劇場用アニメ『BAYONETTA Bloody Fate』。人気アクションゲーム『BAYONETTA』のアニメ化され話題だ。
3月28日からはレンタルも開始、より多くのファンの身近な存在になっている。
本作の監督は『アフロサムライ』シリーズなどを手がける木崎文智監督である。人気ゲームのアニメ化に真っ向から取り組んだ、一大プロジェクトの内幕を監督に聞くインタビュー第2弾は、ビジュアルを中心に作品に迫った。

[木崎文智(きざき・ふみのり)]
1969年生。福岡県出身。1980年代末よりアニメーターとして活躍し『バジリスク~甲賀忍法帖~』で初監督。切れ味の鋭いアクション演出は海外からの評価も高く、近作『アフロサムライ:レザレクション』はエミー賞へのノミネートも果たした。
(※崎の字は、本来は“たちさき”です。)

『BAYONETTA Bloody Fate』  <A Href="http://www.bayonetta-movie.com/" Target="_blank">http://www.bayonetta-movie.com/</A>

― ここからはおもにビジュアル面についてお聞きしようと思います。まず、原作の細かい3DCGモデルを、手描きの作画中心で動かす労力は並大抵ではないと思うのですが。

- 木崎文智(以下「木崎」) 
3DCGモデルの場合は、一度作ってしまえばディテールが多くてもいくらでも動かせますよね。それが手描きアニメーションだと、とにかく一枚一枚を描いていく作業になります。

『ベヨネッタ』は元のデザインの線の密度が非常に高くて、パーツも多かったので、アニメ用のリデザインは難航しました。そのまま忠実に再現すると「こんなの動かせない」ということになるし、省略しすぎてもキャラクターの華麗さが損なわれて「あれもこれも欲しい」という話になってしまうので。

― 具体的な落とし所は?

- 木崎 
本当に偶然なんですけど、原作ゲームでキャラクターデザインを務めた島崎麻里さんが『アフロサムライ』の原作者である岡崎能士さんと交流があって、そのつながりでアニメ制作にもちょうどいいタイミングで参加していただけたんですね。そこから島崎さんにキャラクター監修として、原作サイドとも交えて調整しました。手描き部分以外では高密度のまま再現しなければならない大型天使や、銃のアップなどはCGで作成しています。

― そうしたデザインのすり合わせを経た上で、ベヨネッタの作画上のポイントはどこになりましたか?

- 木崎 
シルエットのバランスですかね。ベヨネッタは頭身が高い上に、プロポーションもかなり特殊なんです。ほとんどの作画スタッフがそのシルエットのバランスには苦労していましたね。
昨今のアニメーション作品は頭身の低いキャラクターが主流なので、ベヨネッタの特殊な画は作業しつつ慣れていくしかなかったと思います。

― ベヨネッタは非常に頭身が高いですが、いまの多くの作品は5、6頭身ぐらいのキャラクターが多いですよね。

- 木崎 
今時の流れとはまったく真逆のデザインなんですよね。作業効率を度外視した線の多さもあって、とくに若いアニメーターが苦労していたと思います。

メガネというだけでも動かす上ではハードルが高いんですが、さらに両手両足に銃を装備していたり、長いリボンや髪の毛がたなびいたりして、ただ動かすだけでも労力を要しました。

― しかもその髪の毛やメガネといった、作画が大変な要素が外せないポイントですからね。

- 木崎 
「メガネを取ろうかな」と何度思ったことか……。もちろん冗談ですが(笑)。

― (笑)。ベヨネッタは絶対にメガネを取らないというのが原作でのお約束ですからね。

- 木崎 
そうですね。それを貫いた原作サイドのこだわりは非常に強いと思いましたね。僕は監督作業はあくまでも仕事として受けるタイプなので、自分の趣味嗜好より原作サイドがこだわったポイントがアニメ映像に少しでも落とし込めていれば、成功かなと思っています。
ベヨネッタがメガネをしていることで、目の表情をレンズのハイライトであえて隠して心情を表現するという演出ができたのはよかったですね。

― キャスティングについて、原作では海外のキャストが英語で演じていますが、今回は日本の声優陣が声を担当しています。ベヨネッタ役の田中敦子さんは原作ゲームのCMからの続投ですが、ほかの配役については?

- 木崎文智(以下「木崎」) 
原作サイドの意向をお聞きしてそれを尊重しました。
純粋にそれぞれのキャラクターに合う声質と演技を優先したキャスティングなので、僕もそれが正解だと思います。
結果的には著名で実力のあるベテランの方に多く参加してもらうことになりました。

― このところ木崎監督はエッジの効いた作品をずっと手がけている印象がありますが、そういった傾向はご自身ではどのぐらい意識しますか?

- 木崎 
基本的には来た仕事を受けて、仕上がったものが結果的にこうなった感じなんですね。だからとくに意識してはいないんですが、好きな方向性の仕事は続けてこれたとは思います。まわりからは「80年代や90年代のOVAっぽい」とよく言われるんですが、僕らの世代からするとそんなに珍しくなかったタイプのはずなんですよ。
あとはまあ、自分が監督をやるときって、みんなどうもアクションを期待しているみたいなんですよね(笑)。自分ではそこまで得意だとは思ってないんですが。
期待されている以上はアクションは外してはいかんなということで、毎回、悩みます。

アクションだけではなくドラマありきなので、キャラクターの心情とアクションが感覚的にすんなりつながるようには心がけています。
今回はごつい男性メインではなく、女性のセクシーなアクションだったので、そういった意味では新鮮な気持ちで作業できましたね。
毎日、女体を描き続ける日々はとても刺激的でした。(笑)
たださすがに画的にも濃い作品が続いたので、アクションを盛り込むにしても次はシンプルなキャラクターで、もっとドラマ主体の作品に挑戦してみたいですね。


― 『ベヨネッタ』のアクション描写でこだわった点は?

- 木崎 
ベヨネッタとジャンヌはバレットアーツという魔女一族の格闘技を使っているんですが、単に腕や足を突き出してるわけじゃなくて、予備動作から技を出して、型を決めてるんですね。
なのでちゃんと流派のある格闘術に見えるよう殺陣を組み立てています。
あとは直線的な動きではない華麗な女性の柔らかさや、色気にも気をつけましたね。
後半のジャンヌ戦はおたがいがギリギリでかわしていく攻防なので、緊迫感を重視したカット割りにしています。ベヨネッタは足技が多いので、参考になるかなと思ってカポエラのDVDを買ったんですけど、これはあんまり使いませんでしたね(笑)。

― 木崎監督がこれまで手がけた『アフロサムライ』や『X-MEN』と同様、海外のアニメファンに訴求力の大きいタイトルになりましたが、その点については?

- 木崎文智(以下「木崎」) 
最初に企画をもらったときに「これは海外でもウケるだろうな」と僕も思ったぐらいなので、国内よりも海外で受け入れられるかもしれないなと感じてはいますが、あくまでも国内のファンを大事にして作っています。

― 最後にあらためて本作の監督作業を振り返って、いかがでしたか?

- 木崎 
いつも以上に物量と時間との戦いでしたね。アニメ化するだけでもハードルの高い作品だったと思います。劇中にセレッサの「もう泣かないよ!何があっても逃げ出さない強い人になるの!」というセリフがあるんですが、これはコンテ作業中に足したセリフで、かなり当時の僕の気持ちを代弁してくれてます。泣きそうになりつつも「俺は逃げない!」と思いながら、作業していました。(笑)。
もともと原作が「∞(ノンストップ)クライマックスアクション」と銘打つだけあって、全然休んでいない作品なので、こっちも休めないんですよね(笑)。


― 仕上がりもかなりノンストップなアニメになったと思います。

- 木崎
いずれにしてもゲームのファンの方はもちろん、アニメで初めて『ベヨネッタ』という作品に触れる方にも、楽しんでもらえるよう作っていますので、たくさんの人に見てもらえたらと思います。
ゲームの続編も準備されていますし、アニメを見てから『2』をやっていただくと、多少はリンクする部分もあるかもしれないので、その点でも楽しんでもらえるかなと。あとは『ベヨネッタ』という作品がどんどん盛り上がってくれて、さらにまたアニメ化するようなら……。

― おっ!

- 木崎
いまのところまだそのまま監督をやるつもりはありませんが……もし元気があれば。(笑)。
でもそのぐらい『ベヨネッタ』というタイトルが盛り上がってくれると嬉しいなと思います。どんな形にせよ、今後につながれば、がんばってくれたスタッフも喜ぶと思うので。

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発売元: 東映アニメーション 販売元: エイベックス・マーケティング
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