2月21日(金)に全国公開された『デジモンアドベンチャー LAST EVOLUTION 絆』。本作では、“選ばれし子どもたち”とパートナーデジモンたちが未来に向かうための選択が描かれる。八神太一役の花江夏樹は、「最後の物語だけれどポジティブなとらえ方ができる」と、本作の魅力を口にした。また、アグモン役の坂本千夏はアフレコの際「太一との時間を大事にしよう」と心がけていたという。“八神太一とアグモンたちの最後の物語”と銘打った本作に2人はどう向き合ったのだろうか。演技に込めた想いや、『デジモン』シリーズへの愛をうかがった。[取材=ハシビロコ、江崎大/文=ハシビロコ/撮影=小原聡太]■「太一との時間を大事にしよう」と思った――本作のプロジェクトを知ったのはいつ頃でしたか?花江:『デジモンアドベンチャー tri.』6章の劇場上映前の取材などをしていた時期に「次の『デジモン』がある」と聞いた覚えがあります。坂本:『tri.』6章のあとでアグモンの「また会えるね」というセリフを収録して、私も「またみんなに会えるんだ」と初めて知りました(笑)。まさか最後の物語になるとは。――本作では大学生になった太一が登場します。花江さんは『デジモンアドベンチャー tri.』では高校生の太一を演じましたが、演じるうえで心境の変化はありましたか?花江:演じ分けについては、それほど意識していません。監督からも「無理して大人にしようとしなくていい」と言われました。言葉や見た目、置かれた環境の違いなどから大学生に成長した太一が見せられると思ったので、声のトーンなどを大きく変えてはいません。――台本を読んだときの印象はいかがでしたか?坂本:台本を読み進めていくうちに“最後”に向かっていく感じがあり、「本当に最後の『デジモン』なんだな」と思いました。花江:台本を読んでいる途中で悲しい気持ちになったときもありましたが、ポジティブなとらえ方もできるラストだと思います。たしかに最後の物語ではありますが、太一とアグモンの信頼関係は変わらない。すべてが終わってしまったわけではない気がします。坂本:私の場合、悲しい気持ちにはならないようにしたいと思っていたので、アフレコでは「いつも通りの太一との時間を大事にしよう」と心がけました。大人になった太一を「かっこいいな」と思ったり、「やっぱり太一は太一だな」と思ったりと、感じることはさまざまですが、太一を見守るアグモンのまなざしは変わらないのだと伝えたかったんです。――アフレコ現場には「最後の物語」ならではの雰囲気はあったのでしょうか?花江:少なくともお通夜のような暗い感じではなく(笑)、和気あいあいとしていました。坂本:ほとんどのみなさんは私たちよりもセリフが少ないので、余裕があったと思います(笑)。本作で再会した『デジモンアドベンチャー02』のキャストからは、キャラクターを演じられる喜びが全身から伝わってきました。花江:『02』の“選ばれし子どもたち”を演じる新キャストは、緊張感もあったと思います。僕も『tri.』に参加したばかりの頃は緊張していたので、気持ちはよくわかるんです。アフレコ中は「がんばれ!」と密かに応援していました(笑)。→次のページ:デジモンと歩んだ20年■デジモンと歩んだ20年――坂本さんはアグモンを演じて約20年になります。『デジモン』キャストであることを実感するのはどんなときでしょうか。坂本:20年間毎週アグモンを演じ続けていたわけではないので、実は『デジモン』関連のイベントでファンのみなさんと会うまではなかなか実感が持てなかったんです。『デジモンアドベンチャー』放送当時はファンの方と接する機会が少なかったので、『tri.』関連のイベントに出演したときに世の中にはこんなに『デジモン』ファンがいるのか!」と驚きました。もっと早く知りたかったです(笑)。――一方花江さんは、『デジモン』をリアルタイムで見ていた“デジモン世代”です。花江さんにとって、『デジモン』シリーズはどのような作品だと感じていますか?花江:長く愛されているからこそ、世代を超えて届く魅力がある。それが『デジモン』のすごいところだと思います。昔はストーリーを深く考えながら見ていたわけではないですが、それでも子ども心に訴えかけてくるものはありました。大人になった今見返しても楽しめる作品だと思います。あと、大人になると子どもの頃買えなかった『デジモン』グッズが買えるようになって嬉しいです。坂本:大人になってよかった、と思う瞬間ですね。親から「いい加減にしなさいよ」と怒られないので、好きなだけお金が使える(笑)。――本作を通して『デジモン』の印象は変わりましたか?花江:印象が変わったというよりも、『デジモン』の変わらない魅力が詰まっている作品だと思いました。パートナーとの絆で問題を乗り越えて真相に迫っていく『デジモン』らしい物語です。初代の劇場版『デジモンアドベンチャー』を意識しているシーンもあり、当時『デジモン』を見ていた世代に向けて作られた映画だと感じました。変わった点といえば、太一たちの持っているデバイスが現代風になっているところ。仲間同士で通話アプリを使って会話をしていたり、スマホのような形のデジヴァイスが出てきたりと、デザインも進化しています。坂本:私は、デジモンに対する認識が作中でも大きく変わったと感じました。昔はぬいぐるみのふりをして出かけていたこともありましたが、本作ではもう扮装しなくていい。太一たちと一緒にご飯を食べたり並んで歩いたりできるほど、街に馴染んでいて嬉しいです。でもアグモンはたくさん食べるので、さすがに太一と食べ放題に行ったらお断りされるかもしれません(笑)。■原点と変化を楽しめる作品――本作はオリジナル版「Butter-Fly」が起用され話題となっています。おふたりにとっても、「Butter-Fly」は思い入れのある楽曲でしょうか?花江:最初のTVシリーズのOPなので、「『デジモン』といえばこの曲」と思うほど印象的です。『デジモン』を知らない人でも「Butter-Fly」は知っている。みんなで歌いたくなるいい曲だと思います。僕も和田(光司)さんの力強い歌声に勇気をもらいました。坂本:カラオケで一般の方が「Butter-Fly」をよく歌っていると知ったときはびっくりしました。「Butter-Fly」はどのバージョンも好きなのですが、とくにオリジナル版は和田さんの声の伸びがすばらしく、特別感があります。 ――最後に、これから映画を見るファンに向けてメッセージをお願いします。花江:『デジモン』を昔から見ていたファンの心に刺さる作品だと感じました。デジモンとパートナーとの絆、新キャラクターのメノアを通してあふれ出る想いなど、見どころがたくさんあります。懐かしい楽曲の使い方や最後の進化もとてもカッコいいので、楽しみにしていてください。また、大人になるためにはいろんな選択をしなければいけない、と気づかされる作品でもありました。ラストの太一とヤマトの対比も見事で、思い出すだけで泣けてきます。坂本:完成した映像を見たときは太一やアグモンの過ごした時間を追体験しているような気持ちになって、「こんなに泣くとは思わなかった!」と驚くくらいに泣いてしまいました。もちろん楽しいシーンもたくさんありますし、「大人になるのも悪くないよな」と思ってもらえる作品なので、楽しみにしていてください。インタビューで話しているうちに、私ももう一度見たくなってきました。◆◆ ◆キャスト陣も感動した太一とアグモンの選んだ未来を、ぜひ劇場で見届けてほしい。