昨年12月に発表された、『令和8年度(2026年度)税制改正大綱』。連日ニュースをにぎわせた「年収の壁」が178万円に引き上げられるなど、家計に直結する変更が注目を集めています。


この『大綱』は通常国会での審議を経て法案となり、正式なルールとなります。まだ確定前の段階ではありますが、改正全体を読み解くと、実は国が特に手厚くしようとしている層が浮かび上がってきます。

今回は、経済ジャーナリストの酒井富士子さんに、注目ポイントを教えてもらいました。

■ポイントは「子育て世帯」と「中間層」
今回の税制改正をひとことでいえば、ずばり「子育て世帯に手厚い改正」です。

特に年収400万円から600万円台の、いわばボリュームゾーンである「中所得層」にターゲットが絞られているといえます。

ニュースでは「178万円の壁」が話題ですが、実際に減税の大きな恩恵を受けるのは、年収475万~665万円あたりの中間所得層です。

話題となっている「178万円」という数字は、あくまで所得税がかからない枠の引き上げを指しており、実質的な減税効果を最も得られる「主役」は、中間所得層というわけです。

■自立して稼ぐ現役世代への期待
さらに注目したいのは、19歳以下の子どもがいる世帯への住宅ローン控除の優遇や、NISAの未成年枠の拡充です。

これらはバラバラの施策に見えますが、全て「現役世代、特に子育て世帯を支援する」という一点でつながっています。

例えば、夫1人の年収が800万円で、妻がパート収入を100万円に抑える世帯よりも、夫婦がそれぞれ年収500万円前後で働く共働き世帯のほうが、おのおのが控除枠を最大限に活用できるため、世帯全体での恩恵が大きくなる設計になっています。

今回の改正の背景には、高市政権の経済政策が掲げた「頑張る人が報われる」という姿勢が色濃く反映されているといえるでしょう。

一方で、今回の改正で「恩恵が少ない」と感じる層もはっきりしています。


年収200万円以下の層が多い年金生活のシニア世代や、年収800万円を超える高所得層にとっては、メリットは比較的薄いといわざるを得ません。

私たち一人ひとりが「自分がどの層にいて、どの制度を活用すべきか」を主体的に判断するリテラシーが、これまで以上に問われています。

文:酒井 富士子(経済ジャーナリスト)
「日経ウーマン」「日経マネー」副編集長歴任後、リクルートに転職し、定年あるじゃん、あるじゃん投資BOOK等の立ち上げ・編集に関わる。2006年にお金専門の制作プロダクション「回遊舎」を創業。「ポイ活」の専門家としても情報発信を行う。
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