■子どもたちを巻き込みたくはない
「自分の親ですからね。施設に入るほど弱ってはいない、だけど何度か家の中で転倒して骨折したこともある。本人は一人で大丈夫の一点張り。放っておけばいいのかもしれないけど、そういうわけにもいかないだろうと夫に言われて、とうとう母親を自宅に呼んで同居することになったのが4年前です」
アキヨさん(56歳)はそう言う。同い年の夫との間に二人の子がいるが、上はすでに独立していたため、部屋の余裕もあった。下の娘は当時20歳の大学生。福祉関係の大学に通っていることもあり「実践で介護する」と張り切ってもいたが、アキヨさんは自分の娘に介護をさせる気にはなれなかった。
「だから母を引き取ってから、すぐに介護認定を受けてケアマネさんと密接に連絡を取り合いました。結果は要介護2で、デイサービスを利用して、母も退屈しないような日常生活を心がけたんです」
だが、母は仕事中のアキヨさんに時々電話をかけてくる。
■ぼやきたくなることも
「卵はあったはずだけどと思いながらも買って帰ると、やはりある。どうして卵があるのに電話かけてくるのと聞くと、『そんな電話したかしら』と。別の日には、仕事に行ってくるというと『どこで何をしているの』って。何度も説明しているのにとぼやきたくもなります。すると『何度でも言えばいいの』と高圧的になる」
かといってまったくわけが分からないということはなく、いまだに裁縫は上手だし、娘の服をきれいに繕ったりすることもある。
ただ、アキヨさんの動向にはやたらと神経質なのが気になっていた。母親本人が不安だからだろうと思っていたが、あるときアキヨさんは急に封印していた過去を思い出した。
■母は私を支配して満足する
もともと母とは気が合うわけではなかった。母は「一人娘と姉妹のように仲がいい」と思っているようだったが、アキヨさんは母に心を許したことはほとんどない。
「大昔ですが、小学校高学年のときアイススケートをやってみたかったんです。母に言ったら、教室を探してきたのはいいけど、早朝で、しかも母も一緒に申し込んでいた。
それ以来、彼女は習いたいものがあると父親に相談した。父は申し込んではくれるがついてはこない。代わりに「一緒に行ってあげる」という母を、中学生のころに振り切った。それからはどこかギクシャクした関係になった。
「高校時代には、母に『どうして家族の中であんただけがデブなんだろう』と言われたのがきっかけで摂食障害になりかけました。父に話して医者に行ったおかげで、ひどいことにはならなかったけど……。私、そのときのことを自分の中で封印していたんですよ」
それが介護をきっかけによみがえった。
■自身の危機を感じて施設を探すことに
「あんたは食べないの? そういえば昔は太ってたよね。今は気をつけてるの?」とあまりにもなにげなく言ったのがきっかけで、苦しんだ昔を思い出したのだ。
「あなたのせいで摂食障害になりかけてひどい目にあったわ、と言ってやりましたが、当然、母は覚えてない。それどころか無神経に『あんた、そんなに足太かったっけ』とか『シミが増えたわねえ』と外見をあげつらう。そうだ、私は過去、こうやって傷つけられていたんだと一気に悪夢がよみがえってしまった」
このままだとメンタルが崩壊する。アキヨさんは怯えた。娘にぼやくわけにもいかず、夫とも話し合って今、母を預けることのできる施設を探しているという。だが、そこに異論を唱えたのは同居する大学生の娘だ。
「お母さんは冷たいと娘が言い出して。正直に全てを話してもいいんですが、娘への影響を考えると言いづらい。プロに任せた方がおばあちゃんも楽だと思うと説明していますが、娘は納得していないかもしれません。
誰もが納得して、誰もが幸せになる選択肢はないのかもしれない。老いることは仕方がないのだが、周りを苦しめることもある。犠牲になり続ける人生は嫌だとアキヨさんが判断するなら、母が施設へ行くのもやむを得ないのではないだろうか。









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