2025年9月19日、劇場版『チェンソーマン レゼ篇』が公開された。
「アニメ!アニメ!」の編集部員としてはお恥ずかしい限りだが、私は基本的にとんでもなく天邪鬼な性質なので、世間が作品に盛り上がっているときは見ることをとことん避ける傾向にある。
そんな折、編集部で「ミリしら」企画をやろうという話が持ち上がる。「作品について1ミリも知らない“ミリしら”な人間が、その作品を一気見したら……」という体当たりな内容だ。題して【◯日で全部見る“ミリしら”な編集部員たち】。
槍玉に上げられたのが天邪鬼の時代遅れ編集部員こと私(筆者)。対象作品は、最新作の映画公開日が近づいていた『チェンソーマン』だった。企画始動が9月の初めの頃で、アニメはたったの1クール分のみ。公開日まで2週間以上もある。こういうことでもないと一生見ないままかもしれないと思い、余裕よ余裕、と軽い気持ちで企画第1弾の担当を請け負った。
ちなみに、私の『チェンソーマン』ミリしら具合がどれほどかというと、「会話はマキマに聞かれている」という言葉だけをネットミームとして認知している、その程度のものだった。あとエンディングが毎週違うらしい……これは音楽オタクなので各曲を知っていた、というほうが大きいかもしれない。
筆者紹介:凪山 20代
近況:「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2025」で久々にUNISON SQUARE GARDENの音楽を浴びてから再燃してずっと聴いている。「桜のあと」は神曲。『夜桜四重奏 ~ヨザクラカルテット~』久々に観ようかな~
執筆感想:我ながらオタクのくどいnoteすぎる
※以下の本文にて、本テーマの特性上、作品未視聴の方にとっては“ネタバレ”に触れる記述を含みます。読み進める際はご注意下さい。
◆実録!3日間の視聴経過は?:ポチタに心惹かれて…
9月9日(火)会社帰りの電車:1話
何をするにも腰が重いタイプの私は、新しいコンテンツに触れるときも、とにかく初動が悪い。色々と忙しかったという言い訳もあり、やっと「見るか」という気持ちになったのが企画会議から1週間程経ったこの日。会社帰りの電車でサブスクを立ち上げて1話目を再生した。
1話の感想、ポチタがとにかくかわいい。のみ。ネコ派のはずなのに犬のような悪魔にメロメロになる。ハートウォーミング系動物アニメだ!と思っていたのに、すぐにデンジに吸収されていなくなってしまった。
おい嘘だろ、ポチタ逝くな、お前もう今後出番ないのか……?
じゃあもう見るモチベないよ……。
9月10日(水)家で携帯の画面で視聴:2~5話
1話は面白かったものの、ポチタもいなくなったし、自宅に辿り着いてから休まず見続ける程の勢いはまだ感じられずに寝かせてしまった。それでも仕事だからと第2話を見始めたのは翌日の夜。このまま1日1話ペースだと流石に間に合わない、スピードアップしないとヤバいな――と思い始めていたところから一気に加速した日だった。
明日はそこそこ朝早いのにな、と翌朝の寝坊を危惧しながらもうちょっと、あと1話、あと1話だけ……と、5話まで見た。休憩も取らず、風呂もキャンセル……。
何があったかと言えば、早川アキの沼に徐々に“ずぶずぶ”していった。正直最初の登場ではそんなに刺さらなかった。嘘、ビジュアルは超好きだった。ちょんまげは正直いらないが、それを除けばかなり好みドンピシャで、いいかも、と思った直後、登場即デンジに股間を蹴り上げられまくっていて、情けなさ過ぎて萎えてしまったのが正直なところ。
この評価がひっくり返ったのが4話だった。面食いが過ぎるが、コン(狐の悪魔)を呼び出す時の片目を瞑った顔にまずやられた。
その後「ネコは動物病院で健康状態の確認」という冷静な指示。
徐々にメロつきを覚え始めたところに、マキマとの事象報告のシーン。マキマに会う前にネクタイを整え前髪を撫でつけるの、かわいい。そしてデンジとパワーを庇うために嘘をつくところ、とてもいい。極めつけは3人の同居が始まる日常シーンだった。オカン属性あるの、好きすぎる。
このあたりから、翌朝に後悔することも覚悟で続きを追いたくなってしまった。ダメ押しだったのは5話のアキの過去回想。ここで陥落だった。復讐のために気を張って生きている、根はきっと純粋で心が柔らかいタイプ、そういうのにめっきり弱くて困ってしまう。
9月13日(土)TVの大画面で視聴:6~12話
木・金と、仕事に加え体調不良を崩したこともあり、続きを見ることができなかった。いや、正直それでもぼーっと見るだけならできただろうけれど、もうこの時には「ちゃんと腰を据えて見たいな」と思わされるくらいにはハマっていた。だからこそ、とりあえずで流し見するのを避けた2日間だった。
ようやく迎えた休日、昼前に起きた私はスマホをTVに接続。そこからは一気に走り抜けた。アキが少しずつ感情豊かになっていくのがいい。デンジとパワーと3人が仲良くなっていくのがうれしい。基本的に関係性に萌えるオタクだから、こういうトリオはめちゃくちゃ好き。
正直なところ、ぬめっとした下ネタと性欲の時間が長くてしんどいな……と思ってしまう部分はちょこちょこあったのだが、それにつけてもストーリーは素直に面白いと感じた。とくに、ジワジワと湧いてくるマキマへの違和感と不安感が次へ、次へと再生ボタンを押させ、気づいたらぶっ続けで視聴し続け全12話は終わっていた。
2期は? ないんですか? 次は映画? 見ます。普通に楽しみになってきた。
余談だが、12話の「姫野先輩、天国まで聞こえるか? オレ達からアンタへの鎮魂歌(レクイエム)だ」の台詞は『HUNTER×HUNTER』のオタク的にはいきなりのオマージュに超テンションが上がった。
◆全話視聴を終えたいま:アキくん最高! 音楽最高!
私は、基本的に”完全なるファンタジー世界”とは相性がよくないことが多い。現実離れしたファンタジーよりも、どことなく現実世界をふと思い出すような、時々何かがリンクするような、ちょっとしたボタンの掛け違いでひょっとしたら私も明日にはこの世界に紛れ込んでいるかもしれないと思わされるような、そういう空気感の漂う作品が好きだ。
だからか、『チェンソーマン』の温く湿った風を感じさせるリアリティと、それでも確かに私たちの現実とはズレた世界にいる違和感は、冒頭から引き込まれるには充分だった。
そういえば『チェンソーマン』を視聴していた期間の中で、たまたま原作ファンによる、総集編をクール版と比較して評価するようなSNS投稿を目にしたのだが、私は特段の違和感がなく視聴していたので不思議に思って完走後に原作ファンの意見を調べてみた。
もしかしたら原作ファンからすると冗長な雰囲気が漂うアニメ作品だったのかもしれないが、アニメから入った私にとっては、全編通して香るそこはかとないじめじめとした空気や、焦れてしまうような丁寧でもったいぶった情感は没入感を高めるのに効果的で、評価したいと思うポイントだった。
そしてもう一つ、私にとって作品にハマるかどうか?のポイントは、“序盤”に推せるキャラクターが登場するか否か、ということが大きい。序盤でビジュアルと内面、共に好きになれるキャラクターを見つけられないと、見続けるモチベーションを保てないことが多い。だから、私の推しは基本的に初期から登場し続ける主人公サイドのキャラクターなことが殆どである。
ここに早川アキが綺麗にハマった。最初の印象は正直そんなにだったけれど、自分の心を守るために感情を封印して棘で周囲を固めているようなアキは、私の癖にドンピシャなキャラクターだった。徐々にデンジやパワーに絆されていく様子がかわいくて、この3人がどうなっていくのか、関係性を追っていきたくなってしまった。
加えて、アニメオタク成分よりも音楽オタク成分のほうが強い“今の私”にとっては、毎話EDの曲と映像が異なるというのが非常にうれしい演出だった。話数を追うごとに徐々にED映像が変化していくような作品や、曲だけ変わるというパターンは見たことがあるが、毎回映像も曲もまったく異なるというのは、私の知る限りでは見たことがない。かかるお金と工数は桁違いであろうし、それだけに制作陣の本気を感じた。
今回、サブスクサービスで視聴したわけなのだが、あの手のサービスではOP/EDでは「次の回を再生」みたいなポップアップが表示され、スキップしながらサクサクと進めてしまう。情緒が無いとは思いつつ、かなり便利な機能ではあるのでついポップアップを押してしまう人も少なくないであろうし、正直なところ私もそういった一人である。
だが『チェンソーマン』については、毎回変わるEDを見逃せるわけもなく、EDを見ながらストーリーの余韻に浸る幸せを思い出させてもらえた。毎話のストーリーと空気を引き継ぐように描かれるアニメーションと楽曲は、新たなMVを見ているような感覚にさせ、これまで「チェンソーマンのED曲らしい」という知識のみで何気なく聞いていた曲が、より深い意味を持って耳に届く。それがうれしかった。
制作・MAPPAによる大げさなほど丁寧な描写と、OPの米津玄師『KICK BACK』も含めた各主題歌への力の入れ方。評価が分かれるポイントではあったのかもしれないが、23分間の総合芸術としてのアニメーション表現に敬意を持って作られていると感じた作品だった。この質感の映像は劇場の大きなスクリーンと良質な音響で見たくなる。
そういえば、「会話はマキマに聞かれている」には1クールでは辿り着けなかったけれど、これは劇場版を見れば遭遇できるだろうか? まずは一旦そこまで辿り着きたい。
あと、ポチタの再登場、ないのか……?
【◯日で全部見る“ミリしら”な編集部員たち】
「作品について1ミリも知らない…“ミリしら”な人間が、とあるきっかけで、その作品を一気見してみる」という体当たり企画。
昨今、世に出るアニメ作品の数は増加の一途をたどる。TVで、配信で、映画館で、円盤で、と視聴媒体も多様化。かなり昔の作品も改めて視聴できるようになってきた。楽しめる作品が増えるのは有り難い反面、きっかけを逸して未視聴なままの話題作があるのも事実。そんな話題作・名作を改めて視聴するというのは、腰が重いもの…そこで!我々編集部員が実際に「一気見」を実行。その経過をお届けします。“ミリしら”な人間が沼っていく過程もわかるかも…!? 気になる作品があれば「同じスケジュールで一緒に見る」もよし。記事を読んで「見た気になる」もよし。編集部員たちと一緒に、アニメ作品を楽しんでほしい。
「アニメ!アニメ!」の編集部員としてはお恥ずかしい限りだが、私は基本的にとんでもなく天邪鬼な性質なので、世間が作品に盛り上がっているときは見ることをとことん避ける傾向にある。
ほとぼりが冷めた頃(?)にようやく視聴して、絶対に世間が盛り上がっているうちに見ておいたほうがよかったと後悔することが多々あるにもかかわらず、学習せず天邪鬼を発揮してしまう。『チェンソーマン』も例に漏れず、未チェックでこんな時期まで来てしまった。
そんな折、編集部で「ミリしら」企画をやろうという話が持ち上がる。「作品について1ミリも知らない“ミリしら”な人間が、その作品を一気見したら……」という体当たりな内容だ。題して【◯日で全部見る“ミリしら”な編集部員たち】。
槍玉に上げられたのが天邪鬼の時代遅れ編集部員こと私(筆者)。対象作品は、最新作の映画公開日が近づいていた『チェンソーマン』だった。企画始動が9月の初めの頃で、アニメはたったの1クール分のみ。公開日まで2週間以上もある。こういうことでもないと一生見ないままかもしれないと思い、余裕よ余裕、と軽い気持ちで企画第1弾の担当を請け負った。
ちなみに、私の『チェンソーマン』ミリしら具合がどれほどかというと、「会話はマキマに聞かれている」という言葉だけをネットミームとして認知している、その程度のものだった。あとエンディングが毎週違うらしい……これは音楽オタクなので各曲を知っていた、というほうが大きいかもしれない。
筆者紹介:凪山 20代
近況:「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2025」で久々にUNISON SQUARE GARDENの音楽を浴びてから再燃してずっと聴いている。「桜のあと」は神曲。『夜桜四重奏 ~ヨザクラカルテット~』久々に観ようかな~
執筆感想:我ながらオタクのくどいnoteすぎる
※以下の本文にて、本テーマの特性上、作品未視聴の方にとっては“ネタバレ”に触れる記述を含みます。読み進める際はご注意下さい。
◆実録!3日間の視聴経過は?:ポチタに心惹かれて…
9月9日(火)会社帰りの電車:1話
何をするにも腰が重いタイプの私は、新しいコンテンツに触れるときも、とにかく初動が悪い。色々と忙しかったという言い訳もあり、やっと「見るか」という気持ちになったのが企画会議から1週間程経ったこの日。会社帰りの電車でサブスクを立ち上げて1話目を再生した。
1話の感想、ポチタがとにかくかわいい。のみ。ネコ派のはずなのに犬のような悪魔にメロメロになる。ハートウォーミング系動物アニメだ!と思っていたのに、すぐにデンジに吸収されていなくなってしまった。
おい嘘だろ、ポチタ逝くな、お前もう今後出番ないのか……?
じゃあもう見るモチベないよ……。
9月10日(水)家で携帯の画面で視聴:2~5話
1話は面白かったものの、ポチタもいなくなったし、自宅に辿り着いてから休まず見続ける程の勢いはまだ感じられずに寝かせてしまった。それでも仕事だからと第2話を見始めたのは翌日の夜。このまま1日1話ペースだと流石に間に合わない、スピードアップしないとヤバいな――と思い始めていたところから一気に加速した日だった。
明日はそこそこ朝早いのにな、と翌朝の寝坊を危惧しながらもうちょっと、あと1話、あと1話だけ……と、5話まで見た。休憩も取らず、風呂もキャンセル……。
何があったかと言えば、早川アキの沼に徐々に“ずぶずぶ”していった。正直最初の登場ではそんなに刺さらなかった。嘘、ビジュアルは超好きだった。ちょんまげは正直いらないが、それを除けばかなり好みドンピシャで、いいかも、と思った直後、登場即デンジに股間を蹴り上げられまくっていて、情けなさ過ぎて萎えてしまったのが正直なところ。
この評価がひっくり返ったのが4話だった。面食いが過ぎるが、コン(狐の悪魔)を呼び出す時の片目を瞑った顔にまずやられた。
その後「ネコは動物病院で健康状態の確認」という冷静な指示。
ええ…? ネコの心配もしてくれるの…?
徐々にメロつきを覚え始めたところに、マキマとの事象報告のシーン。マキマに会う前にネクタイを整え前髪を撫でつけるの、かわいい。そしてデンジとパワーを庇うために嘘をつくところ、とてもいい。極めつけは3人の同居が始まる日常シーンだった。オカン属性あるの、好きすぎる。
このあたりから、翌朝に後悔することも覚悟で続きを追いたくなってしまった。ダメ押しだったのは5話のアキの過去回想。ここで陥落だった。復讐のために気を張って生きている、根はきっと純粋で心が柔らかいタイプ、そういうのにめっきり弱くて困ってしまう。
9月13日(土)TVの大画面で視聴:6~12話
木・金と、仕事に加え体調不良を崩したこともあり、続きを見ることができなかった。いや、正直それでもぼーっと見るだけならできただろうけれど、もうこの時には「ちゃんと腰を据えて見たいな」と思わされるくらいにはハマっていた。だからこそ、とりあえずで流し見するのを避けた2日間だった。
ようやく迎えた休日、昼前に起きた私はスマホをTVに接続。そこからは一気に走り抜けた。アキが少しずつ感情豊かになっていくのがいい。デンジとパワーと3人が仲良くなっていくのがうれしい。基本的に関係性に萌えるオタクだから、こういうトリオはめちゃくちゃ好き。
正直なところ、ぬめっとした下ネタと性欲の時間が長くてしんどいな……と思ってしまう部分はちょこちょこあったのだが、それにつけてもストーリーは素直に面白いと感じた。とくに、ジワジワと湧いてくるマキマへの違和感と不安感が次へ、次へと再生ボタンを押させ、気づいたらぶっ続けで視聴し続け全12話は終わっていた。
2期は? ないんですか? 次は映画? 見ます。普通に楽しみになってきた。
余談だが、12話の「姫野先輩、天国まで聞こえるか? オレ達からアンタへの鎮魂歌(レクイエム)だ」の台詞は『HUNTER×HUNTER』のオタク的にはいきなりのオマージュに超テンションが上がった。
◆全話視聴を終えたいま:アキくん最高! 音楽最高!
私は、基本的に”完全なるファンタジー世界”とは相性がよくないことが多い。現実離れしたファンタジーよりも、どことなく現実世界をふと思い出すような、時々何かがリンクするような、ちょっとしたボタンの掛け違いでひょっとしたら私も明日にはこの世界に紛れ込んでいるかもしれないと思わされるような、そういう空気感の漂う作品が好きだ。
だからか、『チェンソーマン』の温く湿った風を感じさせるリアリティと、それでも確かに私たちの現実とはズレた世界にいる違和感は、冒頭から引き込まれるには充分だった。
そういえば『チェンソーマン』を視聴していた期間の中で、たまたま原作ファンによる、総集編をクール版と比較して評価するようなSNS投稿を目にしたのだが、私は特段の違和感がなく視聴していたので不思議に思って完走後に原作ファンの意見を調べてみた。
もしかしたら原作ファンからすると冗長な雰囲気が漂うアニメ作品だったのかもしれないが、アニメから入った私にとっては、全編通して香るそこはかとないじめじめとした空気や、焦れてしまうような丁寧でもったいぶった情感は没入感を高めるのに効果的で、評価したいと思うポイントだった。
そしてもう一つ、私にとって作品にハマるかどうか?のポイントは、“序盤”に推せるキャラクターが登場するか否か、ということが大きい。序盤でビジュアルと内面、共に好きになれるキャラクターを見つけられないと、見続けるモチベーションを保てないことが多い。だから、私の推しは基本的に初期から登場し続ける主人公サイドのキャラクターなことが殆どである。
ここに早川アキが綺麗にハマった。最初の印象は正直そんなにだったけれど、自分の心を守るために感情を封印して棘で周囲を固めているようなアキは、私の癖にドンピシャなキャラクターだった。徐々にデンジやパワーに絆されていく様子がかわいくて、この3人がどうなっていくのか、関係性を追っていきたくなってしまった。
加えて、アニメオタク成分よりも音楽オタク成分のほうが強い“今の私”にとっては、毎話EDの曲と映像が異なるというのが非常にうれしい演出だった。話数を追うごとに徐々にED映像が変化していくような作品や、曲だけ変わるというパターンは見たことがあるが、毎回映像も曲もまったく異なるというのは、私の知る限りでは見たことがない。かかるお金と工数は桁違いであろうし、それだけに制作陣の本気を感じた。
今回、サブスクサービスで視聴したわけなのだが、あの手のサービスではOP/EDでは「次の回を再生」みたいなポップアップが表示され、スキップしながらサクサクと進めてしまう。情緒が無いとは思いつつ、かなり便利な機能ではあるのでついポップアップを押してしまう人も少なくないであろうし、正直なところ私もそういった一人である。
だが『チェンソーマン』については、毎回変わるEDを見逃せるわけもなく、EDを見ながらストーリーの余韻に浸る幸せを思い出させてもらえた。毎話のストーリーと空気を引き継ぐように描かれるアニメーションと楽曲は、新たなMVを見ているような感覚にさせ、これまで「チェンソーマンのED曲らしい」という知識のみで何気なく聞いていた曲が、より深い意味を持って耳に届く。それがうれしかった。
制作・MAPPAによる大げさなほど丁寧な描写と、OPの米津玄師『KICK BACK』も含めた各主題歌への力の入れ方。評価が分かれるポイントではあったのかもしれないが、23分間の総合芸術としてのアニメーション表現に敬意を持って作られていると感じた作品だった。この質感の映像は劇場の大きなスクリーンと良質な音響で見たくなる。
そういえば、「会話はマキマに聞かれている」には1クールでは辿り着けなかったけれど、これは劇場版を見れば遭遇できるだろうか? まずは一旦そこまで辿り着きたい。
あと、ポチタの再登場、ないのか……?
【◯日で全部見る“ミリしら”な編集部員たち】
「作品について1ミリも知らない…“ミリしら”な人間が、とあるきっかけで、その作品を一気見してみる」という体当たり企画。
昨今、世に出るアニメ作品の数は増加の一途をたどる。TVで、配信で、映画館で、円盤で、と視聴媒体も多様化。かなり昔の作品も改めて視聴できるようになってきた。楽しめる作品が増えるのは有り難い反面、きっかけを逸して未視聴なままの話題作があるのも事実。そんな話題作・名作を改めて視聴するというのは、腰が重いもの…そこで!我々編集部員が実際に「一気見」を実行。その経過をお届けします。“ミリしら”な人間が沼っていく過程もわかるかも…!? 気になる作品があれば「同じスケジュールで一緒に見る」もよし。記事を読んで「見た気になる」もよし。編集部員たちと一緒に、アニメ作品を楽しんでほしい。
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