“大人世代”にはなかなか分かりづらいが、若い世代はSNSを「人との距離感」という観点で使い分けている。いきなり「LINE交換しませんか」と言ったら失礼にあたることもあるし、そもそもLINE交換していい相手かどうか、まだ見極めているところなのにと思うこともあるという。


■ママ友に「LINE交換しよう」と言ったら……
住んでいるマンションに、新たに一家が越してきた。その家の子が、カズエさん(45歳)の第三子と年齢は違うが同じ保育園だったため、あいさつをかわすようになったという。

「ユミさんという彼女は今年27歳、ギリギリZ世代ですと言っていました。お子さんは生まれて8カ月くらい。たまたま保育園に入れたので、そのタイミングで職場復帰したそうです。うちは16歳、11歳と6歳の子がいます。第三子の通う保育園に、彼女の子が入園してきたので、顔を合わせるようになりました」

とはいえ、二人とも仕事をしているため、なかなかゆっくり話す機会もなかった。ただ、あるときユミさんから、遅くまでやっているスーパーとか評判のいい小児科や歯科などの情報を尋ねられたことがあり、その後は顔を合わせると少しだけ立ち話をするようになった。

「いろいろ情報を送るからLINE交換しませんかと言ったら、ユミさん、一瞬、ギクッとした感じになって『あ、インスタやってますから』って。私はインスタグラムをやってないので、じゃあ、携帯番号交換してショートメールのやりとりでもいいけどと言ったら、さらに曖昧な笑顔のまま、『ちょっと急ぐので』と言われてしまいました」

■自分だけが時代に取り残されている?
帰宅して高校生の娘にその話をしたら、「いきなりLINE交換なんて失礼だよ」と言われた。

まずはインスタで様子を見る、その後、インスタのDM機能を使ってメッセージのやりとりをする、親しくなれそうだったら、あるいは親しくなったらLINE交換をするのが「普通」だと娘は言った。

「しかも電話番号聞くなんて、と娘は絶句。
それほどいけないことをしたという認識が私にはありませんでした。メッセージを伝えるなら、どれもたいして変わらないじゃないですか。

すると娘は『ダメだ、お母さん、全然分かってない』と。聞いていた夫まで、『LINEは距離感問われるよなあ』と知ったかぶりみたいに言い始めて。私だけが時代に取り残されたことになってしまいました」

そもそも悪用しないのは互いに分かりきっているのだから、伝える手段なんてどれでもいいじゃないとカズエさんが言うと、娘と夫は顔を見合わせていた。

■それでもやっぱり分からない
LINEはスタンプが充実、そのスタンプと短い言葉のやりとりで心情を深く伝えられると娘は言うが、「人間をつないでいるのは言葉そのもの。しかも情報がほしいなら、短い言葉のやりとりだけではすまないこともある。スタンプに頼るコミュニケーションなんて言語道断」とカズエさんはバッサリ斬った。

それもまた、娘と夫が顔を見合わせる事態となった。

「とりあえずLINE交換しようなんて言ってごめんねと言っておいた方がいいと娘が言うので、『距離感が分からなくてごめんなさいねー、オバサンだから許してね』と言えばいいか娘に聞いたら、『そういう自己卑下、キモい』と言われました」

もう、オバサン世代には何をもってコミュニケーションと言えるのかさえ分からなくなっているとカズエさんは困ったように言った。

「仕方がないから、ユミさんに会ったとき、『もう、全部白状しちゃうわね』と言って、娘に言われたことを言いました。ユミさん、笑ってましたね。
『確かに、そうやって距離感をはかるところがあります、私たち』と素直に言い、LINE交換してくれました。

しょっちゅうやりとりをするわけじゃないから、Xやフェイスブックのメッセージ機能でもかまわないんだけどと言ったら、『やっぱり一番開くのはLINEなので』って」

分からなくてごめんねという気持ちと、めんどくさいという気持ちがないまぜになったとカズエさんは苦笑した。

■顔を見て話した方がいい
「LINEの家族グループがあるんですが、私は必要最低限しか書かない。だって子どもたちはどうせ家に帰ってくるのだから、顔を見て話した方がいいと思って。ただいま、と帰ってきたときの顔で、母は今日はどうだったのかなと判断するわけです。

言葉やスタンプじゃ、子どもの気持ちははかりようがない。夫はわりとこまめに子どもたちとLINEでやりとりしていますが、それは夫の方がどうしても子どもと接する時間が短いからだと私は思っていました」

ただ、娘に聞くと、「LINEだと必要以上に踏みこまれずにすむから、お父さんとのやりとりはLINEのほうが気楽。お母さんは顔を見て詰めてくるから、時々うざい」と言われたそう。

「いいです、うざい母親でけっこう、うざいの上等と言ってやりました。娘は爆笑していましたけどね。それが私の子どもたちとの距離感なんだからと宣言しましたよ」

ただ、他人とのやりとりには少し気をつけようと、カズエさんはその点でのみ娘に感謝したという。
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