出渕裕×河森正治×宮武一貴が語る「メカデザイン」とは？シド・ミード追悼イベント【レポート】

12月18日、2019年12月30日に亡くなった世界的インダストリアルデザイナー・ビジュアルフューチャリストのシド・ミード氏の追悼トークライブが配信された。ミード氏による『ブレードランナー』（1982）『トロン』（1982）『エイリアン2』（1985）等のデザインに影響を受けたアニメ、マンガ、特撮各界の大物ゲストらによる同配信は2020年12月30日までアーカイブ視聴可能となっている。今回はその見どころを一部抜粋してお届けする。■『AKIRA』バイクにも影響を与えたミードデザインシド・ミード氏の追悼イベント「～未来の若きクリエイターへ贈る～『巨匠たちが語るシド・ミードの世界と魅力』」は二部構成で、第一部にはマンガ家・映画監督の大友克洋氏、SF画家・イラストレーターの加藤直之氏、映画監督の樋口真嗣監督、元バンダイビジュアル取締役社長の渡辺繁プロデューサーが登壇。モデレーターを映画評論家の清水節氏が務めた。各ゲストがシド・ミード氏との出会いや影響を受けた作品について語り、生前のミード氏の映像や作品画像を交え、クリエイティブ論や仕事論を交わした。ミード氏デザインによる『トロン』のライトサイクルが、『AKIRA』のバイクデザインのモチーフになっていることを大友氏が認めると、樋口監督は「トロンのバイクに成田山のステッカーを貼ったのは大友さんならではです」とコメントした。ミード氏の作品として日本のアニメファンに有名な『∀ガンダム』（1999）は特徴的な頭部デザインから「ヒゲのガンダム」と呼ばれているが、渡辺氏によるとミード氏は「あれはヒゲではなくチーク（頬）ガードだ」と反論していたという。また、工業デザイナーの村上克司氏は、∀ガンダムのデザインを応援するためミード氏に「大丈夫だ、俺はこんなのも作ってる」と、現在でも度々玩具が商品化されている人気アニメ『宇宙大帝ゴッドシグマ』（1980）のメカデザインを見せたというエピソードを披露した。その他、加藤氏が大友氏に『AKIRA』で2020年の東京オリンピック開催と中止を的中させていた件について訊ねたり、渡辺氏がプロデュースし樋口氏が制作に参加した『ウルトラマンパワード』（1993）の制作当時の写真を公開したりするなど、各ゲストの作品に関する話題も数多く飛び出す賑やかなトークセッションとなった。出渕×河森×宮武ファン必聴のメカデザイン論百発！第二部では出渕裕氏、河森正治氏、宮武一貴氏らメカデザイナーの大御所三名が登壇。モデレーターは数多くのロボットアニメを手掛けてきた植田益朗プロデューサーが務めた。出渕氏と河森氏は共に『闘将ダイモス』（1978）がデビュー作で年齢も近く、「ショウちゃん」「ブッちゃん」と呼び合う仲。宮武氏はその先輩にあたる存在であり、学生同士のようなカジュアルなムードでのトークとなった。シド・ミード氏と車の関係を語る場面では、河森氏が『ブレードランナー』に登場した空飛ぶ未来車・スピナーのモチーフとなったとされるクラシックカー（ブガッティ・タイプ57SC）を本イベントのためだけに複数点描き、参照元の特徴をどう抽出してスピナーのデザインを生み出したのかを解説した。その他、シド・ミード氏の業績や『YAMATO2520』など数多のアニメタイトルに触れつつ、日本のアニメ業界におけるメカニックデザイナーとメカニカルデザイナーという言葉の正しい使い分け、デザインとスタイリングやアレンジの違い、デザイナーが言われて一番辛いオーダー、発注者側が負うべき責任など、メカデザインを語るうえで原則となるような知見に富んだトークが交わされた。『シド・ミード没後一周年追悼企画 ～未来の若きクリエイターへ贈る～「巨匠たちが語るシド・ミードの世界と魅力」』は2020年12月30日までの限定配信コンテンツとなっており、各回約2時間2000円で視聴可能。第一部第二部両方視聴できるセット価格は3500円でイープラスにて販売中。