カートゥーン ネットワークが送る世界的人気作品『アドベンチャー・タイム』の新エピソードが2015年1月4日から放送スタートとなる。3日にはこれを記念したおすすめエピソードや、湯浅政明監督が脚本・絵コンテ・監督を務めたエピソード「フードチェーン(原題:Food Chain)」も日本初放送。
「フードチェーン」はアニメーションのアカデミー賞といわれているアニー賞にノミネートされており、湯浅監督ファンも『アドベンチャー・タイム』ファンも見逃せない放送となる。
今回のインタビューでは湯浅監督と、湯浅監督と共に制作スタジオ・サイエンスSARUを率いる、今回のプロデューサーでもあるチェ・ウニョンさんに『アドベンチャー・タイム』の魅力や制作時のお話をうかがった。
[取材・構成=川俣綾加]

■ キャラクターデザインを見て「作る側になりたい」と思った

―アニー賞のノミネート、おめでとうございます。「フードチェーン」は湯浅監督やウニョンさん達で制作されたとのことですが、どのような役割分担になっていたのでしょうか。

湯浅政明監督(以下、湯浅)
ありがとうございます。作品によって違いますが『アドベンチャー・タイム』の場合は僕がプロットやストーリーボードなど監督的な事をやって、ウニョンさんにはプロデューサー的な立場でも入ってもらって、スタジオのセッティングやマネージメント、スタッフへの発注や英語指示などもやってもらっています。
サイエンスSARUを作ったのもこの仕事を受けるためだったのですが、スタッフも海外の方が多いので、わたしは英語が分からないので、そこら辺もウニョンさんには色々とお願いしました。

―アメリカの制作チームからは「会社でないと依頼できない」というお話だったそうですね。

湯浅
個人でも受けれるようですが、作品を作れる体制がないと発注出来ないようでしたので、ウニョンさんと会社を作って、主に設立や管理はウニョンさんにお願いしました。

―ウニョンさんはご自身がクリエイターというのももちろんあるかと思いますが、プロデューサー業についてはどこかで経験されたのでしょうか。

ウニョン
本格的にはこれが初めてです。以前、アンカマジャパンでディレクターのような立場で全体のマネジメントをしていた経験があり、立場的にもっと全体を統括できるならこういう風にやりたいなと考えていたことはありました。


湯浅
で、会社設立しなきゃって時に「できる? 」って聞いてみたら「できる」というので「じゃあやりましょう!」となったんです。

―『スペース☆ダンディ』9話で美術設定やゲストキャラデザインでウニョンさんのお名前を拝見して驚き、今回こうしたプロデュースも担当されていると知りさらに驚きました。

ウニョン
ちょうど『スペース☆ダンディ』と『アドベンチャー・タイム』は時期が重なっていたので大変でした(笑)

湯浅
たくさん仕事を抱えながらの会社設立になりましたよね。

―湯浅監督はこれまでにも『クレヨンしんちゃん』にも携わっていますが、子どもをターゲットとしたアニメで気をつけていることなどはありますか?

湯浅
シンプルにわかりやすくとういのはもちろんありますが、『アドベンチャー・タイム』の場合はもっとクールというか、シュールな部分が強い作品なので日本の子ども向けアニメほどにはわかりやすくないところがありますね。
でも絵をシンプルにやればいいのかなと思いながら作りました。どこまでがOKなのかのジャッジは制作チームのみなさんの反応を見ながら決める感じです。日本よりも海外のほうが子どもに見せてはいけないものはハッキリと決まっていて、「食物連鎖」というテーマで「宇宙人のうんちを食べなければ生き残れない」みたいな話にしようかと思ったら「うんちはダメ」だと(笑) あとは、ものを噛んだ時にニョロッと虫が出てくるシーンがあって、それが内臓に見えてダメだから色を変えようとか、そういうことはありましたね。

ウニョン
カートゥーン ネットワークとは異なる、表現のチェック機関がありそこから指摘が入るんです。制作チームはこれでOKだと思っていても、そのチェックが入るとNGになってしまいクリエイティブディレクターが一生懸命向こうに説明してくれました。

―食物連鎖というテーマはぼんやりと浮かんできたと以前おっしゃっていましたが、テーマはいつもどのように膨らませているのでしょうか。

湯浅
肉屋にかわいい豚の絵がポスターで貼ってあってりますよね。でもその豚は食べ物で。
子どもの頃にそうしたことに感じた疑問や矛盾みたいなものがはっきりしないまま大人になって、ぼんやりと自分の体の中にあるんです。子どもの頃はぼんやりとした疑問でしたが、環境の違いによって人の考え方も全然違うんだということが大人になってからは面白いと思えるようになってきて、今回もそういうお話ができればいいなと思いました。

―確かに「フードチェーン」を見た後は、「もしも自分が食べられる側になったら?」と子どもたちはふと考えるかもしれません。

湯浅
それで悟ったような気分になるけれど、ひっくり返すように最後には「だから何なの」「くだらな~い」と言われるような展開が待っている。それが『アドベンチャー・タイム』っぽいというか。シュールな展開になっていますね。

―『アドベンチャー・タイム』の一番の魅力は何でしょうか。

湯浅
特にキャラクターデザインですかね。どのキャラクターも見た目も内容もすごく面白く作られていて、観る側もいいけど「こういうのを作れたらいいな」「作る側になりたいな」という気持ちがわいてくるんです。
日本でもこういうキャラクターっていると思うんですが、なかなかそういうのはアニメで売れないと思われているのかもしれません。キティちゃんも遠くないと思うんですよ、『アドベンチャー・タイム』はちょうどキティちゃんが冒険しているみたいな感じにも似ているんじゃないかなと。でも日本だと、ファンシーなものはファンシーなもので、アニメはもっと現実的な路線を求められる傾向があると思います。


―どのキャラクターも可愛くてそれぞれ個性的ですが、お気に入りのキャラクターはいますか?

湯浅
やっぱりジェイク。いろんな形に変形できて、そのバリエーションがすごいです。アートブックを見ていても一番楽しくて。フィンもいいけれど、ジェイクかな。

ウニョン
私はフィンが好きですね。優しい心を持っていて、「俺はヒーローだ!」といばったりせず本当に普通の優しい子なんです。そこにリアル感があっていいなと思います。

―最後に、読者にメッセージをお願いします。

湯浅
お正月の1月3日に放送されるのでぜひ見てください。この日の放送はこれまでの『アドベンチャー・タイム』が全部わかるような内容になっているので、見たことがない人でも楽しめると思います。

ウニョン
頑張って作ったので楽しんで欲しいです。いつもの『アドベンチャー・タイム』とは制作手法が違っていて、全部フラッシュアニメになっています。
これまでの放送と何が違うのかチェックしながら見ていただけるともっと楽しめるはずです!

―今日は、ありがとうございました!

Newエピソード放送記念! アドベンチャー・タイムSP
1月3日(土)21:00~25:00

アドベンチャー・タイム Newエピソード
1月4日(日)スタート 毎週土曜・日曜 21:00~22:00

アニメ専門チャンネル カートゥーン ネットワークにて放送
http://www.cartoonnetwork.jp/cn_programs/microsite/00483
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