定年を迎え、自由な時間はたっぷりあるはずなのに、口をついて出るのは「何かいいことないかな」というため息……。この言葉自体は決して悪いものではありませんが、実は「老後貧乏」へと引きずり込む、危険なサインとなることも。


今回は、この言葉に潜んでいる、心やお金の面で余裕を失う理由と、そこから抜け出すためのヒントを整理してみましょう。

■「何かいいことないかな」の言葉の裏にある受け身の状態
「何かいいことないかな」という言葉の裏には、「誰かが楽しませてくれるはず」「状況が変われば気分も変わるはず」といった期待が、無意識のうちに含まれている場合があります。

現役時代は、仕事や役割、人との関わりが自然と用意されていました。そこでは、与えられた役割を忠実に果たしてきた方も多いでしょう。しかし、そうした環境がなくなると、「次に何をすればいいのか」を自分で決める必要が出てきます。

その切り替えがうまくいかないと、かつての習慣のまま、つい外からの役割を待つ時間が増えてしまいます。

■受け身が続くと、心や資産に起こる影響
受け身な状態が長く続くと、気付かないうちに心やお金に以下のようなよくない影響が出てくることがあります。

▼「お金のつながり」だけが孤独を深める定年後の交流は、良くも悪くも「自分次第」です。「何かいいことないかな」と待ちの姿勢でいると、寂しさに付け込まれ、誰でもいいからという誘いや、販売目的の勧誘に乗ってしまうことも。お金を介した表面的なつながりは、かえって孤独を深める結果になってしまいます。

▼「暇つぶし」の出費と、他人を羨む心ほどほどの人付き合いはよい気晴らしになりますが、それができないと、空いた時間を埋めるために「暇つぶし」にお金をかけざるを得なくなります。

また、他人の生活が充実しているように見え、「隣の芝生は青い」と他人を羨む気持ちばかりが増してしまうことも、心をすり減らす要因になります。


▼大切なお金の判断を他人任せに資産管理の場面でも、「プロがすすめたから」「みんながやっているから」と判断を委ねてしまうと危険です。人に任せ過ぎは、知らないうちに大切な資産を目減りさせてしまうことにもなるでしょう。

■受け身から抜け出すためのヒント
今の自分を急に変えることは難しいですが、日常の中で「自分の中から湧き上がる感情」を観察し、喜怒哀楽をしっかりと感じることから始めてみましょう。

そうした小さな心の動きに合わせて、以下のことをできる範囲で実行してみてはどうでしょう。

▼自分から声をかける(結果は気にしない)あいさつだけでなく、ニュースや季節の話題など、思いついたことを口にしてみましょう。もし話が弾まなくても、それは「相手が忙しかっただけ」など自分とは関係ない理由かもしれません。気にせず、気になる話題をコツコツ探し、共有する癖をつけることが大切です。

▼直感を研ぎ澄まし、日常を広げる「なんとなく面白そう」という直感を大切に、自分で動いてみましょう。散歩のルートを変える、違うスーパーへ行く。そんな日常の小さな「違い」を自分で選ぶことで、直感が研ぎ澄まされ、行動範囲が自然と広がっていきます。

▼小さな決断を積み重ねる「やることがない」とテレビやスマホを眺める時間が多くなれば、時にむなしさを感じることもあるものです。ストレッチを日課にしたり、新しい料理にトライしたり。
今日の過ごし方を自分で決める積み重ねが、主体的に考える感覚を取り戻してくれます。

「いいこと」は、待っているだけではなかなか訪れません。けれど、自分で選び、自分で動く習慣が戻ってくると、心の張りも、お金の扱い方も自然と変わっていきます。その変化が、老後の暮らしを穏やかに支える土台になるでしょう。

文:舟本 美子(ファイナンシャルプランナー)
会計事務所、保険代理店や外資系の保険会社で営業職として勤務後、FPとして独立。人と比較しない自分に合ったお金との付き合い方を発信。3匹の保護猫と暮らす。All About おひとりさまのお金・ペットのお金ガイド。
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