それが、産業事故の経験則を応用した「クレームのピラミッドモデル」です。大きなクレームが1件発生する裏には、いくつかの「相談」があり、さらにその下には、たくさんの「あれ?」という小さな「質問(疑問)」が隠れています。
大切なのは、マグマがたまって爆発(クレーム)する前に、ピラミッドの土台である「質問」の段階で伝えてしまうこと。早く伝えるほど、解決は驚くほどスムーズになります。
元小学校教師・鈴木邦明氏の著書『保護者が知っておきたい 先生・学校の協力を引き出す「上手な伝え方」のコツ』より一部抜粋・編集し、保護者が最も聞きにくいけれど大切な、通知表や学習などについての「質問」の作法を、具体的な事例とともに紹介します。
■不満が爆発する前に、早めの質問・相談を
具体的な事例を紹介しながら、保護者が学校(先生)へ上手に思いを伝える方法についてご紹介します。
冒頭で紹介したように、クレームのようなものは急に発生するわけではありません。必ず前段階があり、それが解決できないことによって、結果として「クレーム」という少し激しい関わりになってしまうのです。
大切なことは、その前段階である「質問」や「相談」の段階で解決ができるようにすることです。早ければ早いほど、まだ問題は大きくないはずです。先生と信頼関係を築き、気軽にいろいろな話ができるような関係が望ましいと筆者は考えています。
「質問」の段階では、何か気になっていることを聞いてみるだけで状況が改善していくこともあります。
指摘したい話題について触れた後、最後にこう付け加えてみてください。
「状況を改善するために、家庭でできることは何かありますか?」
相手を批判したり非難したりするのではなく、よりよくしていくために「自分の問題」としても捉えているというスタンスを伝える。そうすることで、先生とも良好なコミュニケーションが取れるようになるはずです。
■子どもが授業についていけてないと感じたら……
【先生への質問例】
「学習についていくことができていないようなのですが、先生からはどのように見えていますか? 何か家庭でできることがあれば教えてください」
学校において最も多くの時間を費やすのが学習ですから、その時間をうまく過ごすことができているのか、そうでないのかは重要なことです。
保護者から見て勉強のつまずきを感じるのは、テストなどが返却されたときが多いと思います。学習内容についていけていないことに気づいたら、宿題に取り組んでいる様子や返却されてくる小テストなどを、少し丁寧に見ていくとよいです。気になる部分を意識して見ていると、子どものつまずいている部分やその解決策が分かることがあります。
それをしたうえで、先生に聞いてみることはとてもよいことです。先生はたくさんの子どもを見ています。その子の状態がどういったものなのかということを、少し広い視野でも見ること、考えることができます。保護者はどうしてもそのような視点が狭くなりがちです。
ただし、こうした問い合わせをする際には、先生への配慮が不可欠です。「教え方が悪いのでは……」と批判するようなニュアンスにならないよう、細心の注意を払いましょう。
「他の子どもも見ている先生からはどのように見えているのか」、また「家庭で取り組めることがあれば教えてほしい」という伝え方がよいでしょう。こういった問い合わせがあれば、先生もそれまで以上にその子どもの学習に気を配るようになります。
■「通知表のモヤモヤ」は我慢しなくていい?
【先生への質問例】
「通知表に書かれている事柄に関して、お聞きしたいことがあるのですが……」
通知表に書かれている内容について疑問を感じたら、積極的に聞いていくべきだと思います。中学生や高校生の場合、それが次の進路へも影響を与えます。
筆者がなぜ積極的に聞くべきだと思っているのかというと、ミスが発生する可能性もあるからです。通知表は重要な書類なので、何度もチェックをします。筆者が勤めていた小学校では、学年の中で確認をしてから管理職に提出し、その後、管理職が誤字脱字なども含めてチェックをしていました。そういった過程を経て、渡されているものです。
それでもミスが起こり得るのは、パソコンなどを使っていることと関連しています。表計算ソフトなどを使って処理をするのですが、何かの事情で1つズレてしまうということは起こり得ます。
筆者が小学校の先生になった頃は、評価などはゴム印で打っていましたし、コメントの部分も手書きで書いていました。そういったアナログな仕事の場合、間違いを発見しやすいです。しかし、今の状況は、出来上がりの見た目がきちんとしていることもあり、逆に間違いを見つけにくいのが難点です。
先ほど、何重もの確認をしていると書きましたが、もし数値をまとめた一覧表自体が間違えてしまっていたら、チェックもあまり意味のないものとなってしまいます。
これまで書いてきたように、通知表に書かれていることは、時には間違えていることがあります。そういったことを考えると、何か疑問を持った際には聞いてみることがよいでしょう。しっかりとした根拠を持って説明してくれることがほとんどですから。
この記事の執筆者:鈴木 邦明 プロフィール
神奈川県、埼玉県の公立小学校に22年勤めた後、短大、大学での教員養成、保育者養成に移り、現在に至る。現在は、大学での講義を中心に、保護者向けに子育て・教育、教員向けに授業方法・学級経営などのテーマで執筆、講演などに幅広く活躍中。









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