先日、X(旧Twitter)で新幹線の電源についての投稿があった。車両によっては、席それぞれに電源がついていることもあるし、窓側に電源が1つだけのこともある。


投稿主は後者の車両に乗った。通路側の指定席で、奥に誰もいなかったため、窓側の電源からコードをつないだ。停車駅で窓側に人が乗ってきて座り、いきなり電源を抜かれたという。

■電源使用は窓側に座る人の「権利」?
「一言何かあってもいいのではないか」というのが投稿主の言い分だと思うが、これについて際立ったコメントが、「通路側の指定席なのに窓の電源を使う方が常識外れ」というものだった。

投稿主は、数口ある電源タップを所持しており、窓側の人が使うのであればそれを出す予定だったという。

もちろん、投稿主が先に声をかければよかったのかもしれない。だが乗ってきて「自分に権利のある電源」が他者に使われていたら、それは勝手に抜いても仕方がないこととする風潮に、どこか薄ら寒い思いがする。

もちろん、足元にコードが這っていれば心地いいものではないだろう。だが、電源が窓側の人の「権利」であるかどうかは分からない。本来、その列の座席に座った人が譲り合って使った方がみんなが心地いいはずだ。

「席それぞれに電源がある車両も存在するのだから、そもそも列車の種類を調べずに新幹線の席をとった投稿主が悪い」「モバイルバッテリーくらい用意しておけ」という意見もあった。

もちろん、おっしゃるとおりなのだが、人は新幹線のチケットをとるとき、そこまで調べるべきなのだろうか。
モバイルバッテリーの容量を減らしたくないから、電源からとりたいと思うのは間違いなのだろうか。世知辛さもここまできたかという話題だった。

■一声かけて
「まったく同じような経験をしたことがあります」

そう言うのはマナさん(38歳)だ。2泊の出張で仕事をした帰りの新幹線でのことだった。

仕事用の携帯にはいつも注意を払っているから、バッテリーが減りすぎることはないのだが、私用の携帯はうっかりして電源がほぼなくなっている状態だった。しかもモバイルバッテリーも充電を忘れていた。

「午後、病院から電話が入っていたのに気付きました。実は母親が大病をして入院中だったんです。手術も終えていたし、急を要する状態ではなかったはずだけど、何があるか分からない。気づいたのは夕方の新幹線内。折り返ししようと思ったけど話している最中に切れたらまずい。

なんとか容量を確保したいと思ったけど、通路側に座った私の座席には電源がない。
窓側についていましたが、それは窓側の人が使っている。困ったなと思いましたが、少しでも容量を確保したかったので、『申し訳ないんですが』と話しかけました」

マナさんも電源タップは所持していたが、それはキャリーバッグの中だ。出すには少し時間がかかる。窓側の人に状況を説明した。電源タップを出すので、一緒に使わせてもらえないか、と。少しこわもての中年男性だったが、怯んではいられなかった。

■快く電源をつないでくれた男性
「状況を聞いたその男性、『すぐにでも使ってください』と私のコードを電源につないでくれました。自分のを抜いてですよ。電源タップ出しますと言ったら、『大丈夫、私は急いでいるわけではないので』と言ってくれて」

少し容量がたまったところで、マナさんはデッキへ出て電話をかけた。幸い、母親の容態が安定、明日には集中治療室から一般病棟に戻れるという知らせだった。

「ほっとして席に戻り、男性にその旨を伝えました。『よかったですね。
家族に病人がいると心配ですよね』とまで言ってくれて。『それでも仕事をしなければいけないしね。私にも似たようなことがありましたよ』と。

ずっと話を続けられたら困るなと思っていたら、その後はその人も仕事を始めて。すごくありがたかったし、『年配の男性にしつこくされたら嫌だな』と思った自分を反省しました」

■断られることも
一方で、「電源、一緒に使わせてもらってもいいですか」と聞いたとき、断られたことがあるというのがヨウコさん(40歳)だ。

「新幹線を降りたあと、けっこうスケジュールがタイトだったからモバイルバッテリーの充電をしておきたかったんです。何口か使える電源タップを見せながら頼んだけど『そっち電源がないのを知っててこの新幹線にしたんですよね』と切り返された。

いや、知らなかったんでと言いましたが無視されました。使うな、ということなんだと思って諦めましたけど、本当に窓側の人にだけ権利があるのかなあと不思議でしたね」

もう少しだけ、人の心に余裕があったら、あるいは相手を慮る気持ちがあったら、そうむげには断れないだろう。足元にコードがあったとしても、それほど気にすることだろうか。

自分が使いたいように、通路側の人も電源を使いたい。気持ちは同じ。
「一緒に使いましょう」という結果にならないのが残念でならない。ヨウコさんはそんな思いを吐露しながら、「なんだかね、嫌な世の中ですね」とため息をついた。
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