『東京喰種トーキョーグール』や『僕のヒーローアカデミア』など人気TVアニメのテーマソングを手がけ、アニメソング界隈ではS級と評判のTK from 凛として時雨が、TVアニメ『俺だけレベルアップな件 Season 2 -Arise from the Shadow-』のエンディングテーマを収録したシングル『UN-APEX』を3月19日にリリース。『俺レベ』に対する考えや表題曲制作の裏側、5月にスタートするツアーへの意気込みなどを聞いた。


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■「旬が行くなら、ちょっと俺も行っちゃおうかな!」みたいな

――まずTKさんが感じた、TVアニメ『俺だけレベルアップな件』の魅力や共感した部分を教えてください。

TK:僕は、底辺から始まるところが、自分と重なる部分があるなと思って。自分はそこから全然レベルアップできていないんですけど(笑)。主人公・水篠 旬は急激にレベルアップして、僕にはあり得ない話だな~と思いながらも、観ている人がレベルアップしていく時間を共有できるようになっているので、その成長の過程が描かれているところが、見入ってしまうポイントなのかなと思いました。

――旬は、毎日腕立てや腹筋を何百回もやるなど、はじめから強いわけではないところがいいですよね。ただSeason1とSeason2では、人間がガラリと変わってしまいますが、そういうところはどう思いますか?

TK:妹の葵からも「お兄ちゃんだよね?」と言われていますが、そんなに変わることってある? って思いますよね(笑)。でも変わっていくことで、失っていくものも見え始めるじゃないですか。僕はSeason1のエンディングテーマ「request」(krage)でも曲を書いたのですが、もし旬がSeason1からあまり変化がなかったら、「1回書いたストーリーの上書き」に悩んだと思います。でもああやって旬がレベルアップして、人間らしさみたいなものがさらに薄れていくことによって、「UN-APEX」を作るための、言葉や感情を拾いやすくなったところがあります。誰でも心のどこかで「自分もレベルアップしたい」と思っていると思うんです。レベルアップという言葉じゃなくても、「ステップアップしたい」とか「これができるようになりたい」とか。それを尋常ではないスピードで登り詰めていったとき、果たして自分は今と同じ感覚を保っていられるのだろうか? 例えばお金持ちになりたいと思って、努力をしてお金持ちになったとしても、今の自分のままでいられるか、と。
Season2には、そこの縮図が描かれている感じがあって。ただ強くなるだけがテーマではなくて、置き去りになってしまったものも見えて、そこが面白いなって思いました。

――Season1のエンディングテーマ、krageさんが歌った「request」でも、TKさんはプロデュースを手がけていました。「request」は、どういうイメージで書かれたのですか?

TK:Season1は物語として、ある種覚醒する準備期間で終わっていく感じだったので、「request」は、強くなった自分と言うよりは、弱さを打ち消していく自分みたいな、「強くなれるのかな?」という描写が多かったです。「自分は何も無い人間で、コンプレックスにまみれた人間だけど」というスタート地点は、「request」も「UN-APEX」も近いところにあるのですが、メーターが振り切れるまでのレンジ幅みたいなものを「UN-APEX」では広く取れたので、そこで結構違いが出せたかなと思います。

――「UN-APEX」は、〈人類史上最低の僕のおでましだ〉といった自虐から入り、ラップっぽく歌う〈Sorry Sorry 君達置いて行くね〉の展開は、人を見下し小バカにしているような感じで、すごく痛快な曲だなと思いました。

TK:ありがとうございます。ああいう言葉の表現や、自分を無理矢理どこかに乗せるような感じは、『俺レベ』という作品のタイアップであるからこそで、作品に寄りかかることで書くことができたと思っています。「旬が行くなら、ちょっと俺も行っちゃおうかな!(笑)」みたいな感じで、振り切れたんじゃないかと。でもその中には、「結局自分は何も持っていないけどね」というものも見え隠れしています。

■アニメの世界では1分29秒がフルサイズ

――アニメのエンディングの映像では、キャラクターがパンパンとクラップするようなシーンもあり、楽曲ととてもハマっていましたね。

TK:エンディングの映像は僕の曲に合わせて作られているので、すごくかっこいいなと思いました。
エンディングは静止画や切り絵などで表現されることもありますけど、楽曲が持っているものが細かく描写されていて。さらに視覚的にも、いきなり人数が増えるところなど、来て欲しいところで来てくれるような表現で、しっかりアニメーションを付けてくれているので、まるでオープニングのようだなって(笑)。

――「UN-APEX」のサウンドは、ロックをベースにしながらEDM、ヒップホップ、トラップなど様々な要素を感じましたが、サウンド面ではどんなイメージで制作しましたか?

TK:僕は普段あまり洋楽とか激しい音楽は聴かないのですが、トラップっぽいというのは何となく理解していて。ただ、どこがどうトラップなのか、細かくは分かっていません(笑)。ワブルベースみたいなところもありますけど、それはシンセのソフトをいろいろイジっている中でたまたま選んだ音色ですし、最初に「こういうものをやろう」とイメージを置いて作ることはほとんどありません。

――アニメサイズを先に作ったのですか?

TK:はい。アニメの世界では1分29秒がフルサイズなので、まずはそこに対して全力で作り込んでから、そこから自分の作品としてどう落とし込めるかを考えるほうが、基本的には多いです。監督さんが、曲に対してどう反応してくれるかが一番大事なので、最初にデモを聴いてもらうときからフルスイングでいきたいなと思って作りました。1分29秒という短い時間の中で、早めに聴かせどころを持って来ることも意識しました。

――「UN-APEX」は1月に配信リリースもされていますが、シングルの期間限定通常盤 (Anime盤)には「UN-APEX」の英語バージョンが収録されているなど、配信で聴いた人でもシングルは必聴ですね。

TK:そう思ってもらえたら嬉しいです。シングルならではのエクスクルーシブな要素があったほうがいいと思って。
アニメ盤のジャケットのイラストもこちら側の要望をすごく聞いてくださり、水篠 旬を滲んだ色彩でダークに表現してくれました。また初回生産限定盤(Leveling盤)は、ちょっと無理を言って7インチ紙ジャケット仕様になっています。

――初回生産限定盤(Leveling盤)に収録の「UN-APEX (TK Leveling ver.)」など、各楽器にフィーチャーしたバージョンは、違う曲のように聴こえて驚きました。

TK:カップリング曲は『俺だけレベルアップな件』に引っ掛けて、「俺だけレベルアップなミックス」にしてみました。ただ、ミックスはカラオケ感覚で簡単にできると思っていたら、そうではなくて大変でした。でも、作りながら改めて「ベースのここがカッコいい」など新たな発見もたくさんありました。

――追加レコーディングは?

TK:一切していません。あくまでも音源の中で鳴っている楽器の一つが、レベルアップされることの面白さを感じてほしいです。

■アニメの中だけで完結しているものを鼓膜と視覚で体感して欲しい

――初回生産限定盤(Leveling盤)には、他に『僕のヒーローアカデミア』第7期のオープニングテーマ「誰我為 (Acoustic version at Metropolis studios)」も収録されていますね。

TK:4月16日にアルバム『Whose Blue』をリリースするのですが、その制作で、イギリスに行っていたタイミングだったので、その制作中に録りました。原曲はコードストロークで歌い始める、僕の中では少し珍しいタイプの楽曲なのですが、歌がめちゃくちゃ難しいんです。それを弾き語りというネイキッドな状態でできるか不安がありつつも、「こういうバージョンがあったら嬉しいよね」という話が打ち合わせでも出ていたので頑張りました。
1カ月後にアルバムが出る訳ですから、それとは何かしら違ったものが入っていたほうがいいと思ってのことでしたが、結構大変で。イギリスにアルバムを作りに行ったはずなのに、「誰我為」の弾き語りに時間がかかり、アルバム制作が滞るという謎な遅延が発生しました(笑)。ただ「誰我為」と改めて向き合ったことで、歌における自分のウィークポイントが見つかって、「やっぱり俺はE級だな!」って思いながら録っていました。

――アニメで水篠 旬はレベルアップするごとにどことなくハイになっているような面も見られますよね。楽曲からもそういう感覚を受け取りました。TKさん自身も、楽曲作りでハイになることはありますか?

TK:ありますよ。ほとんど何も見えない状態から楽曲制作がスタートして、どんどんエンジンがかかっていって、何か最初の取っかかりみたいなものが摑めたときにわりとスルスルッと、自分が探していたものに対して「こういうことかもしれない」と見つかったときや、人を置き去りにしているような感覚を摑めている瞬間は、「俺はもしかしたらS級かもしれない!?」って思ったりします(笑)。そういう瞬間は誰でもあるんじゃないですかね。「今日かっこいいかも」とか「今日の自分イケてる」とか(笑)。

――その瞬間はアニメ盤のジャケットイラストの水篠 旬のようなダークな顔に?

TK:なっていたら嫌ですね(笑)。でも、曲作りは自分の「今これを摑めてる」という瞬間を、どれだけピックアップできるかなんです。普段の生活では、味わうことができない感覚です。


――自分に酔うことも大切ですね。

TK:だから自己陶酔できる人は、僕はすごく羨ましいと思っているし、ナルシストと呼ばれる人への憧れはあります。自分の場合は、「俺ってかっこいい」ではなく例えて言えば「俺って歌もギターも上手い」になるわけですけど。そんな風には1mmも思えないですし。基本的にはナルシストって他人からは敬遠されがちだけど、自分の中で「自分は最高だ」と言えるものを持っている人は、最強なんじゃないかと思います。でも僕は心のどこかで、それを摑み取れないかもしれないなと思う気持ちがあるから、そういう人に憧れるし、だから「UN-APEX」が書けたのだと思います。

――5月からツアー「TK from 凛として時雨 "Whose Blue Tour 2025"」が開催されます。

TK:「UN-APEX」がツアーで初披露となるので、僕たちがE級なのかS級なのか、皆さんの目で確かめてほしいです。はたまた、E級からS級へとランクアップする瞬間を目撃できるかもしれません!できないかもしれません!

――ライブ初参戦のアニメ『俺レベ』のファンもいるかもしれませんね。

TK:僕はステージに立つ側だから、観客として頻繁には足を運べないけど、だからこそたまにライブを観に行くと、フロアに立っている人の高揚感ってこんなにすさまじいんだなと感じるんです。僕でさえそうなのだから、音楽がアニメの中だけで完結していた人が、それを体感できることになったとき、どれだけいろんな音が聴こえて感覚が増幅されるのか。それを鼓膜と視覚で体感して欲しいので、たくさんの方に来てほしいですね。
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