開催前日となる18日、同会場にてあだち充と本展の音声ガイドを担当した日高のり子(※)のスペシャル対談が実現し、展覧会の見どころのほか、貴重な作品制作秘話などが語られた。
(※日高のり子の「高」は正式には「はしごだか」)
「ー画業55周年記念ー あだち充展」には、あだちの初期作品である『ナイン』から『陽あたり良好!』『みゆき』『タッチ』『ラフ』『H2』『クロスゲーム』『MIX』まで、多くのファンを魅了してきた歴代作品が集結。貴重な原画やシアター映像、作品の世界観を感じられるフォトスポットといったダイナミックな展示とともに、これまでの作品を振り返ることができる。
会場を廻ってみた感想を聞かれると、あだちは「こんな大事になるとは思っていなかったので、のこのこ出てきたことを後悔しています」と照れ笑い。日高は「(見て廻るのに)時間が足りなかったです。とにかく幸せな空間で、先生のマンガに囲まれて過ごす時間はすごく尊いなと思いました」と充実した展示内容に大満足の様子。
そんなあだちと日高だが、古くから親交があるものの、こうした公の場で対談するのは初めて。「少しドキドキしますね」と照れつつも、あだち充作品を年表ごとに触れていくことに。日高が浅倉南役として参加した『タッチ』は、1981年に連載スタート。1980年より開始した『みゆき』と同時連載していた時期もあり、「とにかく忙しくて、その間の記憶がない」とあだちは振り返る。「先輩となる先生方がもっとめちゃくちゃな仕事量でやっていた時代なので、泣き言を言ったら怒られると思っていました。でも、このペースで仕事を続けていたら、長生きできないとも思っていました」と笑いを誘った。
その『タッチ』をはじめ、あだち作品の特徴といえば、キャラクターに多くを語らせない描写が登場すること。
セリフがなく描写だけで思いを伝えるシーンは日高も大好きだと言い、「そのシーンでいろんなことを考えるんですよね。登場人物の思いを受け止めて噛みしめたり。その時間があるから、よりストーリーに没入できます」と絶賛する一方、そのシーンを実際に演じる側になってみると「“行間に感情を込めなさい”と、何度も録りなおしをくらいました。読む分には大好きだけど、演じるのは本当に大変だった」と苦労したアフレコを回顧。「ずっと悩み続けていたので、私の眉間にはシワが寄りっぱなし。今でもそのシワが残っているのは、先生のせいですよ!」と訴えた。
あだちが現在連載中の『MIX』は、その『タッチ』から約30年後の世界が舞台。「しつこい編集がいて、描くことになった気がします(笑)。
最後にあらためて展覧会の見どころを聞かれると、日高は「先生の描かれた作品の名シーンがセリフと共に散りばめられていて、大きな空間でそれを見られるのが魅力だと思います。『タッチ』の思い出の勉強部屋が再現されたフォトスポットがあって、私はそこにとてもワクワクしました。あとは、何といっても見てほしいのは原画。印刷される前の先生の塗った色で見られます。ぜひご覧になってください。そして音声ガイドも聞いてください!」とアピール。
あだちは「こんな大事にしてくれと頼んだ覚えはないのですが、とにかく55周年を盛り上げようと、たくさんの人が一生懸命頑張ってくれたのは知っています。一度でもあだち充の漫画に触れたことのある人は、ぜひ会場に足を運んでもらえると、みんなが幸せになります。
『―画業55周年記念― あだち充展』
会 期:2025年12月19日(金)~2026年1月14日(水) ※2026年1月1日(木・祝)は休業
開催時間:10:00~19:00 ※最終入場18:30
会 場:池袋・サンシャインシティ 展示ホールC
〒170-0013 東京都豊島区東池袋 3-1-4 (文化会館ビル 3F)
(C)あだち充/小学館
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