累計発行部数110万部突破の社内恋愛コメディ『この会社に好きな人がいます』(榎本あかまる/講談社「モーニング」所載)が待望のTVアニメ化! 社内で犬猿の仲と噂される立石真直と三ツ谷結衣は、周囲には内緒で付き合い始めることに。そんな初々しいカップルの癒しとスリルに満ちた社内恋愛の行方は……。
――最初に監督のオファーを受けた経緯を教えてください。
武市 お世話になっているアニメ制作会社のプロデューサーの方から「この作品をアニメ化するんだけど」と、原作コミックと企画書をいただいたんです。監督を引き受けるかどうかは、コミックを読んで決めようと思っていたんですが、告白から始まる立石から見た男性目線での社内恋愛がすごく面白くて。彼女になる結衣 もデレとツンのギャップがすごく可愛くて、読んですぐに「監督やらせてもらいます」とお返事させていただきました。
――30分枠のTVアニメは初監督ですね。
武市 これまで制作してきたショートアニメやOADは、話数演出などはほぼ自分ひとりで完結するスタイルで作っていたんです。30分アニメでは、自分の話数演出と他の話数演出さんとのバランスの取りまとめや指示出しをしないといけないので、「出来るのかな?」といった不安もやっぱりありました。でもプロデューサーの方も「バックアップします」とおっしゃってくださったので、それならと前向きな気持ちでチャレンジさせていただきました。
――この作品をアニメ化するにあたって重視したポイントを教えてください。
武市 原作がある作品をアニメにするとき、必ず「このキャラが絶対しないことはなんですか?」と原作者の方へ確認するようにしています。原作コミックでやるはずがないことをアニメでやっていたらキャラが変わってしまうので。
――原作へのリスペクトをもってアニメ化されたわけですね?
武市 そうですね。例えば社内恋愛ということで、ふたりは一生懸命隠しているわけですが、絵コンテで「これぐらいだったら大丈夫かな?」と描いたシーンがあったんです。「どうかな」と思っていたら、榎本先生からしっかりとリテイクが入りまして、「ですよねー」みたいな感じで、すぐに直させていただきました(笑)。やっぱり大事な作品をお預かりしてアニメ化をさせてもらっているわけですから、原作のテイストを大切に、雰囲気を壊さないように考えながら作っています。
――立石と結衣のカップルについて、どんな印象をお持ちですか?
武市 すごくバランスのいいふたりですよね。結衣はチャレンジ精神旺盛でどんどん前に進んでいくタイプ、立石は真面目で慎重なタイプだと思っていて。失敗しても挑戦を続ける結衣のポジティブな思考に引っ張られて、立石も「俺も頑張ってみようか」と一歩を踏み出したり、反対に立石に癒やされて結衣が気持ちを立て直したりと、お互いに良い影響を与え合うバランスのとれた素敵なカップルだなって思いました。
――ふたりを魅力的に描くために、どのような工夫をされたのでしょうか?
武市 結衣は表情が豊かなところがポイントだと考えていたので、キャラクターデザインの大沢(美奈)さんには彼女の表情のバリエーションをいっぱい作ってもらいました。劇中でも、そんな彼女のいろんな表情を見てもらえると思います。立石については「結衣が大好きなので!」と打ち合わせでよく言っていましたね。立石は「こいつ可愛いな」ってモノローグでよく言うほど、結衣が好きでしょうがない様子を、どう映像として表現していくか頭を悩ませていました。
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――アニメ化で、あえて原作から変えた部分はありますか?
武市 原作では1話1話がとても短いので、何話かのエピソードを繋げるかたちで一本のお話を脚本家さんと作りました。その上で全12話に構成していったわけですが、私としては最終回のお話に序盤のとあるシーンを付け足したいなと思っていたんです。でも、そうすると時間軸がおかしくなって、原作とアニメの構成が変わってしまうということで、「お話の順番を変更しても大丈夫ですか?」と原作者の榎本先生にご相談させていただきました。そうしたら「アニメはアニメなので、アニメならではの構成にしていただいて大丈夫ですよ」と快くおっしゃってくださいまして。そこで改めて脚本家さんにお願いして、各話の時間軸を必要に応じて入れ替えさせていただきました。出来上がった脚本を見てみたら、スムーズにお話が流れるように順番がきれいに入れ替えられていたのでビックリしました。
――立石を演じる山下誠一郎さんと、結衣を演じる宮本侑芽さんの演技について、どんな印象がありますか?
武市 オーディションの際に、名前とかは見ずにキャラクターと合っていると思った声をいくつかリストアップさせてもらいました。それをみんなで持ち寄って話し合って決まったのがおふたりです。キャラクターと声の調和が絶妙で、第一声を聞いた第1話のアフレコは「すごい、立石と結衣がいる!」と感動しながらの収録になりました。
――どんなところが似ていると思われたのでしょうか?
武市 立石と山下さんは真面目キャラというところが、本当にそっくりなんですよ。収録中に考え過ぎて「うー」ってなったりするのを、音響監督の土屋(雅紀)さんが、答えが出るまで見守る場面もあって、そんな一生懸命なところが似ていると思いました。宮本さんは元気いっぱいでまさに「結衣だな」って感じですね。
――立石と結衣以外で注目してほしいキャラクターは?
武市 登場するキャラクターは全員魅力的ではあるんですが、あえてというなら早川さんと染井君についてはチェックしてもらいたいですね。立石と結衣の恋愛を描くにあたって、もう一組カップルを出した方が、メリハリがつくのでは思ったんです。あとは私が早川さんと染井君の恋愛をみたかったっていうのもあって(笑)。脚本家さんにお願いしたら「僕もそれは考えていました」とふたつ返事でOKが出まして、入れてもらうことになりました。それぞれ悩むところは違うけど、お互いのことを想う気持ちは同じという、並行する二通りの恋愛模様にもご注目ください。
――オープニング主題歌やエンディング主題歌についても、曲の雰囲気などリクエストされたそうですが?
武市 オープニング主題歌を歌うポルカドットスティングレイさんには、立石と結衣のふたりが主人公ということで「一日がスタートする朝に元気いっぱいでいる結衣のイメージでお願いします」と、エンディング主題歌を歌うpachaeさんには「会社が終わった後の立石のイメージで」とお伝えして作っていただきました。完成した曲を聴いてみたらどちらもすごくいい曲で、素敵な曲をいただけて本当に嬉しかったです。
――最後にアニメをご覧になっているファンの皆さんにメッセージをお願いします。
武市 原作を知っている方にはアニメならではの流れになっているところを楽しんでいただきたいですし、初めてこの作品を知っていただいたという方には、立石と結衣の社内恋愛の行方を温かい目で見守ってもらえたらと思います。
<PROFILE>
武市直子(たけいちなおこ)
アニメーション監督、演出、絵コンテ。主な監督作品はTVアニメ『戦乙女の食卓』『戦乙女の食卓II』(孫猛と共同)、OAD『マスク男子は恋したくないのに』、演出『Re:ゼロから始める異世界生活 (2nd Season 後半クール)』ほか。
今回は原作へのリスペクトを胸にアニメ化を進めていったという武市直子監督に、この作品の魅力や制作秘話について語ってもらった。
――最初に監督のオファーを受けた経緯を教えてください。
武市 お世話になっているアニメ制作会社のプロデューサーの方から「この作品をアニメ化するんだけど」と、原作コミックと企画書をいただいたんです。監督を引き受けるかどうかは、コミックを読んで決めようと思っていたんですが、告白から始まる立石から見た男性目線での社内恋愛がすごく面白くて。彼女になる結衣 もデレとツンのギャップがすごく可愛くて、読んですぐに「監督やらせてもらいます」とお返事させていただきました。
――30分枠のTVアニメは初監督ですね。
武市 これまで制作してきたショートアニメやOADは、話数演出などはほぼ自分ひとりで完結するスタイルで作っていたんです。30分アニメでは、自分の話数演出と他の話数演出さんとのバランスの取りまとめや指示出しをしないといけないので、「出来るのかな?」といった不安もやっぱりありました。でもプロデューサーの方も「バックアップします」とおっしゃってくださったので、それならと前向きな気持ちでチャレンジさせていただきました。
――この作品をアニメ化するにあたって重視したポイントを教えてください。
武市 原作がある作品をアニメにするとき、必ず「このキャラが絶対しないことはなんですか?」と原作者の方へ確認するようにしています。原作コミックでやるはずがないことをアニメでやっていたらキャラが変わってしまうので。
今回も榎本先生や担当編集さんにチェックをしていただき、そのことに注意して制作しました。
――原作へのリスペクトをもってアニメ化されたわけですね?
武市 そうですね。例えば社内恋愛ということで、ふたりは一生懸命隠しているわけですが、絵コンテで「これぐらいだったら大丈夫かな?」と描いたシーンがあったんです。「どうかな」と思っていたら、榎本先生からしっかりとリテイクが入りまして、「ですよねー」みたいな感じで、すぐに直させていただきました(笑)。やっぱり大事な作品をお預かりしてアニメ化をさせてもらっているわけですから、原作のテイストを大切に、雰囲気を壊さないように考えながら作っています。
――立石と結衣のカップルについて、どんな印象をお持ちですか?
武市 すごくバランスのいいふたりですよね。結衣はチャレンジ精神旺盛でどんどん前に進んでいくタイプ、立石は真面目で慎重なタイプだと思っていて。失敗しても挑戦を続ける結衣のポジティブな思考に引っ張られて、立石も「俺も頑張ってみようか」と一歩を踏み出したり、反対に立石に癒やされて結衣が気持ちを立て直したりと、お互いに良い影響を与え合うバランスのとれた素敵なカップルだなって思いました。
――ふたりを魅力的に描くために、どのような工夫をされたのでしょうか?
武市 結衣は表情が豊かなところがポイントだと考えていたので、キャラクターデザインの大沢(美奈)さんには彼女の表情のバリエーションをいっぱい作ってもらいました。劇中でも、そんな彼女のいろんな表情を見てもらえると思います。立石については「結衣が大好きなので!」と打ち合わせでよく言っていましたね。立石は「こいつ可愛いな」ってモノローグでよく言うほど、結衣が好きでしょうがない様子を、どう映像として表現していくか頭を悩ませていました。
【関連画像】『この会社に好きな人がいます』のドキドキな名場面を見る!(25枚)
――アニメ化で、あえて原作から変えた部分はありますか?
武市 原作では1話1話がとても短いので、何話かのエピソードを繋げるかたちで一本のお話を脚本家さんと作りました。その上で全12話に構成していったわけですが、私としては最終回のお話に序盤のとあるシーンを付け足したいなと思っていたんです。でも、そうすると時間軸がおかしくなって、原作とアニメの構成が変わってしまうということで、「お話の順番を変更しても大丈夫ですか?」と原作者の榎本先生にご相談させていただきました。そうしたら「アニメはアニメなので、アニメならではの構成にしていただいて大丈夫ですよ」と快くおっしゃってくださいまして。そこで改めて脚本家さんにお願いして、各話の時間軸を必要に応じて入れ替えさせていただきました。出来上がった脚本を見てみたら、スムーズにお話が流れるように順番がきれいに入れ替えられていたのでビックリしました。
――立石を演じる山下誠一郎さんと、結衣を演じる宮本侑芽さんの演技について、どんな印象がありますか?
武市 オーディションの際に、名前とかは見ずにキャラクターと合っていると思った声をいくつかリストアップさせてもらいました。それをみんなで持ち寄って話し合って決まったのがおふたりです。キャラクターと声の調和が絶妙で、第一声を聞いた第1話のアフレコは「すごい、立石と結衣がいる!」と感動しながらの収録になりました。
――どんなところが似ていると思われたのでしょうか?
武市 立石と山下さんは真面目キャラというところが、本当にそっくりなんですよ。収録中に考え過ぎて「うー」ってなったりするのを、音響監督の土屋(雅紀)さんが、答えが出るまで見守る場面もあって、そんな一生懸命なところが似ていると思いました。宮本さんは元気いっぱいでまさに「結衣だな」って感じですね。
自分から「結衣だったら、こう言うんじゃないですか?」と提案してくださったりして、「じゃあ、このセリフこうしましょうか?」と変えたところもあったりしました。こちらから「こうしてほしい」といったようなディレクションも全然なかったんです。これは他のキャストさんについてもそうで、あえて言うなら森園さんを大地(葉)さんに、「もっと冷たくていいです」という話をしたぐらいでした。
――立石と結衣以外で注目してほしいキャラクターは?
武市 登場するキャラクターは全員魅力的ではあるんですが、あえてというなら早川さんと染井君についてはチェックしてもらいたいですね。立石と結衣の恋愛を描くにあたって、もう一組カップルを出した方が、メリハリがつくのでは思ったんです。あとは私が早川さんと染井君の恋愛をみたかったっていうのもあって(笑)。脚本家さんにお願いしたら「僕もそれは考えていました」とふたつ返事でOKが出まして、入れてもらうことになりました。それぞれ悩むところは違うけど、お互いのことを想う気持ちは同じという、並行する二通りの恋愛模様にもご注目ください。
――オープニング主題歌やエンディング主題歌についても、曲の雰囲気などリクエストされたそうですが?
武市 オープニング主題歌を歌うポルカドットスティングレイさんには、立石と結衣のふたりが主人公ということで「一日がスタートする朝に元気いっぱいでいる結衣のイメージでお願いします」と、エンディング主題歌を歌うpachaeさんには「会社が終わった後の立石のイメージで」とお伝えして作っていただきました。完成した曲を聴いてみたらどちらもすごくいい曲で、素敵な曲をいただけて本当に嬉しかったです。
――最後にアニメをご覧になっているファンの皆さんにメッセージをお願いします。
武市 原作を知っている方にはアニメならではの流れになっているところを楽しんでいただきたいですし、初めてこの作品を知っていただいたという方には、立石と結衣の社内恋愛の行方を温かい目で見守ってもらえたらと思います。
面白いなと感じていただけたなら、ぜひ原作コミックの方もチェックしていただければ(笑)。そして放送もご覧ください!
<PROFILE>
武市直子(たけいちなおこ)
アニメーション監督、演出、絵コンテ。主な監督作品はTVアニメ『戦乙女の食卓』『戦乙女の食卓II』(孫猛と共同)、OAD『マスク男子は恋したくないのに』、演出『Re:ゼロから始める異世界生活 (2nd Season 後半クール)』ほか。
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