エヴァンゲリオン』のシリーズ30周年というアニバーサリーイヤーを祝し、アメリカのトロント、ダラス、ロサンゼルスで北米初公演となる「EVANGELION WIND SYMPHONY 2025」が開催された。この記事では、2025年8月31日(日本時間)に行われたばかりのハリウッド・ドルビーシアター公演の模様を届ける。


「EVANGELION WIND SYMPHONY 2025」は、日本で毎公演チケット完売の人気を博す「エヴァンゲリオン ウインドシンフォニーコンサート」の海外公演で、初公演は6月に韓国・ソウルで開催されていた。
このたびの北米初公演は、タナポン・セタブラーマナ氏の指揮のもと3都市で行われてきたもの。最終日を飾る公演は、8月30日(現地時間)にアカデミー賞授賞式の会場として知られるロサンゼルス・ハリウッドのドルビーシアター(Dolby Theatre)で開催され、約3,300人が来場し会場を埋め尽くした。

吹奏楽演奏による、『エヴァンゲリオン』シリーズの名曲の数々で構成される「EVANGELION WIND SYMPHONY 2025」。会場には『エヴァンゲリオン』のコスプレをしたファンや、「エヴァンゲリオン!!」「Yoko Takahashi!」と公演前からテンションMAXで“エヴァ愛”をあふれさせるファンが大集結し、物販スペースは会場の2階まで並ぶほどの長蛇の列を成し大盛況となった。

そんな愛の詰まった観客から大きな拍手と歓声で迎えられ既に熱気が高まるなか、最初に披露されたのは、1997年公開の映画『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 シト新生』の主題歌であり、『エヴァンゲリオン』シリーズを代表する楽曲のひとつである「魂のルフラン」だ。クラシカルな黒の衣装で登場した高橋洋子は、キャッチーな旋律にのせて伸びやかな歌声を響かせ、会場の観客も一緒に大合唱するなど一気に『エヴァンゲリオン』の世界へと誘った。
そして楽団は、謎に満ちた敵・使徒の襲来時に流れるスリリングなメロディの「ANGEL ATTACK」や、エヴァンゲリオン初号機を紹介する重要なテーマ「EVA-01」の生演奏を立て続けに披露した。

再び登場した高橋が、戦闘前の緊張感をより高める「TENSIONS」を熱唱すると、会場の熱気がますます上昇する。その後もレイの孤独感や儚さ、不思議な存在感を美しく表現した「Rei I」をはじめ、エヴァンゲリオンの深いテーマ性を象徴する「THANATOS」、TVシリーズ『新世紀エヴァンゲリオン』の象徴的なエンディングテーマ曲である「Fly Me to the Moon」など、演奏と高橋の美しい歌声が会場いっぱいに響き渡り観客を魅了させた。

シリーズ30周年となる2025年に初の「EVANGELION WIND SYMPHONY 2025」北米公演を迎え、高橋はMCで「1995年の時は、こんなに長く『残酷な天使のテーゼ』を歌い続けることになるとは、夢にも思いませんでした。当初“こんなにこのアニメは人気になるんだ?!”と驚いたり、放送の最中に、最終回はどうなるのかと聞かれて戸惑ったりと、あまりの影響に、いわば十字架を背負っているような気持ちになったこともあります」と、30年の様々な思い出を振り返る。

そして「30年の月日はたくさんの素晴らしい方々との出会いを与えてくれました。この曲、この作品との出会いは天からのギフトだと、とても感謝しています」と、時代を超えて『エヴァンゲリオン』シリーズと共に歩んできた熱い思いを募らせる。

さらに名曲「魂のルフラン」については「レコーディング当日まで歌詞が決まっていませんでした。FAXでレコーディングスタジオへ歌詞が届き、スタッフが楽譜に書き入れて、そのあと歌った思い出があります」と貴重な“裏話”が披露されると、会場のファンたちは高橋の言葉に引き込まれ、熱心に耳を傾けた。

また本公演では、演奏中もバックスクリーンに『エヴァンゲリオン』本編の名シーンが映し出され、指揮者からは劇中で音楽が流れるシーンの解説を含んだMCトークもあった。「レイ派?アスカ派?」と質問が投げかけられるなど、観客とコール&レスポンスがあり、多彩なシーンにあふれる構成でおくられた。高橋にも好きなキャラクターが問いかけられ、高橋が「碇シンジ」と答えると観客から大拍手が出るなど、始終エヴァ愛があふれていた。
そして『シン・エヴァンゲリオン劇場版』の劇中曲である「psycho」「the path」を高橋がオペラボイスで歌唱し、映画本編の印象的なシーンで流れる楽曲へと移る。壮大なアレンジが施された「What if? 2022」が楽団の演奏と高橋の歌声により披露されると、会場全体が感動の渦に包まれ、鳴りやまない拍手が送られた。

最後にアンコールとして、『新世紀エヴァンゲリオン』の主題歌「残酷な天使のテーゼ」が、ウインド・オーケストラならではのアレンジで演奏された。イントロが流れるやいなや手拍子と歓声が鳴り響き、圧巻のパフォーマンスに約3,300人がスタンディングオベーションとなった。
拍手喝采を受ける中、さらに高橋本人からエヴァのキャラクター・葛城ミサトによる名台詞「サービス、サービス!」のコールをきっかけに、不朽の名曲「次回予告( F02 )」の音楽も演奏された。
鳴りやまない歓声と共に、ロサンゼルスでの「EVANGELION WIND SYMPHONY 2025」は終了を迎えた。

公演を見届けたロサンゼルスの観客には、子どもの頃から『エヴァンゲリオン』をみて育ったという熱狂的な人や、ここ数年で見始めてどんどん魅力にハマったという人まであらゆる形のエヴァ愛があふれ、中には思わず涙するファンの姿も見られた。「鳥肌が止まらなかった」「高橋さんの歌声を聞いて何度も泣いた」「とにかく圧巻で心を打たれた」と興奮冷めやらぬ様子で、これ以上ない最高の盛り上がりでフィナーレを迎えた。

また、そんな「EVANGELION WIND SYMPHONY 2025」に先駆け、アメリカ・ニューヨークにあるジェイコブ・ジャビッツ・コンベンション・センターにて開催された日本のポップカルチャーの祭典「Anime NYC 2025」でも、8月22日に「EVANGELION 30th ANNIVERSARY SPECIAL LIVE」と題した高橋洋子のステージが行われた。アメリカでの高橋のライブはこの日が10年以上ぶりで、約2000人を動員した白熱の一夜となった。

当日は観客の期待が膨らむ中、アナウンスで高橋が紹介されると会場が暗転し、30周年記念ロゴからエヴァンゲリオン初号機の戦闘シーンで構成されたスペシャルオープニングムービーがスタートした。A.T.フィールドを初号機が破るシーンとともに高橋が登場し、イントロが印象的な『エヴァンゲリオン』シリーズの劇伴「EM20」をアレンジした「TENSIONS -welcome to the stage」と、30周年記念ロゴのムービング映像を背負ってライブが幕を開けた。
序盤は、力強くも切ないボーカルで歌い上げる「心よ原始に戻れ 2020」、『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 シト新生』の主題歌「魂のルフラン」を披露し、会場の熱気が一気に上がっていく。会場全体が盛り上がったところで、次はジャズのスタンダードナンバーでもあり、TVアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』のエンディングテーマである「FLY ME TO THE MOON」の2020 ver.をしっとりと歌い上げ、その歌唱力で観客を魅了していった。

続くMCでは、本人が全て英語でスピーチした。歌手としてデビューした道のり、『新世紀エヴァンゲリオン』との出会いやこれまでの想いを約5分に渡り伝えると、拍手と歓声に会場が包まれる。最後に「大好きなニューヨークで、皆さまにお会いできましたこと、心から嬉しく思います。
愛と祈りを込めて、心から、魂から歌をうたいます。私の愛が皆さんに届きますように! みんな、ありがとう!!!存分にショーをお楽しみください!!」と締めくくり、ライブは後半戦に突入する。

1996年に『NEON GENESIS EVANGELION III』CDの収録曲としてリリースされた「幸せは罪の匂い」、そして2021年上映の映画『シン・エヴァンゲリオン劇場版』の劇伴から誕生した「What if?」を立て続けに披露した。2019年のミニアルバム『EVANGELION EXTREME』収録の「赤き月」では、高橋から観客に「一緒に踊ってくれますか?」と呼びかけ、ダンサーによる振り付けレクチャーから会場をさらに盛り上げていく。
次に、エレクトロなサウンドで魅せる「Final Call」を歌うと、最後の曲は自身の代表曲でもあるTVアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』の主題歌「残酷な天使のテーゼ」を熱唱。イントロから観客の大合唱が始まり、会場の熱気は最高潮に達した。作品30周年を約1時間のライブに凝縮し、国境を越え、音楽でひとつになった本イベントは大円団を迎えた。

「EVANGELION WIND SYMPHONY 2025」ロサンゼルス・ドルビーシアター公演 概要
会場:Dolby Theatre
日程:2025年8月30日(土)
来場者:約3,300人
※全20曲のセットリスト(アンコール含む)

Anime NYC 2025「EVANGELION 30th ANNIVERSARY SPECIAL LIVE」概要
会場:ジェイコブ・ジャビッツ・コンベンション・センター
日程:2025年8月22日(金)
来場者:約2000人
※全9曲のセットリスト
(C)khara (C)カラー/Project Eva.
編集部おすすめ