ようやく迎えた年金生活。「もう、貯金はしなくてもいいのでは?」と思う半面、心のどこかで「でも本当に大丈夫?」という不安が消えない……そんな方は多いのではないでしょうか。


今回は、散らばりがちな老後の不安を整理し、確実に備えておくべき「守り」の数字の目安と、無理のないこれからの暮らし方について考えてみましょう。

■なぜ、年金生活になっても「貯金」が必要だと思うのか?
貯金が必要かどうかは、個々の資産状況や家族構成によって大きく異なります。

例えば、「現役時代に計画的に蓄え、退職金も受け取ったという方」「貯金は潤沢ではないけれど、支え合えるご家族と同居している方」「単身で年金のみが頼りの方」。このように置かれた環境が違えば、貯金に対する考え方も変わります。

それでも、多くの方が貯金の必要性を感じる背景には、長生きのリスクや、先々お金が底をついたらどうしようという「予測できない未来への不安」があるからでしょう。さらに、昨今の物価高により、今ある蓄えがどんどん目減りしていけば、不安をさらに強くさせます。

周りが不安だらけだったとしても、大切なのは、「自分のライフスタイルで、何にいくら必要なのか」を冷静に見極められているか。優先順位を付けてお金を管理できているかということ。それが不安を解消するために大切です。

■70歳までに備えたい「医療費」の目安
優先順位を考える上で、高齢期の誰もが避けて通れないのが「身体の変化」です。年齢を重ねれば、誰でもおのずと不調が現れます。そのため、日々の生活費とは別に、不調になったときの治療費などを優先的に確保しておく必要があります。


厚生労働省の調査(令和4年度)によると、1人当たりの生涯医療費は約2900万円。そのうち、70歳以降にかかる費用が全体の47%(約1361万円)を占めています(公的医療保険からの給付分も含む)。

ここから、窓口で支払う自己負担分(1~3割)を計算すると、私たちが現金で用意しておくべき目安が見えてきます。まずは、136万~408万円を「医療費」として確実に確保すること。具体的な数字を把握し、別枠で管理することが、漠然とした不安をコントロール可能なものに変える第一歩になります。

■日々の生活を年金サイズに整える
医療費の備えが見えてきたら、次は日々の生活の整え方です。

理想は、毎月の生活費を年金の範囲内で賄うこと。そのために必要なのは、ただの我慢ではなく、自分の価値観に合った「節約力」を磨くことです。固定費を見直し、日々の暮らしに工夫を凝らす。何によって自分が満たされるのかという自分軸を知っていれば、暮らしをスリムに整えることは決して苦い作業ではありません。

もし年金だけで足りないのであれば、無理のない範囲で「働く」という選択肢もあります。ただし、ここでも自分軸が大切です。
アルバイトやパートであってもフルタイムではなく、心身に負担のないペースを守ること。

「好きなことをして、さらにお金も貯めて」といった欲張りは禁物です。先細りしていく高齢期の体力に対して、現役時代のように働き続けるのは本末転倒。節約も働き方も、自分の健康と心の平穏を最優先に、細く長く続けられるバランスを見つけていきましょう。

お金はあれば、あった方がいい……。その思いに終わりはありません。高望みをするよりも、自分の身の丈を知り、暮らしをそれに合わせることで、多くの不安は消えていくでしょう。

文:舟本 美子(ファイナンシャルプランナー)
会計事務所、保険代理店や外資系の保険会社で営業職として勤務後、FPとして独立。人と比較しない自分に合ったお金との付き合い方を発信。3匹の保護猫と暮らす。All About おひとりさまのお金・ペットのお金ガイド。
編集部おすすめ