高齢化が進む日本において「介護」は大きな社会テーマの1つ。そこには介護離職、きょうだい間のトラブル、相続などさまざまな問題が横たわっているようです。


例えば、介護に関する相談の中でも兄弟姉妹の仲が悪い、なかなか話が合わないといった内容はとても多いです。きょうだいで介護の方針が合わないケースについてどのように対応すべきか、実際に寄せられた相談内容とともに介護アドバイザーの筆者が解説します。

■口先だけで何もしない弟と介護の方針が合わない
「お母さんがかわいそうと言うくせに何もしない弟と、介護の方針が合わないです」

今回、介護の悩みを打ち明けてくれたのはサキコさん(仮名/50代女性)です。

「自分では何も介護をする気のない弟が、『母さんがかわいそうだろ』と言って、母の希望ばかり聞こうとします。『姉さんが全部頑張ってくれたらいいじゃないか』と介護を押し付けようとしてくるのです」

一人暮らしの母の認知症が進んできたため、サキコさんは施設への入居を考えていました。するとこれまで一切介護を手伝ってこなかった弟が、「母さんを施設に入れるなんてかわいそう」と言って断固反対。入居費用に充てるために実家の売却を考えている旨を伝えると、怒鳴り合いになってしまったそう。しかし弟自身は今後も介護に関わる気はないようです。

■一番タチが悪い「介護の敵」
筆者は、「お金を出さない」「時間を割かない」家族の意見は丸ごと無視していいのではないかと考えます。過激に感じるかもしれませんが、その理由を解説していきましょう。

最もタチが悪い「介護の敵」は、「お金は出さない」「時間は割かない」「体は動かさない」、でも「口だけはいっぱい出してくる」人たちです。ただ足を引っ張るだけの存在なので、できる限り無視をした方がいいと筆者は考えています。


多くの場合、親孝行をしなかった子どもは、母親の介護が始まるととても動揺します。特に男性にその傾向があるのですが、急に「親の希望を全部聞かなければいけない」スイッチが入りがちです。頑張って自分が背負い込もうとする男性もいますが、周りの人に押し付けて、「母さんの希望だけは聞いてあげて。僕は母さんの味方だから」というフリをしている人も少なくありません。

正直、こうした人との対話は時間の無駄のように感じます。もちろん話し合って分かり合えたという例外もあるでしょうが、ほとんどの場合、話せば話すほど腹が立ち、つらくなるでしょう。

こうした場合、「介護についてあなたが責任を取る気がないのなら、私がキーパーソンになる。だから黙っていなさい」、これくらい強気で伝えてちょうどいいのではないでしょうか。

■相続が発生する場合にこじれる可能性も
なお、サキコさんが強気に出ても、弟は「嫌だ」と反論し、邪魔をするために周りの親戚や近所の人を味方につけ、「うちの姉はひどい人だ」と言ってくる可能性もあります。筆者に届く介護のお悩み相談の中でも、「自分だけいい子のフリをして、面倒くさいことは全部周りに押し付けようとする身内がいる」というのはとても多いです。

こうした弟さんや身内は、いざお母さんが亡くなって相続が発生した時に、「自分は当然、分け前をもらう権利がある」と強く主張してきます。何1つ介護をしなかったにもかかわらず、同じだけ相続しようとする。
もちろんこの主張は法律的な権利として正しいのですが、正直なところ釈然としないですよね。

時間もお金も、お母さんのためにサキコさんは多くを投じてきたはずです。それならば、相続が発生した時ぐらい報われたいと思うのは何ら間違っていません。できれば弁護士などに相談した上で、「あなたがそれだけ介護をやりたくないのなら、相続を放棄しなさい。権利を失いなさい」と弟に伝え、ある程度しっかりした約束を将来に残しておきたいところ。

相続についての話し合いは難しくデリケートですが、早めにしておいた方がいいです。当然、「姉さんは金が目当てなのか」などとひどい言われ方をする可能性もあります。しかし本当に最後までやり遂げた時に、きょうだいであまりにも役割分担の差があったのに、お金だけ持って行かれた場合、もっとしこりが大きくなってしまうでしょう。後々、きょうだい間にわだかまりを残し続けないためにも、きちんと相続問題をクリアしておいた方がいいと筆者は考えます。

■無責任な「かわいそう」には耳を貸さない
無責任な「かわいそう」という言葉は、介護においては「呪い」です。親の希望はできるだけ聞きたいという思いは、当然あるでしょう。しかし、「できないことをやろうとする」、あるいは「やる気がないのに、やるフリだけする」のは違います。


自分で責任が取れないのに「かわいそう、かわいそう」と言って妨害するというのは、いかがなものかと思います。自分にできること・できないことを判断した上で、かわいそうかどうかを考え、発言してほしいものです。

大切なのは、「親の希望」をすべて守ることではなく、自分自身の人生、子ども側の人生も含めて守ることではないでしょうか。親は長い時間をかけて、子どもを大事に育ててきました。親のために自分の人生を棒に振るのは、何十年にもわたる親の気持ちを踏みにじる行為ではないでしょうか。

▼横井 孝治プロフィール両親の介護をする中で得た有益な介護情報を自ら発信・共有するため、2006年に株式会社コミュニケーターを設立。翌年には介護情報サイト「親ケア.com」をオープン。介護のスペシャリストとして執筆、講演活動多数。また、広告代理店や大手家電メーカーなどでの経験を生かし、販促プロデュース事業も行う。All About 介護・販促プロモーションガイド。 
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