その状態のまま定年を迎えると、急に時間が増えたときに「何をすればいいのか分からない」と感じることがあります。これまでの生活が、役割や予定によって成り立っていた分、自分で時間を使うことに戸惑ってしまうのです。
今回は、この「やることがない」を放置することが招く経済的リスクと、時間の使い方を取り戻すための考え方を整理します。
■「やることがない」を放置することでの経済的リスク
「やることがない」という状態を放置することは、家計にとって非常に危険な予兆です。人は空白の時間を埋めるために、無意識のうちに「お金を払って時間を潰す」という安易な習慣に陥りやすいからです。
●依存を招く「不要な買い物」
特に必要のない物でも、テレビショッピングやネットの「今だけお得」という刺激に反応し、寂しさを物で埋めようとしてしまう。これは一度習慣化すると、歯止めが効かなくなる依存の入り口です。
●「居場所」を求めて膨らむコスト
孤独を紛らわせるために、本来は必要のない接骨院やマッサージ、美容院などを「話し相手」を求めてハシゴする。こうした「交流」を目的とした支出は、積もり積もれば家計の根幹を揺るがす大きな固定費へと変わります。
●一瞬で資産を失う! 投資詐欺や高額なセミナー
最も深刻なのは、時間を持て余した焦りから、内容をよく理解しないまま高額な投資話やセミナーに手を出してしまうことです。
これらは決して「無駄遣い」の範疇(はんちゅう)ではすまされません。退職金や老後資金を一瞬にして枯渇させ、生活を破綻させる致命的な損失になり得ます。
「やることがない時間」を安易にお金で埋める習慣がつくと、老後資産がどんどん削られていきます。自分の時間を自力で管理できていないことに早く気付いて、対応するようにしましょう。
■やりたいことを見つけるための「小さなきっかけ」
「やることがない」と感じるときは、新しいことを無理に探すよりも、これまでの自分を振り返ってみるのも1つの方法です。
例えば、若い頃に好きだったこと、夢中になっていたこと、時間を忘れて続けていたことはなかったでしょうか。忙しさの中で手放してしまったものの中に、今の自分にとってもしっくりくるヒントが残っていることがあります。
ただ、頭の中で振り返るだけでは、なかなか思い出せないこともあります。そんなときは、身の回りを整えることから始めてみるのもよいでしょう。
家の中を片づけたり、整理したりする中で、忘れていた趣味の道具や思い出の品に触れ、「もう一度やってみようかな」と感じることもあるかもしれません。
特別なことを始めなくても、自分の過去や身近な環境に目を向けるだけで、次の一歩は見えてきます。そうした小さな気付きの積み重ねが、日々の過ごし方を少しずつ変えていくでしょう。
文:舟本 美子(ファイナンシャルプランナー)
会計事務所、保険代理店や外資系の保険会社で営業職として勤務後、FPとして独立。人と比較しない自分に合ったお金との付き合い方を発信。
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