現在イギリスで生活中の声優・寿美菜子さんが、イギリスでどんな日常を送っているのか、寿さんの言葉でリアルに伝えていくインタビュー連載「寿美菜子のAnother Wonderland in the UK」。前回は、寿さんがこの1年間ずっと「行きたい!」と言い続けてきたエディンバラ・フェスティバルに参加しての感想や、スコットランドの街並みの印象、また9月17日に30歳を迎えての抱負なども伺いました。第19回となる今回は、ついにイギリス編最終回! 10月16日に行ったYouTubeでの生配信で、フランスでの仕事が決まったと明かした寿さん。ラストスパートというように、連日劇場に足を運んだり、ホストファミリーや友人との別れを悲しんだり…。そんな様子をお写真と共に振り返りました。[取材・文=米田果織]■声優・橘田いずみさんとイギリスで交流!――遅くなりましたが、お誕生日おめでとうございます! YouTubeには声優仲間の橘田いずみさんにお祝いしてもらった様子も収めた動画が上がっていましたね。寿:ロックダウンの影響もあり、橘田ちゃんとイギリスで会った回数は多くないのですが、ずっと連絡は取り合っていました。なので、9月はイギリスのスパに行ってみようと計画して、2人でのんびり過ごしたり。ちょうど私の誕生日前にも会う約束をしていて、「餃子が食べたい」とリクエストしたら、なんとケーキまで用意してくれて! とっても嬉しかったです。――橘田さんとは、日本にいる時から交流があったのですか?寿:現場でご一緒したことはもちろんありましたが、がっつり絡むことはあまりなくて、どちらかのレギュラーにどちらかがお邪魔する、みたいな感じだったんですよ。でも『カードファイト!!ヴァンガード』の現場で久しぶりに会った時に「イギリスに行こうと思っている」と橘田ちゃんが話しているのを聞いて、私もイギリス留学を考えている時だったので「詳しく聞きたいから、改めて連絡先交換しよう」とLINEを交換しました。――イギリスの状況が緩和したからこその再会だったんですね。最近のイギリスは渡航制限を簡易化し、日本からもワクチンを受けた人は自主隔離が不要となったそうですね。寿:それが、「今まで日本から隔離なしで来れなかったんだ!?」と最近知ってびっくりしたんです。すでに隔離なしで来れると思い込んでいました(笑)。なので、街の様子はそこまで賑やかになったことはなく、サマーホリデーの時の方が一気に人が増えた印象がありました。――日本人を見掛けることが多くなったこともないですか?寿:今思い出したんですけど、先日「ロンドン・フィルム・フェスティバル」(10月6日~17日)に行ったのですが、細田守監督がいらっしゃっていました。登壇されることを知らずにチケットを取っていたので、細田監督へのQ&Aコーナーがあると知って驚きました。――自由に海外に行き来できる日は、近いかもしれませんね。日本では先日「ミュージックレイン・オールスターMIX “バイブル” mixed by DJ和」発売が発表されました。「よく分かるミュージックレイン」をコンセプトにしたCDになるそうですが、寿さんにとって特に思い入れのある楽曲はありますか?寿:選曲に関してはすべてお任せしているので、選曲理由は私も実は気になっています(笑)。個人的に、私が作詞した「save my world」が2曲目に位置しているのが嬉しいです。また「black hole」は、それまでの寿ロックとは違う、攻撃的だけど共感性のある楽曲になっていて、私のターニングポイントとなった曲なので「この曲を入れてくれるなんて、よくわかってるなぁ~」と唸りました(笑)。――スフィアの楽曲についてはいかがでしょうか?寿:「Future Stream」と「MOON SIGNAL」に関しては、「だよね!」という感じ。特に「MOON SIGNAL」はライブフェスに参加させてもらう際に必ず入れる曲にしているくらい、スフィアを知らない人でも盛り上がれる安心安定の“鎧曲”として大事にしているので納得の選曲だと思いました。――DJ和さんのMIXでどんなアレンジがされているのが楽しみです! では、ここからお写真と共に寿さんのイギリス生活を振り返って行きましょう。■誕生日に行ったアフタヌーンティーで感動――前回のインタビューで、誕生日はアフタヌーンティーに行くと言っていましたね。ここが当日行かれた場所ですか?寿:ここはまた違うアフタヌーンティーなんです(笑)。バッキンガム宮殿近くのお店なのですが、写真を見てわかる通り、めちゃめちゃロイヤルな雰囲気が漂っていました。ホテルの中にあるお店なのですが、ロイヤルの赤がテーマとなっていて、宿泊部屋も赤いカーテン、赤いシーツ、赤いソファーと、ゴージャスなデザインになっているそうです。おごそかに感じますが、意外とカジュアルな場所で、例えるなら『不思議の国のアリス』の世界観のような…。――アフタヌーンティーの内容もなんだかアリスのお茶会みたいですね。ケーキがかわいい!寿:ですよね! 手前に見える赤い丸の形をしているものは、リンゴのケーキです。割ると中にムースとリンゴのジャムが入っていて、かわいいし美味しいしで大満足でした。――では、続いての写真が誕生日当日に行った場所ですね。アフタヌーンティーなのに別々のお皿に入っているのは珍しいですね。寿:私の一番好きなアフタヌーンティーのお店です。ここで出てくるスイーツは、全てハイブランドのファッションにインスパイアされて作られているんです。緑のケーキが、確かTod'sのカバンだったかな? 他にもVALENTINOのお洋服など、見た目から楽しませてくれました。――バースデープレートもかわいく装飾されていますね。寿:イギリスでここまでちゃんとプレートを準備してくれるお店って、かなり貴重なんですよ! アニバーサリーだからケーキを用意してほしいと言ったら、蝋燭だけ刺さって出て来たりとかするんです(笑)。なので、「わ~! HAPPY BIRTHDAYって書いてある~!」と感動してしまいました。しかも、隣に座った見ず知らずの方もお誕生日だったみたいで「あなたも誕生日なの? おめでとう!」と言ってくれて、すごくハッピーな誕生日になりました。→次のページ:イギリス舞台観劇のラストスパート!■イギリス舞台観劇のラストスパート!20代最後、そして30代最初に観た公演は…――前回に引き続き、今月もかなり舞台を観に行かれましたね…!寿:もうイギリス生活もラストスパートなので…悔いの残らないように!――「THE WOMAN IN BLACK」は映画化もされた作品ですね。寿さんがホラー作品を選ぶのは珍しい気がします。寿:これが20代最後に見た舞台なのですが、「なんでこれを最後にしてしまったんだ」と観る前は少し後悔していました。実は、以前旅行でイギリスに来た時にも観たのですが、当時は英語がわからなくて「きっと面白いことをしているんだろうけど、何をしているかわからない」状態だったんです。しかし、今回は理解した上で観る事ができて、嬉しいような悲しいような(笑)。まさかこんなに怖かったとは…。と同時に面白くて、大興奮で作品の世界観にのめりこみました。たぶん、29歳で一番叫んだ日になったかも? 夜公演を観てしまったのですが、帰りに暗い道を通り抜けなければならなくて、大きな笑い声を発しながら走り抜けました(笑)。――日本でも人気の『Wicked』を観に行ったお写真もありますね。寿:これが30代になって最初に観た舞台です。これも以前イギリスに来た時に観て、ストーリーを噛みしめ切れなかった部分があったので、今回物語の理解が深まりました。読後感も良かったし、何と言ってもメイン2人の歌声が素晴らしかったです。――私は日本で観たことがあるのですが、イギリスは舞台の作り込みが違いますね。寿:セットから没入感がありますよね。入場の時からずっと会場がグリーンに染まっていたりと、イギリスは観客を世界観に惹き込む“おもてなし”がすごいと思います。――続いてのお写真もセットがすごいのですが、何の舞台を見たのですか?寿:『シンデレラ』です。メインテーマソングのタイトルが「バッド・シンデレラ」となっていて、シンデレラが悪い子として描かれているんです。ディズニーのシンデレラを想像していたら度肝を抜かれてしまうくらい(笑)。『オペラ座の怪人』のアンドリュー・ロイド・ウェバーが新たに作った演目ということで、やはり豪華でした。――劇場でいうと、次の写真は本当に裁判所みたいですね。寿:もともと庁舎だった場所なんですよ! アガサ・クリスティの『検察側の証人』の舞台です。先ほども言ったように、イギリスって開場時から観客を楽しませようとしてくれているんですよね。この写真は、この後に裁判する裁判官たちがロビーで時間をつぶしているシーンを演じているんです。また、裁判員席に座る観客にはセリフが割り振られたり、舞台が始まる前に契約書を立って読まされたりと、演出がとても凝っていて。イギリス演劇のこういうところが好きなんですよね。――先ほど「ラストスパート」と言っていましたが、先日のYouTube生放送で、フランスでのお仕事が発表されました。このインタビューが出る頃にはフランスにいるとは思うのですが、イギリスで帰国までにやりたいことはありますか?寿:今、荷造りが超大変です。こっちに来るときはキャリーケース2つで良かったのに、やはり1年半もいたので荷物がすごいことに…。キャリーケースに入らない分は船便を手配しなければならないのですが、送る荷物の品名の書き方が違ったりと大変さを実感しています。その合間を縫いつつ、今はとにかくテニスに通っています。回数券を買っていたので使い切れるかどうかの瀬戸際なんですよね(笑)。あとは時間の許す限り、まだ行っていないミュージアムを巡りたいです。言い出すとキリがないですね(笑)。――そして、ロンドンにて撮り下ろした「寿美菜子 Photo book Calendar 2022”Cuppa”」の発売も解禁されましたね。寿:この1年半、春夏秋冬と季節ごとにたくさんの写真を撮っていただきました。ロンドンの名所で撮ったものもあって、旅行が簡単じゃない今だからこそ、イギリス気分を味わえる一冊になっています。カレンダーにもなっているので、1年を通して楽しんでほしいですね。――発売記念イベントも発表となりました。寿さんにとっては、久しぶりにファンの皆さんの顔を見る機会になるのではないでしょうか。寿:オンラインなので直接会えないのは残念なのですが、「ただいま」「おかえり」を交わせる機会ができて嬉しいです。私自身も、本当に楽しみ! それ以外にもオンラインくじなどもあるので、いろんな形で“イギリスの美菜子”を楽しんでいただきたいです。詳細はこちら■寿美菜子が思う、言葉を伝える上での大切なこと――11月5日の金曜ロードショーで、寿さんがイザベラ・ヨーク役で出演した『ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝 -永遠と自動手記人形―』が初放送されます。言葉の意味を伝える・理解するのが難しいという点が、語学を勉強中の寿さんにシンクロすると感じました。最近、伝えるのや理解するのに苦労したことはありますか?寿:たくさんあります。それはイギリスにいる今だけじゃなくて、日本で同じ言語を話していても伝わっていないこともあるじゃないですか。「話せるにこしたことはない」と語学を勉強していますが、やっぱり最終的には“気持ち”が大事なんだと実感しました。どれだけ丁寧に伝えても、思いが乗っていなかったら伝わらない。私がイギリスに来たばかりの頃は全然英語を話せなかったので、とにかく「伝えたい」という気持ちだけでやり取りをしていました。そうすると、一生懸命理解しようとしてくれるんですよね。英語でも日本語でも、“ちゃんとその人に向き合う”ことが一番重要なんだと感じます。――なるほど。では「手紙」という点で、お仕事する上でファンレターをもらうことが多いと思いますが、印象的な手紙があれば教えてください。寿:私、いただいたファンレターを読むのが大好きなんです。手紙を書くのって、すごく時間と労力がかかることですよね。もちろん応援してくださるだけでも十二分に想いは伝わっているのですが、手紙で皆さんの思っていることを直接知ることができるのは、ありがたいです。手紙だとプライベートなことを書いてくれる方が多いのですが、「結婚しました」「受験に合格しました」「仕事が大変です」でも何でも、みんなそれぞれの人生を生きる中で“寿美菜子”が共通点になっていることが嬉しい。人生の中に“寿美菜子”を加えてくれてありがとうと伝えたいです。――寿さんは最近誰かに手紙を書きましたか?寿:実際に今、イギリスでお世話になった方々に書いている最中なんですよ。ホストファミリーにはそれに加えてphotobookをプレゼントする予定です。あとは、最近イギリスに来たばかりの女性とお友達になったのですが、彼女を見ていると、イギリスに来たばかりの不安にまみれていた自分を思い出すんですよね。なので、おせっかいかもしれないけど、伝えたいことがあるので手紙を書きました。――では、あえて「誰か1人にしか送れない」となったら誰に手紙を書きますか?寿:難しい~! でも、ちょうど今朝「手紙を書こうかな」と思った人がいて、それは「家族」。この便利な時代だからこそ、しょっちゅう「元気だよ~」とメールや電話で連絡してはいたのですが、きっと私のイギリス留学をかなり心配していたと思うんです。今が『ヴァイオレット・エヴァ―ガーデン』の時代だとしたら、手紙だけの連絡だとイギリスから届くのに2週間くらいかかっちゃいますし、「元気だよ~」という一言の重みがまったく違うものになっていましたよね。だからこそ、イギリスから改めて重みのある「ありがとう」を送るのも良いかなと思いました。――ありがとうございました!【寿美菜子のイギリス生活記 バックナンバー】第1回 【寿美菜子のイギリス生活に迫る! ロックダウン中の現地模様、渡英に至ったスフィアメンバーからの言葉とは】第2回【寿美菜子のYouTube撮影秘話に迫る! 「スフィアの4 colors LABO」の今後の展開も?】第3回【寿美菜子さんは学校では“優等生キャラ”? クラスでのエピソードやハマっているものを明かす】第4回【寿美菜子の“心が動いた瞬間”は? 自ら撮った写真と振り返る!】第5回【寿美菜子がイギリスで落ち込んだ時に「元気づけてくれた人」とは!?】第6回【寿美菜子、イギリスの海で大はしゃぎ! 29歳の誕生日を海外で過ごす思いも告白】第7回【寿美菜子、アーティストデビュー10周年を振り返る! とくに影響を与えた楽曲とは…】第8回【寿美菜子、イギリス2度目のロックダウンやスタジオ仕事の様子を語る】第9回【寿美菜子の“2020年出来事ランキング”は? 3位スフィア全曲LIVE、2位渡英前、1位は…】第10回【寿美菜子の音楽ルーツを探る! 作詞の原動力は「早見沙織ちゃん」の理由とは?】第11回【寿美菜子にとってのバレンタインは「スフィア結成の日」 幼少期の甘酸っぱいエピソードも】第12回【寿美菜子、渡英期間半年延長への想いとは「イギリスで悔いの残らないように生活できたら」】第13回【寿美菜子、YouTubeチャンネル「マジ寿!」1周年に感謝! スフィアのお気に入り動画も紹介】第14回【寿美菜子、「スフィアの4colors LABO」1周年記念生配信を振り返る!イギリスでも感じた“ファンとの一体感”】第15回【寿美菜子、イギリスで劇場版「鬼滅の刃」鑑賞! 10年来の“憧れの声優”も明らかに】第16回【寿美菜子、ウィンブルドンテニスで感じた“スポーツの楽しみ方”】第17回【寿美菜子、イギリスのホリデー満喫中!映画「けいおん!」の舞台となった場所も】第18回【寿美菜子、30歳の抱負は「挑戦をやめないこと」―スフィア初バーチャルライブも振り返る】寿美菜子 プロフィール『TIGER & BUNNY』カリーナ・ライル/ ブルーローズ役事務所の同期である、高垣彩陽、戸松遥、豊崎愛生とのユニット「スフィア」のメンバー。