■70歳まで海外移住を考えているが、資金面でいろいろ不安も……
皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回のご相談者は49歳、海外勤務の男性社員です。
来年、帰国の予定で同時に退職し、70歳まで海外移住を希望しています。そのための資金もそれなりに用意できると思う半面、今後のインフレや施設入居となった場合の資金で不安もあるとのこと。
ファイナンシャル・プランナーの井戸美枝さんがアドバイスします。
▼相談者早期退職希望男さん(仮名)
男性/会社員/49歳
海外/賃貸住宅
▼家族構成独身
▼相談内容日本企業の社員で、現在は海外勤務となっています。次の帰任(1年後を予定)時には、会社を早期退職して、東南アジアに移住して余生を過ごしたいと思っています。
今の貯金をもっと運用して、早期退職可能かを相談したいです。退職金は2400万円。もちろん住む国の物価などいろんな与件があると思いますので、いろいろ相談して、早期退職可能かを探っていきたいです。
▼家計収支データ「早期退職希望男」さんの家計収支データは図表のとおりです。
▼家計収支データ補足(1)加入している保険の保障内容
・個人年金(年金額は総額1000万円)=毎月の保険料2万円
・医療保険(終身保障・60歳払込終了)=毎月の保険料5000円
(2)公的年金について
「ねんきん定期便」では月額16万円。
(3)移住について
1年ほど日本に住んで「移住」の準備。候補国はタイやマレーシア。
(4)老後資金について不安に思う理由
相談者自身、おそらく資金的には十分足りるのではと考えているが、もう少し増やした方がより安全と思うとのこと。インフレや、帰国後に施設に入所となった場合の資金とかを考えると、不安も感じている。
(5)発生する相続
少なめに考えても、金融資産にして1000万円は受け取れると考えている。
(6)家計について
住宅費などの支出は会社負担。支出の大半は交際費。また、年に3回ほど海外旅行。1回の予算80万円ほど。年間で400万円ほど貯蓄に回していた。
▼FP井戸美枝からの3つのアドバイスアドバイス1:試算上、移住も老後もその資金も十分確保できる
アドバイス2:試算はあくまで試算であるということ
アドバイス3:不透明な今後に備えるため、海外移住は先延ばしを
■アドバイス1:試算上、移住も老後もその資金も十分確保できる
ご相談の海外移住について、ちょうど1年後に帰国、同時に退職されたと設定して、試算してみます。ただし、不確定な部分が多いため、あくまで概算と考えてください。
退職までの約1年間に上積みされる金融資産は、退職金を加算してほぼ2800万円。今ある貯蓄、投資商品を加算(利息や配当金などは考慮せず)すると約1億5000万円。これが退職時の金融資産となります。
退職時、年齢は50歳。ライフプランだと、その1年後に海外移住。
早期退職=フルリタイアを考えているでしょうから、生活費は基本的に貯蓄から捻出となります。さらに、便宜上、退職後1年間の生活費や社会保険料、個人年金保険の保険料などを合算し、計600万円を金融資産から差し引きます。
結果、約1億4400万円が海外移住時の金融資産となります。
移住は70歳になるまでとして、期間は約19年間。移住先では、「使用人も雇わず、質素に生活をする」と言われています。
どこの国、都市に行かれるかは、まだ不明とのこと。候補地およびその物価はご相談者自身、いろいろ調べられているとは思いますが、仮に生活費が月20万円とすれば、生活費以外の諸経費、不定支出も含めると、19年で4600万円ほどでしょうか。
問題は、移住期間中の社会保険料の支払い。これもご自身で調べられているとは思いますが、ここでは、住民票は移住先に移し、また、海外移住中は国民年金保険の加入義務はなくなるため、保険料は支払いしないことを選択したとします。
加えて、公的年金の受給は原則65歳のため、海外移住中も5年間受け取れます。ただし、年金をどの国の金融機関に振り込むことにするのか、また、移住先の租税条約にとって年金は課税か非課税かが異なります。
さらに、課税の場合、どの程度の額なのかが不明ですから、資金的余裕もあるため、ここでは帰国後、年金は70歳からの繰り下げ受給を選択するとします。
結果、これも便宜上、個人年金保険の受取額1000万円を加算すると、帰国する直前の金融資産は1億1000万円ほどとなります。
■アドバイス2:試算はあくまで試算であるということ
帰国後の生活費もここでは断定できません。したがって、まずは参考材料として、国内勤務時代の生活費と同額(個人年金保険料は除く)とします。
唯一の収入となる年金の受給額ですが、試算上、繰り下げ受給としましたので、アップ分は現行なら42%増です。ただし、ねんきん定期便で確認された受給額「16万円」は、60歳の年金加入期間まで保険料を納付した場合の金額となります。
それらを考え合わせて、額面19万円程度、手取りで16万円とすれば、不足額は月13万5000円、年間で162万円。不定期支出を考慮しても、30年間で5000万円。100歳になっても、半分以上、金融資産が残る計算になります(相続は考慮せず)。
また、施設入居の場合、生活費が上記と同様額なら、発生する施設入居の契約金は5000万円程度まで対応できます。試算上、資金的には問題ないと言えるわけです。
ただし、この試算は現在の物価の継続が大前提です。
■アドバイス3:不透明な今後に備えるため、海外移住は先延ばしを
ご相談者も不安視されているように、今後の物価高、インフレ傾向はある程度までは避けられないと思われます。ここ最近の世界状況を見ると、想定以上かもしれません。
公的年金はマクロ経済スライドにより調整されることもあり、現状、物価高に追いつくのは難しいと考えるべきです。
もっと心配なのは、20年間を海外で暮らすというライフプラン。もし、移住先や近隣諸国で紛争が起こったなら、物価高だけのリスクにはとどまりません。
数年先のことは誰も分からない、そんな時代です。
別に、海外移住を諦めてくださいと、言いたいわけではありません。今後もインフレが想定されるとは言え、現状の試算では、かなり余裕ある資金が準備できます。
必要以上に老後を不安に思う必要もないはずです。心配されている施設費用も千差万別ですから、自己資金に合わせて選択すればいい。
それでも、「2年後に移住をする」というプランは、現時点では急ぎ過ぎていると感じます。
海外で生活するなら、できるだけ早く、元気なうちにという思いは理解できます。しかし、リスク回避のために、少なくとも世界情勢が落ち着き、インフレ経済もある程度、先を見越すまで、国内で生活されてはどうでしょうか。
仮に、海外移住を先に延ばせば、早期退職も同様に先延ばしができます。その分、貯蓄が上積みされるでしょうが、働くことが無理と感じるなら、帰国後してすぐに早期退職されてもいいのでは。
そう言うと、先に触れた将来のリスクと矛盾するようですが、できる範囲でしかリスク対策はできないと思います。
その意味で、ご本人も言われているとおり、保有する資産を増やすことは考えるべき。
あるいは、投資リスクはさほど取りたくないなら、元本保証の個人向け国債を買われるのもいいと思います。普通預金よりはかなり有利です。
他に、金融機関の定期預金の金利なども確認しながら、リスクを取らない増やし方を継続するだけでも、十分効果は得られると考えます。
■相談者「早期退職希望男」さんから寄せられた感想
専門家から今の資産でも十分退職可能であると言う意見にまずは安心いたしました。
一方予測不可能な物価高、今の世界情勢などを鑑み、早期退職はするが、日本に数年間バイトでもしながら、ちゃんとした資産形成をして、数年後、海外移住という新しい選択肢を提示していただいたのは、ありがたかったです。
教えてくれたのは……井戸美枝さん
CFP®、社会保険労務士。講演や執筆、テレビ、ラジオ出演などを通じ、生活に身近な経済問題をはじめ、年金・社会保障問題を専門とする。社会保障審議会 企業年金・個人年金部会委員歴任。国民年金基金連合会理事。「難しいことでもわかりやすく」をモットーに数々の雑誌や新聞に連載を持つ。『知らないと増えない、もらえない妻のお金新ルール』(講談社)『ゼロ活 お金を使い切り、豊かに生きる!』(扶桑社)『私の老後のお金大全』(日経BP社)など累計刊行96万部。
取材・文/清水京武
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