■安心して老後が過ごせる資金の使い方、貯め方とは?
皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。
今回のご相談者は55歳、正社員で働く女性の方です。
ファイナンシャル・プランナーの井戸美枝さんがアドバイスします。
▼相談者みきこさん(仮名)
女性/会社員/55歳
関東/持ち家・一戸建て
▼家族構成息子(大学生・22歳)、(※)他の2人の子どもは就職、別居
▼相談内容数年前に夫が突然亡くなり、当時大学生2人、高校生1人がおり必死でした。つらさのあまり、自暴自棄になり散財したこともありましたが、私も給料は少ないですが正社員として働いており、夫の年金もありなんとかやってきました。週6の激務でしたが、春に息子が卒業するので、今までの働き方を見つめ直し、退職を決めました。その後、週4日のパート(おそらく手取り10万円程度、社会保険などなし)に変更しようと思っています。
夫の生命保険と退職金を分割で受け取っており、あと残り4500万円ほど受け取る予定です。夫の年金もありますが、パート収入で、国民年金、国民健康保険を払いながら、やっていけるでしょうか? 子どもたちも結婚などがあるときは、それぞれお祝い100万円程度はしたいと考えています。私が一生困らないで暮らせていけるか毎日不安でたまりません。
夫の遺してくれた資金を使うことに後ろめたさを感じ、収入が減れば慎ましい生活をする必要があると分かってはいます。これまで、ボーナスもほぼ使わず、貯蓄に回してきました。ただ、一方で、もう少し楽になりたいという思いもあります。今回、応募するにあたり、家計を見てみると、お金の心配をしながら、散財していることにも気付きました。
最近は推しの楽しさに目覚め、遠征ライブに年間10万円ほど使っています。ぜいたくを言うなら、今までずっと行けなかった海外1人旅なども何回かしたいと思っています。年間どのくらいお金を使うことができるのか? 厳しいアドバイス、どうぞよろしくお願いします。
▼家計収支データ「みきこ」さんの家計収支データは図表のとおりです。
▼家計収支データ補足(1)息子について
卒業後、就職するがしばらくは同居の予定。その場合は、生活費として月3万円を入れる予定とのこと。卒業後の生活コストとして「教育費」がなくなり、「通信費」が1万円に減る予定。
(2)加入保険の内訳
・医療保険(終身保障終身払い、入院1万円)=毎月の保険料4200円
・がん保険(終身保障終身払い)=毎月の保険料3300円
(※がん保険が必要か悩んでいる)
・養老保険(3年後に満期、満期金200万円)=毎月の保険料1万1500円
(3)公的年金について
年額109万1500円(直近の「ねんきん定期便」での見込み額)
(4)夫の死亡退職金と死亡保険金について
「死亡退職金」(年金形式で年2回に分けて受け取る)
・6年前から15年間/年間274万7500円
・9年後から5年間/年間84万6600円
「死亡保険金」(年金形式で年4回に分けて受け取る)
・6年前から15年間/年間209万9200円
(5)自動車の買い替え
今後あと1回、5年後を予定。
(6)自宅の修繕・リフォームについて
築23年。大手ハウスメーカーで見積もりを取ったら、屋根葺き工事、防水工事、シロアリ、シーリング工事、外部塗装工事、諸経費などで880万円と言われました。そこまで必要か疑問と考えている。自身は上限500万円と考えている。他に風呂、キッチン、トイレ2つの修繕が必要。予算は300万円程度。あと、墓もまだないため、2年以内と考えている。
(7)「趣味娯楽費4万5000円」の内訳
旅行積み立て2万5000円(旅行以外に使うこともある)、ピアノレッスン5000円、エステ1万5000円(親戚がエステティシャンで売り上げに貢献してあげたいため)。
(8)退職後の働き方について
1カ月休んだのち、パートで働く。週4日、1日5~7時間勤務を予定。何歳まで働くかは決めていないが、基本的には老後資金の心配がなくなるまで。
(9)相続について
親は近所に住む母親が1人暮らし。兄弟姉妹は1人。実家は築30年、リフォーム済み。売却すれば2000万円程度。また、母は死亡1000万円の生命保険に加入。夫の両親はともに他界。
▼FP井戸美枝からの3つのアドバイスアドバイス1:準備できる老後資金は6500万円
アドバイス2:資金は自分のために自分らしく使えばいい
アドバイス3:収入を得るより税金を抑えた生活を目指す
■アドバイス1:準備できる老後資金は6500万円
「今後どのくらいお金を使えるのか」というご相談ですので、まずは現状のまま支出が継続された場合について、試算してみます。
試算の設定ですが、プランどおりに退職後、月10万円程度のパートを始めるとします。働く期間は一応、年金の受給開始となる65歳になるまで。また、計算をしやすくするため、退職後にちょうど56歳となり、加えて、そのタイミングで息子さんは大学を卒業し、就職されたとします。
56歳からの年収は120万円。ただし、社保などなしとのことですから、少なくとも60歳までの4年間は、実質の手取りは年80万~90万円。
対して生活費は、教育費の全額と一部通信費が減額になる以外は今と変わらないとすると、月21万4500円。年間で260万円とします。結果、年間収支は40万円のプラス。60歳以降の5年間は、国民年金保険料の支払いが終了しますが、息子さんは独立する可能性がありますので、年間収支は20万円のプラスとします。
また、その間の生活費教育費以外の支出として、自動車の買い替え、お子さまたち3人の結婚の援助と自宅リフォーム費用を想定されています。
そのうち、気になるのがリフォーム費用。予算として上限500万円とのことですが、同程度の内容でも、実施される際は物価高騰により800万円程度はかかると考えておきたところ。したがって、これら不定期支出を1350万円(自動車買い替え250万円、結婚祝い100万円×3人=300万円、リフォームなど800万円で計1350万円)としました。
結果、65歳までに、手持ちの金融資産からの取り崩しは約1100万円。これに、ご主人の死亡保険金と死亡退職金の総額を一部前倒しで加算(およそ4780万円)し、さらに養老保険の満期金を加えます。途中、家計に計上していない不定期支出を考慮しても、6500万円(退職金は考慮せず)は手元に残ることになります。
■アドバイス2:資金は自分のために自分らしく使えばいい
65歳からは便宜上、フルリタイア(働いて収入を得ない生活)になるとします。
受給される公的年金について、受給額は手取りで月22万円前後でしょうか。
対して、毎月の生活費を現在をもとに割り出すと月20万円程度となりますが、不定期支出やインフレを考慮して、年金収入で収支はプラマイゼロとします。つまり、老後資金は手を付けずとも、基本生活費(現在の趣味や旅行の費用も含む)は年金でカバーできます。
単純計算ではありますが、仮に想定した生活費以外に毎年100万円使っても、65歳から30年なら3000万円。95歳のときにまだ半分以上老後資金が残ります。55歳からでも2500万円が残りますから、老後資金は十分足りると判断できることになります。
なので、ご相談文にあります「海外旅行」もぜひ元気のうちに行ってください。かかる旅行費用は人それぞれですが、無理なく1人で楽しめる、それなりに豪華なツアーに、ご本人の言われる「数回」行ったとしても、それにより老後資金が大きく目減りすることはないと思います。
ピアノレッスンも続けてください。エステは精神的にもプラス効果があるはず。生きる上での必要経費と考えましょう。
お金があるからぜいたくをしましょうと、言いたいわけではありません。
数年前に、みきこさんのご主人が急逝された。その後、お子さん3人を抱えて、自暴自棄となった時期も乗り越え、必死で働かれた。詳しい事情は分かりませんが、精神的にも肉体的にも大変ご苦労されたことは、十分に想像できます。そして今は、ご主人が遺してくれた資金を使うことに後ろめたさがある。一方で、気が付けば想像以上に散財しているご自分に矛盾も感じる……。
でも、資金に余裕があるのだから、自分を責める必要はないと、私は思います。お気持ちは分かります。でも、過去を振り向いても仕方がないのでは。みきこさんは今後もずっと生きていきます。ならば、自分らしく生きるべきだし、だからこそ、ご自分のために資金を使う。ご主人もきっと、そういう生き方を望んでいるのではないでしょうか。
ご心配なら、自分なりに各資金にそれぞれ予算を立て、プランどおりに推移しているか、定期的に収支や保有資金をチェックしましょう。プランにズレが出ていれば、その後の支出を修正、プランの立て直しをすればいい。もちろん、想定外の支出もあるでしょうし、インフレリスクも否定できません。それでも、資金管理を継続していけば、決して資金で大きく困ることはないはずです。
■アドバイス3:収入を得るより税金を抑えた生活を目指す
最後に、補足的な点をいくつか。まず、公的年金について。
公的年金は原則「1人につき1つの年金」を受け取りますが、特例的に65歳以降は、自身の老齢厚生年金と遺族厚生年金のどちらも受け取ることができます。ただし、これには条件があります。老齢厚生年金額が遺族厚生年金額より小さい場合です。おそらく、みきこさんはこのケースに該当すると思います。
その場合、受給する年金は「老齢基礎年金+老齢厚生年金+遺族厚生年金」となります。ただし、遺族年金は満額は受け取れず、老齢厚生年金との差額分だけを受け取るルールです。つまり、受給額としては「老齢基礎年金+遺族厚生年金」と同額となります。しかし、老齢年金と異なり、遺族年金は全額、非課税として扱われますので、受け取る老齢厚生年金額が低いほど、実質の手取り額は高くなるわけです。
気を付けるべきは、今後の働き方です。現時点では、社会保険などに加入しないパート勤務を想定されていますが、もしも、新たに厚生年金に加入すると、老齢厚生年金額が増えるため、よほど高い収入を得ない限り、手取りの年金受給額が減ってしまいます。
みきこさんは、「老後資金の心配がなくなるまで働きたい」とのことですが、私はむしろ、収入を得るより、税金を抑える働き方、生活を優先すべきと考えます。そのためには、フルリタイアの時期をもっと前倒しされてもいい。それでも、老後資金は十分用意できるからです。
また、税金を抑える生活の工夫という点では、現在積み立てられているiDeCoは、今後も続けてほしいと思います。ご承知のように、掛金をパート収入から拠出すれば、全額所得控除になりますし、運用益は非課税、老齢給付金(iDeCoによる積立運用資金)を受け取る際も一定額までは控除対象となります。
保険については、がん保険と医療保険に加入されていて、どちらも終身保障終身払いですが、みきこさんも悩んでいるように、がん保険は不要だと思います。医療保険だけにされていいでしょう。
■相談者「みきこ」さんから寄せられた感想
このたびは、私の長年のお金悩み、そして気持ちに寄り添った温かいアドバイスをいただき、心から感謝を申し上げます。いただいたご回答を何度も何度も読み返しました。私の状況だけでなく気持ちまで丁寧にくみ取ってくださっていることが伝わり、涙があふれました。
これからは必要以上に不安を抱え込まず、夫が遺してくれた大切なお金を自分の人生のために使っていきたいと思います。働き方についても改めて考え、教えていただいた税金対策を意識しながら健康を第一に生活を楽しんでまいります。井戸先生、本当にありがとうございました。益々のご活躍を心からお祈りいたします。
教えてくれたのは……井戸美枝さん
CFP®、社会保険労務士。講演や執筆、テレビ、ラジオ出演などを通じ、生活に身近な経済問題をはじめ、年金・社会保障問題を専門とする。社会保障審議会 企業年金・個人年金部会委員歴任。国民年金基金連合会理事。「難しいことでもわかりやすく」をモットーに数々の雑誌や新聞に連載を持つ。『知らないと増えない、もらえない妻のお金新ルール』(講談社)『ゼロ活 お金を使い切り、豊かに生きる!』(扶桑社)『私の老後のお金大全』(日経BP社)など累計刊行96万部。
取材・文/清水京武
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