「今年の担任の先生はどんな人かな?」「うちの子、先生とうまくやっていけるかな?」。4月の新学期、保護者の間では期待と同時に、SNSや口コミから流れてくる「先生の評判」に一喜一憂する光景が広がります。


しかし、もし耳にした情報がネガティブなものだったら? その時、つい口にしてしまった「ハズレ」という一言が、子どもの1年間の学校生活に影を落とす“毒”になってしまうかもしれません。

学校と家庭は、子どもという車を走らせる「両輪」のようなもの。元小学校教師で、現在は大学で教員養成に携わる鈴木邦明氏の著書『保護者が知っておきたい 先生・学校の協力を引き出す「上手な伝え方」のコツ』より、新学期のスタートを台無しにしないための「保護者の心得」を一部抜粋・編集して紹介します。

■SNSで広まる「担任ハズレ」のうわさ
現在、多くの学校では学級担任は1年間で変わります。筆者が大学を卒業し、小学校の先生になった頃は、複数年(2年間、3年間)同じクラスを担当することも一般的でしたが、今は1年毎に担任が変わる形が主流になっています。

そういった背景もあり、毎年4月には新しい学級担任の発表があります。その時に保護者が注意すべきことが、「今年の担任はハズレ」といった発言をしないということです。

現代はSNSなどにより、学校や先生に関するさまざまな情報を入手することができます。昔も「井戸端会議」のような場で情報交換は行われていましたが、その拡散力はSNSよりも小さく、スピードも遅いものでした。

その点、現代はデジタル機器やネットにより、多くの情報があっという間に広がります。それはよい面もありますが、状況によっては悪い影響を及ぼすこともあります。

特に、自分の子どもの学級担任が誰になるのかは、多くの保護者にとって大きな関心事です。
そのため、新しい担任が発表される前の3月中から、「A先生はよかった、B先生はよくなかった」といった情報が保護者の間で共有されることもあります。

■「ハズレ」の評判はあてにならない? 学級は“生もの”だから
繰り返しになりますが、新しい担任が発表になった後、保護者が新しい担任に対して「今年の担任はハズレ」という発言をすることは避けましょう。特に子どもの前でそういった発言をすることは、よいことではありません。

担任と子どもの関係には、相性のようなものがあります。これは一人ひとりの子どもに対しても、集団としての子どもたちに対しても言えることです。

たとえ前年度に学級経営がうまくいかなかった先生(SNSなどで「ハズレ」と言われる先生)だったとしても、今年度は自分が受け持つ子どもたちとの相性がよいかもしれません。筆者の経験では、前年度に学級経営がうまくいかなかった先生が、次年度には見違えるほど見事に学級をまとめていくというケースはよくありました。

また、それなりに経験年数がある先生や、前年度にうまく学級経営ができていた先生であっても、次の年にはうまくいかないこともあります。筆者自身の経験でも、色々な配慮をしながら取り組んだとしても、数年に一度は何となくうまくいかない1年間になってしまう、という感覚がありました。

筆者のようにそれなりに経験年数を経て、学級経営などの研究をしている立場であっても、うまくいかないことはあります。

筆者は、学級のあり様は「生もの」だと感じています。1人の先生という個性のある大人と、数十人のそれぞれ個性を持った子どもたちが関わり合いながら、1つの集団を作り上げていくものだからです。


■保護者の不用意な一言が、大事な「黄金の3日間」を台無しにする
新年度のスタートの時点で、保護者が新しい担任のことを「ハズレ」と評価してしまうと、子どももその評価を受け入れてしまいます。

次の日に学校へ行った際、周りの子に対して「今年の〇〇先生はハズレだって、うちの親が言っていたよ」と伝えてしまうこともあるでしょう。

そういったネガティブな情報が共有されてしまうと、担任が何かを伝えようとしても、思ったようには伝わらなくなってしまいます。4月に新しい学級がスタートしたとき、担任も子どもも、色々なものをリセットして「新年度は頑張っていこう」という気持ちになっています。

前年度にうまく学級経営ができなかったと感じている先生も、さまざまな反省を踏まえ、「今年こそは……」と新しい年度に向けて色々と工夫をしています。しかし、保護者の不用意な一言によって、その先生が伝えようとしていることが届かなくなってしまう可能性が高くなるのです。

これは子どもも同様です。前年度に学校でうまくいかなかった子も、新しい学年になり、集団(先生や友達)が変わると、「頑張っていこう」と思うことが多いです。たとえ前年度に学級崩壊をしていたような子どもであっても、新年度になり集団が新しくなると、はじめの時点では子どもたちは先生の話を聞こうとする態度を示すものです。

子どもにとってみれば、「改めて頑張ろう」という気持ちや「新しい先生はどんな人だろう」という不安など、さまざまな思いがあります。理由はどうであれ、子どもが話を聞いているうちに、学級経営の上手な先生は子どもとの信頼関係を築き、よい集団を作るスタートを切っていきます。

先生の間では、この最初の期間を「黄金の3日間」と呼び、1年間の学級経営に影響を与える時期として非常に重視しています。
保護者の不用意な「ハズレ」発言は、この大事な日々を台無しにしてしまう可能性があるものなのです。

■「愚痴」より「メモ」。担任を味方にする賢い伝え方
新しいクラスが始まったら、どのような状況であっても、しばらくは様子を見ることがよいと筆者は考えています。先ほども書いたように、どんな先生も、どんな子どもも、新しい年度には「心機一転頑張っていこう」と思っていることが多いものだからです。

ですから、まずはその意気込みがどのように形になっていくのか、しばらくは見守ってください。もし保護者として気になることがあれば、その場ですぐに反応するのではなく、まずはメモなどにとどめておきます。

そして、そうした懸念点は、子どもの前で愚痴のように話すのではなく、担任と直接会った場で伝えていくことが望ましいでしょう。タイミングとしては、4月の中頃から下旬に行われる「第1回保護者会・懇談会」が最適です。

クラス全体に知ってもらいたい内容であれば、会の中の質疑応答などで話題を提供してみるのがよいでしょう。もし個人的な相談であれば、会が終わってから個別に担任へ声をかけ、直接お話しすることをおすすめします。

この記事の執筆者:鈴木 邦明 プロフィール
神奈川県、埼玉県の公立小学校に22年勤めた後、短大、大学での教員養成、保育者養成に移り、現在に至る。現在は、大学での講義を中心に、保護者向けに子育て・教育、教員向けに授業方法・学級経営などのテーマで執筆、講演などに幅広く活躍中。

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