■日常生活に支障が出てきた
「半年前に、母は要介護2と認定されました。家の中は杖を使ったり、あちこちにすがったりしながらなんとか歩けますが、食事を自分で用意したりするのは不可能。そのため、日常生活のほぼ全てに見守りや介助が必要となっています。最近は認知能力も低下してきて、ドラマも見られない。たぶん、筋が追えないんだと思います。ニュースを見ていても、理解しているとは思えません」
レイコさん(58歳)はそう言う。もうじき90歳になる母は、つい数年前までは一人暮らしで趣味のサークルに通ったりスポーツジムに行ったりしていた。だがあるとき、家の中で転倒して腰を痛め、それ以来、怖さが先に立って外へ出られなくなった。
「母は賃貸住宅に住んでいたので、更新のときに思い切って引き取りました。うちは私が熟年離婚したばかり、子どもたちはすでに独立していたから母に来てもらう分には差し支えなかったんですが……」
3年前に同居を始めたとたん、母は何もしなくなった。リハビリをすればまた以前のように動けると言われたのだが、リハビリに通うのも一人では無理だと言い張った。
「私はフリーランスで仕事をしています。
出張を予定していてもできないこともあった。介護認定も思ったようには進まない。それでも歳月をかけて、要介護2となった。これで自分が留守のときにはヘルパーさんに来てもらって、簡単な食事の支度もしてもらえる。
「ところが母は、他人が家に来て、まして冷蔵庫などを開けられるのは嫌と言い張るんです。開けられるのは嫌といっても、母は日ごろ、冷蔵庫なんて開けないし何が入っているかもほとんど関知していない。つまりはヘルパーさんに面倒を見てもらいたくないということなんでしょう」
ケアマネさんに相談しても解決策は見いだせなかった。
■心を鬼にして
このままだと仕事ができなくなる。レイコさんにとってそれは恐怖でしかない。
以前、2泊ほどの出張に行ったときは、帰宅すると用意していった食事がほとんど減っていなかった。何がどこにあるかきちんと書いて行ったのに、冷凍庫から何か取り出した様子もない。白米と梅干し程度で食事をすませていたと想像できた。
「それで母に有無を言わさず、今回はヘルパーさんに来てもらう。食事は全部用意しておくから、ヘルパーさんには温めて出してもらうだけ。そう説明したんですが、『その日に何を食べたいかなんて、そのときにならないと分からない』と駄々をこねる。日ごろの食事は、何を食べたいか聞いても『何でもいい』と言うくせに。それも右から左に聞き流して、とにかくヘルパーさんに事細かにメモを残して出かけました」
母が涙ぐんでいるのも知っている。
「別に1カ月も2カ月も留守にするわけじゃない。たかだが1週間程度。ショートステイでもいいんですが、母はそれだけは嫌だという。だったらヘルパーさんに来てもらう方が自由な時間はあるし合理的でしょと、最後は理屈で攻めましたが、『もういいわ。好きにすればいいじゃない』とすねていました。
出掛ける数日前から急に『食べたくない』と食欲も落ちていましたが、具合が悪いようには見えなかった。一人置いて行かれたくないから、ハンストしていたんでしょうね」
結果的には、ヘルパーさんがよくしてくれて、毎日、きちんと食事をとっていたという。レイコさんはホッとすると同時に、自分ががんばりすぎるのもよくないと反省した。
「ずっと母に自分の人生を阻害されているという思いが強かった。でも介護サービスをきちんと使って自分が少しは楽をすることも考えていかないと続かない。出張してみて、仕事ではあるけど私も命の洗濯ができたような気がしています。
そのうち意思疎通ができなくなれば、次の手段を考えよう。レイコさんは今は少しだけ前向きになれたと言った。









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