原作は1996年から2004年まで「週刊少年ジャンプ」で連載された高橋和希のマンガだ。主人公の武藤遊戯が「千年パズル」を解いたことにより、自分の中にもう一人の遊戯“闇遊戯”が現れたことから物語は始まる。トレーディングカードゲームとして一大ムーブメントを巻き起こし、テレビアニメ化もされた。アニメはシリーズ化され、2015年より第5作遊☆戯☆王ARC-V』が放送中だ。連載から20年の時を経ても、幅広い展開を続けるシリーズである。
そんな『遊☆戯☆王』の魅力を探るべく、アニメ!アニメ!では当時または最近までカードで遊んでいたという編集部とライターで座談会を実施した。参加者はアニメ!アニメ!編集部のタカロクと沖本、インサイド編集部の栗本、ライターの片山の4名。その座談会の様子をお届けする。
[取材・構成:タカロク]
劇場版『遊☆戯☆王 THE DARK SIDE OF DIMENSIONS』4DX&MX4D
http://www.yugioh20th.com/
■「遊びに行こう」が『遊戯王』をすることだった時代
タカロク
『遊戯王』連載開始時は小学1年か2年生ぐらいでした。沖本さんもほぼ同じくらいですよね。
沖本
ええ、僕は90年生まれで、だいたい小学3年生ぐらいから周りの友だちが「遊☆戯☆王カード」を一斉にやり始めたと記憶しています。あの頃は本当にみんな夢中になってましたね。
栗本
いつだったか明確に覚えていないんですが、小学生の時点でカードは持っていた気がします。
片山
94年生まれなんで、始まった時は2歳でしたね…。
でも、最初にパック買った時のことは覚えてるんですよ。親戚のお兄さんが『遊戯王』の前のカード(※)を集めていたのを見ていて、欲しかったんです。その時サッカーをやっていたんですが、サッカーに行く時に寄ったコンビニに売っていて、母に買ってもらいました。そこが多分最初です。
※オフィシャルカードゲーム展開以前、バンダイから発売されていた「遊☆戯☆王カードダス」のこと。
沖本
僕もカードダスの頃から遊んでました。その頃はまだ召喚システムもなくて。
栗本
「遊☆戯☆王カードダス」は確か友達のお兄ちゃんがもってて、まだルールを理解できない歳だったのか、星の数で闘うというムリゲーを強いられていました(笑)。駆け引きも何もなく数の暴力で葬られるという……。
タカロク
私は確かクラスの男子が遊んでいるのを見て『遊戯王』を知ったような気がします。
片山
そもそも女性が『遊戯王』に触れるって珍しいですよね。
沖本
当時、まわりの友だちはみんな「遊戯王」カードに夢中になってたけれど、女性のプレイヤーはほとんどいなかったような……。
タカロク
男子って公園とか…ちょっとした屋根のある東屋のベンチの上とかでやってましたよね。
片山
めっちゃやりました!突風が吹いてカードが飛んでいくという…盤面を思い出すために、ずっと悩んでました。あとカードがベンチの間に入ったり。
栗本
ドッジボールのボール、遊戯王カード、携帯ゲームが当時の僕らの三種の神器みたいな感じですね(笑)。とりあえずみんな公園に集まるので、それから何をしよう話し合ってたような気がします。
沖本
公園でいうと、「俺すごいカード持ってるぜ」と言って子どもに混じって遊ぶ“遊戯王お兄さん”とか“遊戯王おっさん”がいましたね。
タカロク
TCGあるあるだ~。女子としてはそういうのを見て「また男子『遊戯王』やってるよ~」って言って通り過ぎます。興味はあってカードは買ったりしてましたが、さすがにデュエルはできなくて…。
栗本
あとこれもあるあるだと思うんですけど、カード効果の認識がみんな違うんですよ!例えば「血の代償」。
タカロク
ローカルルール(笑)そもそも当時って、「遊戯王」知らない人がいなかったですよね。
沖本
「遊戯王」で遊ばなくて何で遊ぶの? ってぐらい。
栗本
子供のころのコミュニティって凄く狭いですからね。持ってなかったら仲間はずれに……。
タカロク
それで、当時デュエルしていてどうでした?
沖本
バトルに勝つと「あいつスゲー!」となるので、とにかく良いカードを集めようと躍起になってましたね。おこづかいやお年玉を全部カードにつぎ込んでました。
栗本
とにかく上級生にボコボコされてました(笑)。やっぱり上級生の方がお金持ってるので、デッキ強いんですよ。因みに最初の方はパック買いしかしてなかったんですが、上級生たちが「俺たちしかいけない特別な場所があるんだぜ」とカードショップなる存在をほのめかしてですね……。そのショップはいわゆる区域外にあったので知る由もなかったんですが、何とか交渉して連れて行ってもらえるようになったんです。
片山
お気に入りのカードとかありました?
沖本
「人造人間-サイコショッカー」ですね。相手の罠カードを封じるので、当時めちゃくちゃ強かった。あとは「心変り」。
タカロク
「心変り」は今禁止カードになってますね。私は「5D’s」からはまったので、「レッド・デーモンズ・ドラゴン」とか…あと劇場版にも出た「破壊竜ガンドラ」とか「サイレントソードマン」も好きですね。
栗本
当時は機械族デッキを使ってたので「パーフェクト機械王」とかですね。
片山
そういえばルール覚えたての時に、アニメとルールがごっちゃになったりしてましたね。「オベリスクの巨神兵」とか。他にも同じコンボをやろうとしたら、ライフポイントを払わなきゃいけなかったり…。思い入れのあるカードは、あと「オシリスの天空竜」とかですね。
栗本
アニメ版のルールは凄かったですからね……。
タカロク
特に三幻神はアニメでインパクトがありましたからね…全然関係ないですけど、「オシリスの天空竜」見るたびにどっちの口でご飯食べてるんだろう…って。
片山
開いてるほうじゃないですか?上は飾りかなって
タカロク
飾りか~。でも関節とかの関係で下が開いてると上は閉じちゃうのかもしれないですね。
タカロク
あと『遊戯王』のカードって、当時のTCGではイラストがリアルよりでしたよね。子ども心的にはもっとかわいいカードだったらなぁとか思ってましたけど。
沖本
僕は逆に、ダークでどこかおどろおどろしいあのイラストが好きでしたけどね。どこか大人っぽさを感じて。
栗本
そこは同感ですね。その一方で「ブラックマジシャン・ガール」とかもいるわけで。
片山
「サクリファイス」とか…おどろおどろしくて、惹かれました。ペガサスが使うやつなんですけど。あと「ダークネクロフィア」とか「ウィジャ盤」とか。
(次ページ:カード、マンガ、アニメ『遊戯王』に触れたきっかけとは?)
■カード、マンガ、アニメ…『遊戯王』に触れたきっかけ
タカロク
カードの話から始めましたけど、やっぱり皆さん『遊戯王』の入口はカードだったんですか?
栗本
とりあえずマンガではなかったんですが、アニメとカードならどっちが先かは覚えてないですね……。ただ『遊戯王』を好きになったきっかけ間違いなくカードです。もちろんアニメも好きでしたが、いちデュエリストとしてアニメを見ていた気がします。
片山
僕はアニメでした。買い始めて二年ぐらいはルール知らなくて、ただカードを集めるという…真似っこがしたかったか分からないですけど、アニメを見て「かっこいいなこれ!」って思って集めてました。海馬とか遊戯とかかっこいい対象でしたね。憧れというか。
栗本
『遊戯王』のマンガやアニメって、そのかっこよさが凄いと思うんですよ。例えば「ブラック・マジシャン」を主人公にしたアクションものも作れたはずなんですが、そうじゃなくてデュエリストたちの物語をかっこよく描いた。そこに凄く惹かれました。
沖本
僕ははまったきっかけはマンガでしたね。カードが中心になる前の「闇のゲーム」の頃から好きでした。
タカロク
その時の原作は、ちょっと怖いって思ってました。「闇のゲーム」とか、闇遊戯とか…この人なんなんだ?って。二重人格なのか?とか色々考えて…「三つ目がとおる」(※)みたいな怖さが。
※1974年から1978年まで「週刊少年マガジン」に連載されていた手塚治虫のマンガ。
沖本
初期の頃が特にそうなんですけど、遊戯の中二的なカッコよさに惹かれてました。普段は気弱で引っ込み思案なんですけど、闇遊戯になると一転して、容赦なく悪人を制裁していくダークヒーローになるという。
タカロク
私は『遊戯王』に本格的にはまったのが結構後で、『遊☆戯☆王 5D’s』がきっかけなんですけど…皆さん小学校卒業してからって『遊戯王』やってました?
片山
高校でやってましたが…中学生になってから、一度『遊戯王』やめてるんですよ。
沖本
僕も同じです。中学に入ったあたりからパッタリとやめてしまいました。部活も始まって遊ぶ時間もあまりなかったし、「卒業しなきゃ」という気持ちもどこかにあって。ただ、高校で復帰してる人は多かったですね。
栗本
あーみんな同じなんですね。同じく中学生でカードの方はやめちゃいました。というのも、俺にとって遊戯王をメインで遊ぶ場所って公園だったんですよ。でも高校生になると公園で遊ばないじゃないですか。その影響が大きかったと思います。ただアニメはずっと見てましたよ。
片山
僕は高校入って、『遊戯王』やってる奴らに会って「やろうぜ!」ってなりました。そこでコミュニティが復活したんですよね。学校終わった後食堂で、8人ぐらいでデュエルしてました。
タカロク
ということは高校も結構『遊戯王』に捧げてました?
片山
そうですね…そこから続いて、最近は少し控えてますけどずっとやってますね。
タカロク
やっぱり友達の影響ってありますよね。
片山
そうですね。そもそもカードゲームとかデュエルは、一人じゃできないじゃないですか。相手がいて初めて成立するから…「やってるんだ、じゃあ俺もやってみようかな」って思いましたね。
栗本
これ言うと悲しい少年になってしまうんですが、イメージトレーニングというか……シャドーボクシング的な感じで一人デュエルをよくやってましたよ(笑)。まぁ効果あるかは怪しいんですが。
タカロク
私ははまったのが大学の時で、当時放送していた『遊☆戯☆王 5D’s』のカーリー渚というキャラがきっかけでしたね。瓶底メガネで、語尾に「なんだから!」がついてる「今時こんなキャラいるのか」と思うような女の子なんですけど。その後改めてマンガやアニメを見て、大好きになりました。
しかも偶然大学の友人が弟の影響で自分のデッキを持っていて、デュエルできる子だったのでそのまま「デュエルしよう!」という流れに…。
片山
すごいですね!そこまでつながるのがすごい。
タカロク
運が良かったです。なので大学のロビーでデュエルしてました。演劇科や音楽科がある大学だったので、「ドロー!」とか「私のターン!」とか言っててもあまり目立ちませんでした。
片山
「5D’s」といえばライディングデュエルですね。
タカロク
あれは衝撃的でした。バイク乗りながらデュエルは…と思いながらもどんどん好きになっていきました。
片山
過去のファンからしても、「バイク!?」って感じで、一体どうしたのかと思ってました。
タカロク
バイクの速度によって強さも変わりますしね…あと当時はニコニコ動画でもブームが起こっていたので、ネタ的な面白さはそこで教わりました。しかしこう話してると、「遊戯王」は人生に影響を与えてますね。
片山
主に金銭面が…(笑)
栗本
うん……だいぶ注ぎ込んだ気がします。
タカロク
(笑)でも、その分いろいろ楽しい思い出とか。
片山
かけがえのないものは、ありますね。得たものは多いです。友達もそうですけど、それで出会った人もいっぱいいるので。
コミュニケーションツールとしてすごく優秀なんですよね。カードゲームって。「遊戯王」が流行って、みんなが知ってるものっていう前提なんですけど、それを介して知らない人と出会って、仲良くなったり…。大会とか行っても、初めてあった人に「そういうカード使ってるんですね」とか話したり。
栗本
あとカードバインダーの見せ合いも盛り上がりますよね。「これ持ってるんだ!」とか「これとこれ交換しようよ」とか、見知らぬ人とでも普通に話できる。
タカロク
世代を超えてコミュニケーションを取れますよね。私も『遊戯王』をきっかけに色々な出会いがあったので、はまらなかったら今の自分はいないです。
沖本さんは中学で離れたけど、高校生とかで復帰して続けてる人とかはどう思います?
沖本
そうですね……。教室でワイワイデュエルしているのを見て、「俺も昔やってたなぁ……」と懐かしい気持ちにさせてくれるなと。
片山さんやタカロクさんに比べると、僕は“卒業”してしまっているので、そういう人に向けて「今面白いよ!」というおすすめポイントを教えてほしいです。
片山
昔のテーマが復活してるところですかね。懐かしいなって思うカードあるじゃないですか。「青眼の白龍」とか「ブラック・マジシャン」とか…それが今すごく強くなってるんですよ。古いカードってどうしても新しい環境になるにつれ廃れていってしまうんですけど、それが新しいカードを投入したことによって、強いデッキとしてちゃんと成立するんです。昔やっていた人にとっては「まだこれ使えるんだ」っていう入口の一つにはなる。
タカロク
今でも「青眼の白龍」とか当たると嬉しいですよね。
片山
そう、デッキに入れないけど嬉しい!テンションは上がりますね。
(後編に続く)