えば全てハッピー。そんな感じでゆっくり体力を回復させながらやってきました」

■夫の驚きの一言
保育園のめどもたちそうなので、春には職場復帰するつもりだ。そんなリカさんに、ある日、夫が言った。

「今、育休中だよねと突然夫が言ったんです。そうだよと答えると、『ということは収入は6、7割だよね』と。だから何と言ったら、『もうちょっと家事をしてくれてもいいんじゃないかと思って』ですって。

うちはだいたい給料も同じくらいなので、できる限り折半してやってきたんです。でも夫は育休中で家にいる私が、前と同じくらいしか家事を負担していないのがおかしいと思い始めたみたい」

リカさんは、「子育ては私がメインだよね、そもそも子どもを生んだのは私だよね、あなたは命を張って子どもを生んだ私のことを全然考えてないのね」と一気に言った。

「決して安産じゃなかったし、一人で子どもを見ていると急にこの子、無事に大きくなれるかしらと不安に襲われたこともある。そんなこと、いちいち夫には言いませんけどね。夫が育休をとったのは、私への思いやりかと思っていたけど、会社にとれと言われただけなのかもしれない」

収入が減ったからもっと家事をやれということなのか、ずいぶんひどい価値観だねと夫に問いただした。夫は口ごもりながら、「いや、そういうわけじゃないけど」とつぶやいた。


■夫への信頼感がどんどん減っていく
誰よりも信頼していた夫の不用意なのか意識的なのか分からない一言によって、リカさんは夫への気持ちが一気に変わった。

「いろいろ考えてしまいましたね。私が病気になって、例えば仕事を続けられなくなったら、きっと夫はやっかい者だと思うんだろうなとか。産休中に減収しただけで、もっと家事をやれと言われるのは、本当に意外だった。そういう人だとは思わなかったからショックでもありました」

夫はそれ以降、そういう言葉は吐いていない。共働きのときと同様、風呂掃除などもしているが、どことなく家事がいいかげんになっているような気もする。そういう疑念を持っていること自体が、モヤモヤして嫌だとリカさんは言う。

全幅の信頼が剥がれ落ちていく。そんな気持ちだったのだろう。

■知識のなさなのかそれとも……
「もともと私たちは、家事は完璧でなくていいよねと一致していたんです。二人だけで暮らしていたときは掃除も週に2回くらいだった。子どもが生まれてからは、塵やホコリが怖いので、私が毎日やっていますが、それでも窓を拭くとか網戸を洗うとか、そういう大きなことはなかなかできない。


たぶん、夫はそういうこともやってほしいんでしょう。夏には『網戸、汚れてるなあ』なんて言ってましたから。そういう不満が募って、あの発言になったんだと思うけど、本来、自分だって完璧にやっていないことを産休に入ったとたん、私に要求してくるのがおかしいと思うんですよ」

よほどたまったものがあるのだろう、リカさんはまくしたてる。出産しようが子育て中だろうが、収入ベースで「平等」を要求してくる夫のありようは、確かに思いやりがなさすぎる。だが、それだけ出産のリスクを知らないとも言える。

「一応、自治体主催の親になるための講座なんかも受けたんですけどね。聞いてなかったのか、元気そうに見えている私は出産で大変じゃなかったと思っているのか……。いずれにしても今後、夫は全面的には信頼できない。今はそう思っています」

夫婦の亀裂はこういうことの積み重ねで深まるのかもしれない。心なしかリカさんは寂しそうに見えた。
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