話題作が目立つ秋アニメの中で、異彩を放っている『16bitセンセーション ANOTHER LAYER』。本作のプロデューサーを務める株式会社アニプレックスの中山信宏さんに誕生秘話など話を聞く。本作は、若木民喜さん、みつみ美里さん、甘露樹さんが手がけた同人マンガ『16bitセンセーション』が原案となったアニメ。アニメから初登場となる、美少女ゲームが大好きなイラストレーター・秋里コノハを主人公に据えた、オリジナルストーリーが展開されている。今回、美少女ゲームをメインのアニメを制作することになったきっかけなどを中山さんに聞いた。[取材・文:望月悠木]■美少女ゲーム業界への恩返しがしたい――まず『16bitセンセーション』をアニメ化した背景を教えてください。本作の制作を手がけているアニメ制作会社「st.シルバー(シルバー)」のスタッフさんから「『16bitセンセーション』をアニメ化できないか」という相談をもらったことがきっかけです。もともとマンガを読んでいたこともあり、そこから企画の立ち上げが始まりました。――主人公・コノハの発言にもありましたが、美少女ゲームは下火状態です。今回、美少女ゲームを題材にした『16bitセンセーション ANOTHER LAYER』を放送した思いなどはありますか?私自身も美少女ゲーム世代で、これまでさまざまなアニメ制作に携わらせていただきましたが、そのキャリアの中で美少女ゲームの影響を多分に受けていたと思っています。ですので、ある意味“自分のキャリアの原点のひとつでもある美少女ゲーム”を題材にした本作を制作することで、美少女ゲームに対する恩返しみたいな気持ちがありました。また、「美少女ゲームにはパワーみたいなものがある」ということを多くの人に伝えたいという思いも強かったです。■コノハの髪の毛にインナーカラーがある理由?――原案では、アニメでコノハがお世話になるアルコールソフトで働く上原メイ子が主人公でした。なぜオリジナルキャラのコノハを主人公として登場させ、オリジナルストーリーにしたのですか?原案は美少女ゲーム制作にまつわる半自伝に近い部分があり、どうしても「ユーザー視点がとりにくい部分もあるかな」と思っていました。その部分に加えて、打ち合わせをしていく中で、「物語を引っ張っていく存在を立てたほうがいいのでは」ということになったんです。そして、原案の若木民喜さんのアイデアで、コノハというキャラを立てることになりました。――コノハは主人公らしく言動もビジュアルも個性的です。どのように設定を作っていったのですか?大まかなビジュアルイメージやキャラクターの方向性を若木民喜さんが決め、それに沿ってみつみ美里さんにデザインしていきました。髪の毛をインナーカラーにしたり現代風にすることで、過去で生活するキャラクターとビジュアルで差別化を図ったところは「さすがだな」と思いました。■“I'veサウンド”を堪能できるエンディングテーマが誕生した背景――アニメ第1話のスタッフロールで、協力として数多くの美少女ゲームメーカーが名前を連ねたことに、SNSでは大きくバズっていました。各美少女ゲームメーカーに協力をお願いするのは大変だったのでは?「st.シルバー」に所属している人の中に、美少女ゲームメーカーで仕事をしている人がいて、その伝手でいろいろなメーカーにアプローチできました。各メーカーの人たちはとても協力的で助かりました。毎話放送がある度、過去または現在も美少女ゲームに携わっている関係者のみなさんから、X(旧Twitter)などで作品に関するさまざまな反応をしていただいており、とてもうれしいです。――SNSの反応で言うと、エンディングテーマ「リンク~past and future~」に関する声も多いです。作詞はKOTOKO、作曲は折戸伸治、編曲は中沢伴行と音楽クリエイターチーム「I've」にゆかりのあるメンバーによって制作されました楽曲になっています。あらためて本楽曲はどのようにして誕生したのですか?社内で「エンディングテーマは当時の美少女ゲーム音楽をフィーチャーした楽曲にしたい」という意見がありました。それであれば、「当時から現在も第一線で活躍しているKOTOKOさん、折戸伸治さん、中沢伴行さんにお願いしたい」ということになり、今回のある意味“ドリームチーム”に楽曲を手掛けてもらったんです。折戸さんのベース曲はもちろん、そこに中沢さんのアレンジと、KOTOKOさんの世界観にマッチした歌詞が合わさり、美少女ゲーム音楽をフィーチャーしたエンディングテーマとして、とても素晴らしい仕上がりになったと思います。歌唱はコノハ役の古賀葵さんにお願いしたので、コノハの視点も加わり、作品とのマッチングもさらに高まったものになりました。たくさんの人に喜んでもらえるものになって本当によかったです。――『Kanon』や『同級生』という美少女ゲームが登場したり、“I'veサウンド”を聞いたりなど、本作を通してノスタルジックな気持ちになっている人が続出しています。最後にTVアニメの視聴者へメッセージをお願いします。自分のような美少女ゲームを通ってきた人たちには懐かしさと一緒に、“当時このジャンルにあったパワー”を再び思い出してもらえるとうれしいです。また、さまざまなエンタメに触れている若い世代の人たちにも、「数多く存在するコンテンツには、多かれ少なかれ何らかの“美少女ゲーム”の因子が入っている」ということを感じてもらえると思います。そういった部分も含めて作品を楽しんでほしいです。原案のある作品ではありますが、アニメではタイムリープなどのSF要素を組み込み、オリジナル作品としても楽しめる内容になっています。コノハの物語の結末がどうなるか、最後まで見届けてもらえると幸いです。【放送情報】TOKYO MX、とちぎテレビ、群馬テレビ、BS11:2023年10月4日(水)より毎週水曜24時30分~中京テレビ:2023年10月4日(水)より毎週水曜25時37分~ABCテレビ:2023年10月4日(水)より毎週水曜26時14分~STAFF:原案:若木民喜 みつみ美里(アクアプラス) 甘露樹(アクアプラス)監督:佐久間貴史アナザーレイヤー・メインストーリー:若木民喜 高橋龍也(※正式ははしご高)キャラクターデザイン:佐々木政勝美術監督:有本妃査恵美術デザイン:山本浩憲 石原由光色彩設計:のぼりはるこ撮影監督:難波史編集:牧信公設定考証:RetroPC Foundation音響監督:本山哲音響効果:古谷友二録音調整:八巻大樹音楽:やしきんアニメーション制作:st.シルバー▽オープニングテーマ「65535」(ろくごーごーさんご)中川翔子作詞・作曲・編曲:Sohbana▽エンディングテーマ「リンク~past and future~」歌:秋里コノハ(CV.古賀葵)作詞:KOTOKO作曲:折戸伸治編曲:中沢伴行▽CAST秋里コノハ:古賀葵六田守:阿部敦上原メイ子:堀江由衣下田かおり:川澄綾子六田勝(てんちょー):伊藤健太郎五味川清(キョンシー):福島潤山田冬夜:山根綺(C)若木民喜/みつみ美里・甘露樹(アクアプラス)/16bitセンセーションAL PROJECT