人生100年時代といわれる今、60代を迎える多くの方が「お金の正解」が見えない不安を抱えています。

そこで、All Aboutマネー編集部が毎月実施している「家計のアンケート」の回答をもとに、60歳以上のリアルな声を集計しました。
中には、60歳を過ぎて1000万円以上の住宅ローン残債があるという方が一定数見られます。

今回は、大きなローンを抱えたまま60代を迎えるケースについて、経済ジャーナリストでAll Aboutマネーガイドの酒井富士子さんにローン返済と年金受給のポイントを教えてもらいました。

■Q:60歳で住宅ローンが残り1000万円以上……退職金と年金の繰り上げ受給で、早めに返済を終わらせたほうがいい?
ローン計画を立てていたとはいえ、60代に入って1000万円超のローンが残っているのは心理的にも不安なもの。今後も返済能力が維持できるとも限りません。

65歳までは払い続け、退職金で一括返済するか、もしくは年金を早く受け取る(繰り上げ受給)などして、返済の足しにしたほうがいいのでしょうか。

■A:退職金で住宅ローンを返済するのはできれば避けたい
まず、一番にお伝えしたいのは、退職金で住宅ローンを返済するのはできるだけ避けたいということです。退職金で住宅ローンを払わない、これが基本です。

多くの住宅ローンには、団体信用生命保険(団信)がついています。万が一のことがあれば、その時点で残債はなくなります。老後資金の柱である退職金を削ってまで、無理に返済する必要はありません。

住宅ローンは、定年後も含めて淡々と払い続けるもの。早く終わらせようとするのではなく、住宅ローンに振り回されないことが大切です。


もちろん、60歳時点で資産が5000万円程度あるような場合は、1000万円程度を返済に充ててもいいでしょう。ただし、それでも必ずしも繰り上げ返済が必要というわけではありません。あくまで余裕資金の範囲で考えるべきです。

■年金繰り上げも不要。完済まで働くことを前提に
では、年金を60歳から繰り上げ受給して返済に充てるべきかというと、これもおすすめはしません。

年金は繰り上げたり繰り下げたりせず、65歳から受け取るのが基本です。住宅ローンのために受給タイミングを動かす必要はありません。

「では毎月の返済をどうするか」です。ここで考えるべきはシンプルで、完済するまで働き続けること。

例えば、住宅ローンが70歳まで残っているのであれば、70歳まで働く前提で考えます。今の会社の継続雇用だけで足りないのであれば、仕事を変えることも視野に入れてみてください。

在職老齢年金の仕組みも変わり、働いて給料を得ながら年金を全額受け取れる枠が広がっています。
上限(※)を超えないように働き、もし生活費として余るようでしたら、その分は返済ではなくNISAで運用するとよいでしょう。

※令和8年度から、賃金と老齢厚生年金の合計が月65万円

【アンケート調査概要】
対象:All About読者
期間:2025年1月~2026年1月
調査方法:ネットによる任意回答
有効回答総数:1197(うち60歳以上:449)

文:酒井 富士子(経済ジャーナリスト)
「日経ウーマン」「日経マネー」副編集長歴任後、リクルートに転職し、定年あるじゃん、あるじゃん投資BOOK等の立ち上げ・編集に関わる。2006年にお金専門の制作プロダクション「回遊舎」を創業。「ポイ活」の専門家としても情報発信を行う。
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