「八男って、それはないでしょう！」アドリブで現場を引っ張る“末っ子”の想い「みんなが笑顔でいてくれたら…」榎木淳弥×西明日香【インタビュー】

2020年4月より放送が始まったTVアニメ『八男って、それはないでしょう！』。貧乏貴族の八男・ヴェンデリンに転生してしまった主人公が、魔法の才能を武器に独立を目指す物語だ。本稿では主人公のヴェンデリンを演じる榎木淳弥さんと婚約者のエリーゼを演じる西明日香さんのインタビューをお届け。転生後は5歳の姿ということで、「5歳のヴェル（ヴェンデリン）を演じる練習もした」という榎木さん。アフレコ現場の裏話も披露してくれた。さらに西さんがエリーゼを演じるときのポイントを語っていると、意外な一面が。ガヤに込めた遊び心についても語っていただいた。[取材・文=ハシビロコ]■ヴェル（5歳）の声も練習していた――本作の脚本を読んだときに感じた第一印象を教えてください。榎木：まず第1話の脚本を読んだときは、「僕がぜんぜんしゃべっていないなぁ」と思いましたね（笑）。1話目はほとんどヴェルの幼少期のお話なので、5歳のヴェルを演じた石上（静香）さんのセリフのほうが多いんですが、それでも脚本に“少年ヴェル”と書かれていたので、アフレコに行くまでは「この小さなヴェルも僕が演じるのだろうか」と思っていました。おそらくオーディションのときに演じた12歳のヴェルを“少年ヴェル”だと勘違いしていたんです。「もっと幼いころもあるのか！」と驚いたものの、念のため練習してからアフレコに臨みました。結果的に石上さんが演じてくださって本当によかったな、と（笑）。――いつか榎木さんの演じる5歳のヴェルも聞いてみたいです。榎木：ほぼ裏声になってしまうので聞き苦しいと思います（笑）。西：それはそれで聞いてみたい（笑）。私の場合は、オーディションのお話をいただいたときに本作について初めて知りました。エリーゼは外見から清楚さが伝わってきたので「私の持ちうるすべての清楚さをぶちこまないといけないな」と思って……。榎木：「ぶちこむ」の時点であまり清楚じゃない気が（笑）。西：たしかに（笑）。でも清楚さを注がなければいけないと思ってオーディションに臨んで、その結果エリーゼ役をいただけてとても嬉しかったです。タイトルやかわいいキャラクターを見て「女の子がいっぱい出てきて主人公が嫁選びをするハーレム系作品」だと思っていましたが、本作にはリアルな要素がふんだんに詰め込まれています。好きだから結婚するのではなく家や人生のために政略結婚をしたり、周囲の大人たちの権力闘争に巻き込まれたりと、深みのある政治劇や人間関係が描かれていると気づきました。最初にハーレムものだと考えていた自分に「それは違うよ！」と言ってあげたい（笑）。――小松未可子さんと三村ゆうなさんも、当初はハーレムものか八男を攻略していく乙女ゲーム系作品だと思っていたそうです（前編記事参照）。榎木：主人公が女性なら、八男がメインの攻略対象になる作品という可能性もあったかもしれません。それはそれでおもしろそうです（笑）。――榎木さんは「八男・ヴェル」という設定を聞いたときにどんな印象を抱きましたか？榎木：オーディション要綱に設定が細かく載っていたので「八男だから」とそれほど身構えることはなく、八男が底辺から這い上がっていくストーリーなのだと察しました。ただ、予想以上に出世が早くて。運や才能を味方につけてどんどんお金などを得ていきますが、それだけで幸せになれるわけではないんです。人生のようで、深い物語だと思いました。■アドリブやガヤの遊び心――キャラクターの演じ方は、アフレコ前後で変わりましたか？西：オーディションのときは清楚さを心がけていて、アフレコでもそれは変わりません。収録現場では榎木氏をはじめとするみなさんのアドリブが多くて驚きました。私自身はアドリブを演じることがあまり得意ではないので、みなさんがおもしろいネタをたくさん入れているシーンを見て「どうしよう」と心配になってしまって。でも、スタッフさんに「エリーゼは清楚なのでアドリブを入れなくても大丈夫です」と言われて安心しました（笑）。榎木：アドリブを入れると別のキャラクターになってしまいますから（笑）。西：そうなんです、エリーゼのイメージが崩れてしまうので。スタッフとキャストの満場一致で、エリーゼはアドリブを入れないことになりました。榎木：西さんはその分、ガヤで遊んでいたんです。西：ガヤは遊びました（笑）。それでも村人のガヤでは、領地を維持するために力仕事をする血気盛んな男性たちがメインなので必然的に男性声優の出番が多かったです。それでもガヤに参加したくて、私や小松さん、三村さんが後ろで「あー、疲れたな」などこっそり野太い声を入れていたときもあります。――榎木さんがアフレコで心がけていたことはありますか？榎木：収録現場のみんなが笑顔でいてくれたらいいな、と思ってアドリブをしていました。西：アドリブはみんなのためだったとは（笑）。榎木：みんなが笑顔になるために楽しみながら演じたので、その雰囲気が伝わればいいな、と思います。もう収録はすべて終わりましたが、オンエアを見たみなさんにも笑顔になっていただけると嬉しいです。――最後に、アニメを楽しみにしているファンへメッセージをお願いします。西：先ほどのアドリブの話もそうですが、ヴェルを中心に作品をよりいいものにできるように取り組んだので、原作を知っている方にも楽しんでいただけると思います。ぜひ人間関係のゴタゴタを肴に、毎週晩酌をしながら見てください！榎木：貴族社会のしがらみはもちろん、ヒロインたちとの関係性も見どころです。エリーゼ、イーナ、ルイーゼなどさまざまなタイプのヒロインがいますし、おじさんキャラクターも登場するので幅広い層の心に刺さる作品だと思いました。ぜひ多くの方々に見ていただきたいので『八男って、それはないでしょう！』をよろしくお願いします！『八男って、それはないでしょう！』は4月2日より放送・配信中。一筋縄ではいかない異世界転生ものであり人間ドラマでもある本作が、どのようなクライマックスを迎えるのか期待が高まる。（C）Y.A／MFブックス／「八男って、それはないでしょう！」製作委員会