『僕のヒーローアカデミア』に登場する緑谷出久(デク)と爆豪勝己は、幼なじみであり、ヒーローを目指して共に雄英高校で日々励む。幼少期から続く関係性や、それぞれの思い描くヒーロー像の違いもありぶつかり合う姿が作中では見られたが、12月20日に公開された『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ヒーローズ:ライジング』では、そんなふたりが最凶の敵を前に、ヒーローとして共闘するシーンが見どころのひとつ。
様々なエピソードを経て成長しているからこそ、今回の劇場版で初めて見せるふたりの協力する姿を楽しむことができる。
劇場版のアフレコを振り返った爆豪勝己役・岡本信彦は「かっちゃんは認めたくないでしょうけど、デクの存在はやっぱり大きい」と、成長の理由を口にする。
一方、緑谷出久役の山下大輝は「デクはずっと『なんでかっちゃんは会話をしてくれないんだろう』と理由を探していたと思う」と、爆豪への向き合い方を語る。
TVアニメシリーズ、そして劇場版を経てふたりはどう変化したのだろうか。岡本が苦労したと語るとあるシーンや、山下が心がけたゲストキャラとの距離感など、劇場版の演技が生まれた裏側に迫った。
[取材・構成=ハシビロコ、撮影=小原聡太」]
※本稿では『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ヒーローズ:ライジング』の内容に一部触れている箇所があります。
■爆豪が“いい人”になった理由
――長い間デクと爆豪を演じているおふたりですが、劇場版を経てキャラクターの印象は変わりましたか? とくに爆豪は初期と比べて、様々な変化も見られますが……。
岡本:劇場版ならではの“ジャイアニズム”はあります。荒くれものも劇場版ではいい人になるのが鉄則といいますか。
今回、かっちゃんの中にあるヒーロー像が少し変わってきたのかな、と感じました。「勝って助ける」と作中で言っていますが、以前は「勝つ」だけだった。そこに「助ける」が入ったおかげで、何かを支えようとする部分が生まれたのかな、と。
これまでは困っている人がいても「うるせぇ!」と言って見捨てることもあったので、TVアニメシリーズ初期に比べると成長していると思います。
――やはりデクの影響が大きいのでしょうか。
岡本:そうだと思います。本人は認めたくないでしょうけど、デクの存在はやっぱり大きい。
デクが「助ける」と言い続けていたので、かっちゃんの中にもいつの間にか刷り込まれていたのかなと。
山下:刷り込み(笑)。
岡本:あとはオールマイトに自分を理解してもらえたことが精神的支柱になっている気がします。
――これまでのTVアニメシリーズと比べて、劇場版を演じるうえで気持ちの変化はありましたか?
岡本:「デクVSかっちゃん2」(TVアニメシリーズ第61話)以降、かっちゃんはデクの実力や背負っているものを認めています。だからこそ、ふたりがちゃんと会話している雰囲気を出そうと思いました。
今まではデクと話していても対話をできずに、怒号を飛ばしたり殴ってしまうことが多かったのですが、今回は言葉でわかり合おうとしている部分もある。かっちゃんの自尊心は高いままですが、以前よりも心に余裕が出てきたと思います。
――デクとしても、爆豪との向き合い方に成長が感じられます。
山下:そうですね。でも最初から、かっちゃんと協力しようとする姿勢は変わっていません。デクはずっと、「なんでかっちゃんは会話をしてくれないんだろう」と、理由を探していたんだと思います。
「デクVSかっちゃん2」(TVアニメシリーズ第61話)のときにかっちゃんの想いを聞いて、納得すると同時に、「だったらより一層真正面からぶつからないとダメだな」と。
それまで抱えていた迷いがなくなって、本当の意味でまっすぐ向き合えるようになったんだと思います。
「ヒーローってこんなに素敵なものなんだよ」と伝えるために
――今回の劇場版で、印象的だったシーンを教えていただけますか?
山下:やっぱり活真くんとの会話は難しかったので、印象に残っています。
岡本:子どもとの会話という意味では、TVアニメシリーズ第3期の合宿先で出会ったヒーロー嫌いの洸汰くんとの違いを出すのは大変そうだったね。
山下:洸汰くんのときは、「とにかくこの子を守らなきゃ!」と、デク自身に余裕がない状態でした。
それに対して活真くんはヒーローにあこがれを抱いているし、出会いからお互いにフランク。でも一歩踏み出せない活真くんをどうにかして後押しできたらいいな、と思っていました。ヒーローってこんなに素敵なものなんだよ、って教えてあげたくて。
演じるうえでは、デクらしく励ますにはどうしたらいいんだろう、と考えました。
デクも活真くんのように自信がなかった人間なので、気持ちのうえでも寄り添えたらいいな、と。
――無個性でもヒーローになれるかを悩んでいたデクと、ヒーロー向きの個性ではないと夢を諦めようとする活真くん。たしかに重なる部分もありますね。
岡本:活真くんの個性って本当は超強いんです。ナインが喉から手が出るほど欲しがる力ですから。
山下:細胞を活性化できるなんてチート級の“個性”です。ボロボロになったとしても細胞を活性化して治せばいくらでも戦えますしね(笑)。
岡本:ワン・フォー・オールの後継者にしたほうがいいくらい、主人公向きの個性です(笑)。
→次のページ:悪ガキだったからこそわかる子ども心
悪ガキだったからこそわかる子ども心
――爆豪が活真くんの姉・真幌ちゃんに懐かれていくことも印象的でした。
岡本:真幌ちゃんは最初かっちゃんのことを警戒していましたが、途中から「爆豪!」って呼ぶほどに打ち解けていました。
――爆豪は子どもと接するとき、どんなことを考えているのでしょうか。
岡本:完全に子ども扱いをしていますが、自分がかつて悪ガキだったからこそ、真幌ちゃんのように素直になれない子どもへの理解はある気がします。
ただ、今は接し方が自己流なので力で押さえつけてしまうこともありますが……。これから成長していくと、子どもに対しても、もっとうまい接し方ができるようになりそうです。
今回は劇場版だからこその優しさと、かっちゃんの成長がかみ合った気がします。
ツンデレにも見えるんですけど、本人の中では大人になった証拠というか。経験をどんどん積んでいったからこそできた接し方だと思います。だから優しく見えているのかな。
台本をもらって「終わったな……」と思った
――TVアニメシリーズも放送中のタイミングの劇場公開となりますが、劇場版のアフレコ収録はいつ行ったのでしょうか?
山下:TVアニメシリーズ第4期終盤のアフレコをしている時期でした。劇場版の時系列はTVアニメシリーズ第4期よりもあとなので、原作を頼りにデクたちのイメージをふくらませました。
――12月5日の完成披露試写会では、岡本さんが「アフレコに10時間かかった」とおっしゃっていました。
完成披露試写会の模様
岡本:いやー、長丁場でした。
山下:10時間集中し続けることって、普段はあまりないので……。その間ずっと気持ちを維持しないといけないんです。
――しかも終盤のアクションシーンではかなり叫んでいますからね。
岡本:アクションシーンに関しては、絵が完成していなかったので正直アフレコ時点でわからないことが多かったんです。だから後日、再アフレコをして、まんべんなく録り直しました。
山下:仮映像でのアフレコは予想でしかなかったので、完成した映像を見てその迫力にびっくりしました。
――爆豪はずっと叫んでいるので、アフレコも相当大変だったと思います。
岡本:台本を読んだ時点で「喉が終わったな」と思いました。だからアフレコ当日も「声がなくなったらどうしよう……」と思いながら行ったんです。
でも、無事に演じ切れたのでホッとしました。これも運やコンディションに恵まれたからこそだと思います。
個人的には、アフレコ後にキャスト4人とディレクターさんと一緒に焼き肉を行けて満足でした(笑)。
――やっぱりそこは好物の肉なんですね(笑)。
岡本:疲れた喉に染み渡りました(笑)。
山下:肉を食べてからのほうが、声がよく出たくらい(笑)。
■苦労した共闘シーン
――作中でデクと爆豪が共闘するシーンはファン的に嬉しいポイントでした。
山下:アフレコ終盤に録ったシーンだったので、集中力を保つのが大変でした。一般的に最後に録るシーンって、クライマックスだから良いシーンが多いんですよね。
岡本:ラストバトル前にかっちゃんとデクが手を伸ばしあうシーンは、苦労して何回か録り直しました。距離感が難しくて、最初は声を近くに投げてしまったんです。
山下:僕もそうでした。それで「もう少し遠くに向かって声を届けてほしい」と音響監督の三間(雅文)さんからディレクションがありました。
だから録り直すときは「もっと手を伸ばそう!」と意識しましたね。実際に手は届かないかもしれないけど、届かせるような気持ちで演じました。
――完成した劇場版を見たときのご感想はいかがでしたか?
山下:かっちゃんとデクが手を伸ばし合うシーンは、思っていたよりもふたりの間に距離がありました。撮り直したことで映像と声がハマったので、いいシーンになったと思います。
岡本:あと、ラストバトルでの共闘はやっぱり興奮しました。
山下:僕も絵の迫力がすごくてびっくりしました。
――劇場版のキャッチコピーにも使われていたふたりのセリフ「助けて勝つ」「勝って助ける」を思い出すシーンでしたね。
山下:過程は違えど、結果は同じなんですよね。
――ところで山下さんと岡本さん自身、デクや爆豪のように切磋琢磨しあっていることはありますか?
岡本:『ポケモン』です。でも遊び方が全然違うんです。
山下:僕はひたすらポケモンをゲットしているんです
岡本:でも僕は対戦ばっかりしている。
――バトル重視なのは、爆豪に似ているのかもしれませんね。
岡本:そうなんです、子どもの頃からずっとバトルをしていました。負けた相手に綿密に対策をして挑みます(笑)。→次のページ:雄英に来たらよかったのに
■「雄英に来たらよかったのに」
――デクと爆豪の倒すべき相手として立ちはだかる最凶の敵<ヴィラン>・ナインについてお聞きします。井上さんの演技はいかがでしたか?
岡本:ナインの声、めちゃくちゃよかった。
山下:ぴったりでした!
岡本:アフレコが別々だったので、先日の完成披露試写会で初めてお会いしたんです。とっても面白いお方で。
山下:クロストークも楽しかったですね。アフレコは僕らが先だったので、実は完成した映像を見るまでどんな声が来るのか知らなかったんです。
岡本:PVを見ると相当妖しく演じていて、抑えた感じがとってもナインっぽいと思いました。
山下:見透かせない感じですよね。
岡本:でもナインは可哀想な人です。
山下:“個性”を使えば身体を蝕まれる彼ですが、ほかにも方法があったんじゃないかと考えちゃいますよね。でもナインは誰も信じていないからこそ、自分の力だけで問題を解決しようと思ってしまう。
岡本:雄英に来たらよかったんです。リカバリーガールに「チユー!」ってしてもらえばいいのに(笑)。
山下:(笑)。生まれが悪かったとしか言えません。でもナイン自身は、本来すごくいい人だったと思うんです。仲間から信頼されていることからも、それが伝わってきますし。
岡本:死柄木弔や治崎廻のように恐怖で強いるカリスマもいますが、ナインはまだ仲間を恐怖させていない。だからこそ彼自身に、他者から見て信じるに足る一面があったんじゃないかと思います。
■見どころは「手の取り合い方」
――最後に、今回の劇場版の見どころについて、デクと爆豪の「ここを見てほしい!」というポイントをお願いします。
山下:アクションシーンで、ふたりが自然と共闘している姿です。会話はとくにしないのですが、お互いの考えを読み取って自然と連携している姿に、ふたりの信頼が見て取れます。
岡本:あと、ラストバトル直前のシーンです。かっちゃん自身、「こうしないとダメだ」と思ったからこそ、デクに手を差し出した。
原作の堀越(耕平)先生が「原作の最終決戦でやりたかったネタの1つ」と語っていたくらいのネタなので、やっぱり思っていました。
◆◆◆
ライバルとして真正面からぶつかり合い、ヒーローとして為すべきことのために共闘もできるようになったデクと爆豪。山下と岡本の会話からも、「この作品をいいものにしよう」と切磋琢磨して培われた信頼関係が伝わってきた。
『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ヒーローズ:ライジング』では、そんなふたりの熱演や、劇場版ならではのスケールで描かれるバトルを体感できる。ファン必見の展開をぜひ劇場で見届けてほしい。
様々なエピソードを経て成長しているからこそ、今回の劇場版で初めて見せるふたりの協力する姿を楽しむことができる。
劇場版のアフレコを振り返った爆豪勝己役・岡本信彦は「かっちゃんは認めたくないでしょうけど、デクの存在はやっぱり大きい」と、成長の理由を口にする。
一方、緑谷出久役の山下大輝は「デクはずっと『なんでかっちゃんは会話をしてくれないんだろう』と理由を探していたと思う」と、爆豪への向き合い方を語る。
TVアニメシリーズ、そして劇場版を経てふたりはどう変化したのだろうか。岡本が苦労したと語るとあるシーンや、山下が心がけたゲストキャラとの距離感など、劇場版の演技が生まれた裏側に迫った。
[取材・構成=ハシビロコ、撮影=小原聡太」]
※本稿では『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ヒーローズ:ライジング』の内容に一部触れている箇所があります。
■爆豪が“いい人”になった理由
――長い間デクと爆豪を演じているおふたりですが、劇場版を経てキャラクターの印象は変わりましたか? とくに爆豪は初期と比べて、様々な変化も見られますが……。
岡本:劇場版ならではの“ジャイアニズム”はあります。荒くれものも劇場版ではいい人になるのが鉄則といいますか。
今回、かっちゃんの中にあるヒーロー像が少し変わってきたのかな、と感じました。「勝って助ける」と作中で言っていますが、以前は「勝つ」だけだった。そこに「助ける」が入ったおかげで、何かを支えようとする部分が生まれたのかな、と。
これまでは困っている人がいても「うるせぇ!」と言って見捨てることもあったので、TVアニメシリーズ初期に比べると成長していると思います。
――やはりデクの影響が大きいのでしょうか。
岡本:そうだと思います。本人は認めたくないでしょうけど、デクの存在はやっぱり大きい。
デクが「助ける」と言い続けていたので、かっちゃんの中にもいつの間にか刷り込まれていたのかなと。
山下:刷り込み(笑)。
岡本:あとはオールマイトに自分を理解してもらえたことが精神的支柱になっている気がします。
――これまでのTVアニメシリーズと比べて、劇場版を演じるうえで気持ちの変化はありましたか?
岡本:「デクVSかっちゃん2」(TVアニメシリーズ第61話)以降、かっちゃんはデクの実力や背負っているものを認めています。だからこそ、ふたりがちゃんと会話している雰囲気を出そうと思いました。
今まではデクと話していても対話をできずに、怒号を飛ばしたり殴ってしまうことが多かったのですが、今回は言葉でわかり合おうとしている部分もある。かっちゃんの自尊心は高いままですが、以前よりも心に余裕が出てきたと思います。
――デクとしても、爆豪との向き合い方に成長が感じられます。
山下:そうですね。でも最初から、かっちゃんと協力しようとする姿勢は変わっていません。デクはずっと、「なんでかっちゃんは会話をしてくれないんだろう」と、理由を探していたんだと思います。
「デクVSかっちゃん2」(TVアニメシリーズ第61話)のときにかっちゃんの想いを聞いて、納得すると同時に、「だったらより一層真正面からぶつからないとダメだな」と。
それまで抱えていた迷いがなくなって、本当の意味でまっすぐ向き合えるようになったんだと思います。
「ヒーローってこんなに素敵なものなんだよ」と伝えるために
――今回の劇場版で、印象的だったシーンを教えていただけますか?
山下:やっぱり活真くんとの会話は難しかったので、印象に残っています。
岡本:子どもとの会話という意味では、TVアニメシリーズ第3期の合宿先で出会ったヒーロー嫌いの洸汰くんとの違いを出すのは大変そうだったね。
山下:洸汰くんのときは、「とにかくこの子を守らなきゃ!」と、デク自身に余裕がない状態でした。
それに対して活真くんはヒーローにあこがれを抱いているし、出会いからお互いにフランク。でも一歩踏み出せない活真くんをどうにかして後押しできたらいいな、と思っていました。ヒーローってこんなに素敵なものなんだよ、って教えてあげたくて。
演じるうえでは、デクらしく励ますにはどうしたらいいんだろう、と考えました。
上から目線で偉そうに話していると思われてもいけないし、ヒーローに対して「こんな風にはなりたくない」とは思ってほしくない。だからこそ、活真くんと目線を合わせて会話しようと意識しました。
デクも活真くんのように自信がなかった人間なので、気持ちのうえでも寄り添えたらいいな、と。
――無個性でもヒーローになれるかを悩んでいたデクと、ヒーロー向きの個性ではないと夢を諦めようとする活真くん。たしかに重なる部分もありますね。
岡本:活真くんの個性って本当は超強いんです。ナインが喉から手が出るほど欲しがる力ですから。
山下:細胞を活性化できるなんてチート級の“個性”です。ボロボロになったとしても細胞を活性化して治せばいくらでも戦えますしね(笑)。
岡本:ワン・フォー・オールの後継者にしたほうがいいくらい、主人公向きの個性です(笑)。
→次のページ:悪ガキだったからこそわかる子ども心
悪ガキだったからこそわかる子ども心
――爆豪が活真くんの姉・真幌ちゃんに懐かれていくことも印象的でした。
岡本:真幌ちゃんは最初かっちゃんのことを警戒していましたが、途中から「爆豪!」って呼ぶほどに打ち解けていました。
――爆豪は子どもと接するとき、どんなことを考えているのでしょうか。
岡本:完全に子ども扱いをしていますが、自分がかつて悪ガキだったからこそ、真幌ちゃんのように素直になれない子どもへの理解はある気がします。
ただ、今は接し方が自己流なので力で押さえつけてしまうこともありますが……。これから成長していくと、子どもに対しても、もっとうまい接し方ができるようになりそうです。
今回は劇場版だからこその優しさと、かっちゃんの成長がかみ合った気がします。
ツンデレにも見えるんですけど、本人の中では大人になった証拠というか。経験をどんどん積んでいったからこそできた接し方だと思います。だから優しく見えているのかな。
台本をもらって「終わったな……」と思った
――TVアニメシリーズも放送中のタイミングの劇場公開となりますが、劇場版のアフレコ収録はいつ行ったのでしょうか?
山下:TVアニメシリーズ第4期終盤のアフレコをしている時期でした。劇場版の時系列はTVアニメシリーズ第4期よりもあとなので、原作を頼りにデクたちのイメージをふくらませました。
――12月5日の完成披露試写会では、岡本さんが「アフレコに10時間かかった」とおっしゃっていました。
完成披露試写会の模様
岡本:いやー、長丁場でした。
精神的にも体力的にもキツイ部分はありました。
山下:10時間集中し続けることって、普段はあまりないので……。その間ずっと気持ちを維持しないといけないんです。
――しかも終盤のアクションシーンではかなり叫んでいますからね。
岡本:アクションシーンに関しては、絵が完成していなかったので正直アフレコ時点でわからないことが多かったんです。だから後日、再アフレコをして、まんべんなく録り直しました。
山下:仮映像でのアフレコは予想でしかなかったので、完成した映像を見てその迫力にびっくりしました。
――爆豪はずっと叫んでいるので、アフレコも相当大変だったと思います。
岡本:台本を読んだ時点で「喉が終わったな」と思いました。だからアフレコ当日も「声がなくなったらどうしよう……」と思いながら行ったんです。
でも、無事に演じ切れたのでホッとしました。これも運やコンディションに恵まれたからこそだと思います。
個人的には、アフレコ後にキャスト4人とディレクターさんと一緒に焼き肉を行けて満足でした(笑)。
――やっぱりそこは好物の肉なんですね(笑)。
岡本:疲れた喉に染み渡りました(笑)。
山下:肉を食べてからのほうが、声がよく出たくらい(笑)。
■苦労した共闘シーン
――作中でデクと爆豪が共闘するシーンはファン的に嬉しいポイントでした。
山下:アフレコ終盤に録ったシーンだったので、集中力を保つのが大変でした。一般的に最後に録るシーンって、クライマックスだから良いシーンが多いんですよね。
岡本:ラストバトル前にかっちゃんとデクが手を伸ばしあうシーンは、苦労して何回か録り直しました。距離感が難しくて、最初は声を近くに投げてしまったんです。
山下:僕もそうでした。それで「もう少し遠くに向かって声を届けてほしい」と音響監督の三間(雅文)さんからディレクションがありました。
だから録り直すときは「もっと手を伸ばそう!」と意識しましたね。実際に手は届かないかもしれないけど、届かせるような気持ちで演じました。
――完成した劇場版を見たときのご感想はいかがでしたか?
山下:かっちゃんとデクが手を伸ばし合うシーンは、思っていたよりもふたりの間に距離がありました。撮り直したことで映像と声がハマったので、いいシーンになったと思います。
岡本:あと、ラストバトルでの共闘はやっぱり興奮しました。
山下:僕も絵の迫力がすごくてびっくりしました。
――劇場版のキャッチコピーにも使われていたふたりのセリフ「助けて勝つ」「勝って助ける」を思い出すシーンでしたね。
山下:過程は違えど、結果は同じなんですよね。
――ところで山下さんと岡本さん自身、デクや爆豪のように切磋琢磨しあっていることはありますか?
岡本:『ポケモン』です。でも遊び方が全然違うんです。
山下:僕はひたすらポケモンをゲットしているんです
岡本:でも僕は対戦ばっかりしている。
――バトル重視なのは、爆豪に似ているのかもしれませんね。
岡本:そうなんです、子どもの頃からずっとバトルをしていました。負けた相手に綿密に対策をして挑みます(笑)。→次のページ:雄英に来たらよかったのに
■「雄英に来たらよかったのに」
――デクと爆豪の倒すべき相手として立ちはだかる最凶の敵<ヴィラン>・ナインについてお聞きします。井上さんの演技はいかがでしたか?
岡本:ナインの声、めちゃくちゃよかった。
山下:ぴったりでした!
岡本:アフレコが別々だったので、先日の完成披露試写会で初めてお会いしたんです。とっても面白いお方で。
山下:クロストークも楽しかったですね。アフレコは僕らが先だったので、実は完成した映像を見るまでどんな声が来るのか知らなかったんです。
岡本:PVを見ると相当妖しく演じていて、抑えた感じがとってもナインっぽいと思いました。
山下:見透かせない感じですよね。
岡本:でもナインは可哀想な人です。
山下:“個性”を使えば身体を蝕まれる彼ですが、ほかにも方法があったんじゃないかと考えちゃいますよね。でもナインは誰も信じていないからこそ、自分の力だけで問題を解決しようと思ってしまう。
岡本:雄英に来たらよかったんです。リカバリーガールに「チユー!」ってしてもらえばいいのに(笑)。
山下:(笑)。生まれが悪かったとしか言えません。でもナイン自身は、本来すごくいい人だったと思うんです。仲間から信頼されていることからも、それが伝わってきますし。
岡本:死柄木弔や治崎廻のように恐怖で強いるカリスマもいますが、ナインはまだ仲間を恐怖させていない。だからこそ彼自身に、他者から見て信じるに足る一面があったんじゃないかと思います。
■見どころは「手の取り合い方」
――最後に、今回の劇場版の見どころについて、デクと爆豪の「ここを見てほしい!」というポイントをお願いします。
山下:アクションシーンで、ふたりが自然と共闘している姿です。会話はとくにしないのですが、お互いの考えを読み取って自然と連携している姿に、ふたりの信頼が見て取れます。
岡本:あと、ラストバトル直前のシーンです。かっちゃん自身、「こうしないとダメだ」と思ったからこそ、デクに手を差し出した。
原作の堀越(耕平)先生が「原作の最終決戦でやりたかったネタの1つ」と語っていたくらいのネタなので、やっぱり思っていました。
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ライバルとして真正面からぶつかり合い、ヒーローとして為すべきことのために共闘もできるようになったデクと爆豪。山下と岡本の会話からも、「この作品をいいものにしよう」と切磋琢磨して培われた信頼関係が伝わってきた。
『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ヒーローズ:ライジング』では、そんなふたりの熱演や、劇場版ならではのスケールで描かれるバトルを体感できる。ファン必見の展開をぜひ劇場で見届けてほしい。
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