そんなある日、父が再婚。藤井家に新しい母とともに現れたのは、なんと陽菜・瑠衣姉妹で――。
ひとつ屋根の下で暮らすことになった男女の複雑な関係を描く、流石景のマンガ『ドメスティックな彼女』がTVアニメ化。2019年冬アニメとして1月11日より放送がスタートした。
そこで、アニメ!アニメ!では、橘瑠衣役・内田真礼さんと橘陽菜役・日笠陽子さんにインタビュー。作品やキャラクターの印象から、TVアニメ“袋とじver.”本編映像付き特装版コミックスに収録されるという“もっと過激なシーン”の収録についても聞いてみた。
[取材・構成=松本まゆげ/撮影=YOU ISHII]
■「結構やる気だな……」あの過激シーンも映像化
――おふたりがこの作品を知ったのはいつですか?
内田
前にボイスドラマをやっていて。私たち、そのときから演じていたんです。なので、私はそのタイミングで読みました。
日笠
確か、4年くらい前だよね?
内田
収録したのは、コミックスが出てない頃だったんですよ。誌面に載ったものをコピーしてくださったので。
――そこで触れてみて、どんな印象を持ちましたか?
内田
この作品って、キャラクターたちが会話することで物語が進んでいって、成長していくんです。
だからこそ悩みも生まれると感じて、とても共感しました。
「いなくなっちゃうかも」という予感があって、そのタイミングでまた恋愛が動いていたりして。読んでいるとわーっ!となりますね(笑)。
日笠
私も、心の機微や感情によってストーリーが進んでいくように感じました。限られた世界で繰り広げられる昼ドラみたいなドロドロはもちろん、流石景先生ご本人の明るさが出ているのかギャグシーンも散りばめられていて。
サブキャラクターと呼ばれる人たちにはすごく明るい人が多いので、そこで救われています。闇に持っていかれ過ぎず、うまくバランスを取っている作品だなと思いますね。
――そうしてボイスドラマから関わってきた作品が、ついにTVアニメになりました。
日笠
2017年の秋くらいに教えてもらいました。「(アニメの収録がはじまる)来年はよろしくお願いします」って言っていただいたのと、「過激なシーンもありますけど、どうしますか?」みたいな確認はありました。
本作に限らず、セクシャルな作品にはよくあることなんですけどね。
そうして、「では、アニメで描くMAXのシーンを送りますね」って言われて観てみたらそれがもう、す、すごいシーンで(笑)! あ、結構やる気だなってなりましたね。
本当に、これ以上のシーンないよ!っていうくらいだったので。
内田
本当にそうでしたね(笑)。私も過激なシーンどうするんだろう?って気になっていました。
前に演じたことのあるキャラクターとはいえ久しぶりだったので、演技という意味でも不安もありましたね。
でも、瑠衣って私にとって挑戦的なキャラクターでもあるんですよ。
なので、ドキドキしながらもわりと前向きというか、やるぞ!という気持ちに溢れていたと思います。
――過激なシーンは、原作ファンも気になっているところだと思います。
日笠
でも原作を読ませていただくと、そこに特化しているわけじゃないということがわかるんですよ。基本的には少年少女の心の機微や人間ドラマがメインだったりするので。過激とはいうけど、さほど大きな問題ではないなとは思いましたね。
――それに、ボイスドラマの役を引き継げるというのも、「やってみよう」と背中を押しますよね。
日笠
そうなんですよね。ボイスドラマって、アニメになるタイミングでガラッと変わることが多いですけど、聴いてくださる方含め「そのままのキャストで」と思ってくださっていたのがすごく嬉しくてありがたかったですね。なので二つ返事でした。
■「陽菜は大して大人じゃない」(日笠)
――それぞれ演じるキャラクターに、共感できるところはありますか?
内田
高校生ってまだ分からないことも多くて、子どもで、成長段階でもあるので、周りが自分の知らないところでどんどん動いていくのを「どうにかならないかな」ってモヤモヤしているところとか、「自分も大人になりたい」と思っている思春期の感じは分かります。
周りは自分より年上の人ばかりですから余計にでしょうね。
――そういう時期って誰しも通りますもんね。
内田
何やっても嫌だとか、柊さん(萩原柊/陽菜と深い関係にある研究者)への嫌悪感だとか、観ているとそりゃあそうだよねって思います。普通に高校生なんですよね。
日笠
私はどうなんだろうな……。陽菜はすごく明るくて誰もが憧れる先生で、男性には人気で、仕事とそれ以外のオンオフをきちんと変えられるし明るい性格なんですけど、柊さんと出会ったことでモヤモヤグチャグチャしたんです。
自分でも知りたくなかったことを引き出されてしまったというか。
日笠
私自身は楽しいほうが好きで明るい人間だと思うんですよ。
でも柊さんと会ったときのような、“頭では分かっていても心が追いつかない瞬間”は、誰しも経験があると思うんですよね。そのへんはわかりますね。
――では、そんな役を通して夏生と関わったおふたりに聞きたいのですが、夏生のことはどう見ていますか?
内田
瑠衣からすると、兄妹っぽいなと思います。
一度“そういうこと”はあったけど、男女の意識をするより先にひとつ屋根の下で暮らすことになってしまったので、家の中に「ひとり心を許せる人ができた」感じかなと。
そこまで心を許している描写が作中にたくさん出てくるわけではないですけど。
徐々に仲良くなっていくことで、「いいやつ」になってきましたね。私自身、演じていて好きっていうのはまだあまり……。
日笠
まだそこまでいってないのかもね。今は「思ったよりいいやつ」。
内田
そうですね。なんとなく好きという感じではない。
でも、夏生が他の人といるのを見るとモヤモヤするんです。彼氏ではないけど、「あれ、私は?」「私いろいろやってるのにな~」っていうのはあると思いますね(笑)。
今のところは陽菜姉のことが好きな夏生を応援している感じです。内田真礼目線で言うと。
――では日笠さんはどうでしょう?
日笠
先を知っているので、「お前この野郎!」みたいな感じはあります(笑)。この先アニメでどこまで描かれるかは分かりませんけど、アフレコしている段階ではものすごくピュアな子で、高校デビューで、フミヤとは双子みたいな感覚じゃなかろうかと(笑)。
内田
見た目は変わったんですけどね。
日笠
そうそうそう。だから男女関係はまだまだ子どもというか、それより前のひよっこちゃんなんでしょうね。
右往左往するし、もも(柏原もも/瑠衣のクラスメイト)について行っちゃうのもひよっこだからなんですよ。
内田
「付き合っちゃおうかな~。この子でいいかな~」。
日笠
「だってよくわかんないんだも~ん」。みたいなところはありますよね(笑)。
――女性目線で見るとイラッとするところですね。
日笠
そこがリアルですよね。陽菜の目線で観ると、子どもに見える部分はあるので「大人の世界は違うのよ」って言ったりするんですけど、陽菜も大して大人じゃないんです。
大人になり切れてないからハッキリもできないしグレーにも行けない。子どもに「子ども」って言っちゃうのって子どもじゃないですか。
――確かに。
日笠
それは、自分が子どもなのをどこかで分かっていて、大人になり切れてないモヤモヤを八つ当たりしているふうに見えていますね。
――今回姉妹役を務める内田さんと日笠さんですが、ふたりでいるとき姉妹っぽくなったりしますか?
内田
私自身お姉ちゃんなので、「お姉ちゃんお姉ちゃん!」って甘えたりできないんですよ。
私と日笠さんの関係で言うと、陽菜の明るさを日笠さんから感じるから、私はそのぶん瑠衣みたいに静かになりますね(笑)。
日笠
ときどき不思議に思うんですけど、私がお姉ちゃんになるときもあれば。真礼がお姉ちゃんになるときもあるんですよ。
この前、佳村はるかちゃん(もも役)と3人でご飯に行ったときは3姉妹感があったかもしれないです。
――入れ替わるところが姉妹っぽいですね。
日笠
あ、そうかもしれないですね。瑠衣も、得意な料理のことになれば陽菜よりお姉ちゃんになるときもあるし。できることが違いますからね。
内田
瑠衣にはできない人付き合いを、陽菜がやってくれますからね。
日笠
ちゃんと補い合っている感じしますよね。
■アフレコ舞台裏は……?
――アフレコは後半に差し掛かっていると聞きました。現場の雰囲気はいかがですか?
日笠
明るいよね?
内田
明るいですね! みんなで話をしている感じがあります。
――ムードメーカーは、明るい日笠さんですか?
日笠
それが、意外と江口拓也くん(フミヤ役)なんです。いろいろ話してくれて、話題に事欠かないんですよ! 八代拓くん(夏生役)と一緒にね。仲良いんだろうね。
内田
そうみたいですね。
日笠
ずっと喋ってますよ。何度も共演していても、男性陣の関係性とか女性陣の関係性には意外と知らないことがいっぱいあったんですよ。そこまでガッツリ話すことはないので。
この作品の場合、出演者が少ないというのもあると思いますけど、まとまって話しています。
あと、アフレコにすごく力が入っていて時間をかけて録っているんです。
大体2~3時間で終わる作品が多いんですけど、その倍くらい一緒にいるので自然と話しますし、仲良くなりますね。
内田
いち視聴者みたいな感じで、キャラクターの言動についてあれこれ言うのがお決まりです。
日笠
男性目線ってこうなんだみたいな発見があります。例えば、陽菜のことを「本当にずるい!」って言いますよ。
内田
そう、「ずるい」って言うんですよね。発見でした。
日笠
あと、ももは「いるいるこういう子!」で、柊さんは「サイコパス」とかね。魔法を使ったりする非現実的な作品ではないので、身近に感じられて盛り上がります。
――いい雰囲気なのが伝わってきます。ともあれ、今後発売されるパッケージの特典映像収録は、いつもよりさらに緊張感が漂ったのでは? 初体験のシーンが本放送より少し長くなっていると聞きましたよ。
内田
そのシーンは、(八代と)ふたりだけ居残ってやりました。「ほかのみなさんはお疲れ様でした~」みたいな。なかなかないパターンなので、テストで探りながら収録しました。
しかも、ディレクションもあまりなくてほぼおまかせ状態だったんですよ。
――それはそれは。不安も増しますね。
内田
逆にどうしよう! でしたよ。拓くんも同じ感じでしたね。
で、無音で、絵があって、っていう状態。
日笠
そういうときって、まわりが気をつかってくれるんですけど、それがまた心苦しいんだよね? 生々しいから。
内田
そうなんですよ! ギャグじゃないから。難しかったです。
――でも、それが最初のほうに言ってくださった「挑戦」だったんですね。その特典映像も注目ですが、ひとまずはTV放送の第1話です。最後に見どころを教えてください。
内田
ドキドキすると思います。
BGMも凝ってて、そこもドキドキポイントですが、キャラクター同士が話している間とか静かになる瞬間とかの“温度感”です。人間臭くてドキドキすると思います。
第1話からそういうところも楽しめるので気になったらぜひ観ていただきたいです。
日笠
男女を描くうえで、そういうシーンって最終話にあるべきなんですよ。でも第1話でそういうことが起こっちゃって、この先どうなるんだ! と展開が気になると思います。
原作を読んでいる方は知っていると思いますけど、初めて見る方はどういう物語になっていくのか注目してほしいです。好きという気持ちは制御できるものではないんだなと、甘酸っぱい気持ちを思い出してもらいたいですね。
好きが巻き起こす昼ドラ感だとか誰かひとりが悲しい思いをする瞬間とか、どこに感情移入するかで恋愛の見方って変わると思うので、楽しんでいただきたいです。
■放送情報
MBS 毎週金曜深夜1:55~
TBS 毎週金曜深夜1:55~
BS-TBS 毎週土曜深夜1:00~
AT-X 毎週月曜22:00~
(リピート放送:毎週水曜日 14:00/毎週土曜日 6:00)
ITV 毎週木曜深夜 1:36~
ATV 毎週月曜深夜 1:28~
■配信
Amazon Prime Video にて放送に先駆けて日本独占配信
■スタッフ
原作:流石 景 (講談社「週刊少年マガジン」連載)
監督:井畑翔太
シリーズ構成:高橋龍也
キャラクターデザイン:井出直美
美術監督:魏 斯曼 / 美術設定:高橋麻穂
色彩設計:林 由稀 / 撮影監督:伊藤康行
編集:小島俊彦 / 音響監督:立石弥生
音響制作:ビットプロモーション / 音楽制作:フライングドッグ
音楽:甲田雅人 / アニメーション制作:ディオメディア
■キャスト
橘 瑠衣:内田真礼 / 橘 陽菜:日笠陽子 / 藤井 夏生:八代 拓
柏原 もも:佳村はるか / 葦原 美雨:小原好美
藤井昭人:飛田展男 / 橘都樹子:日野由利加
栗本文哉:江口拓也 / 柾岡悠弥:益山武明 / 木根和志:梶原岳人
桐谷怜士:緑川光 / 萩原柊:平川大輔 / 小林昌樹:津田健次郎
■音楽
オープニングテーマ:「カワキヲアメク」美波
エンディングテーマ:「わがまま」瀧川ありさ
(C)流石景・講談社/ドメカノ製作委員会